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第3章 初めての冬越え
第30話 シェリー・セリーブ
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2週間後、豪華な伯爵家の紋章を付けた馬車がアレクサンドラ領主邸へ到着した。私も玄関で待機していた、何でこんな雪の日に来たんだ.......メッチャ寒い。
馬車の扉が御者によって開けられると年老いた女性が降りてきた。
気品のあるドレスに黒い髪をまとめ上げ、うす緑色の眼は金縁の丸眼鏡で隔てられているがかなり眼光が鋭い。
彼女がシェリー・セリーブその人である。
「お久しぶりです、ルーティア・アレクサンドラ嬢。アレクサンドラ領主任命この度はおめでとうございます」
「お、お久しぶりです、シェリー・セリーブ伯爵夫人。そしてお祝いありがとうございます。話したいことは山ほどありますが今は冬の厳しい頃です、応接間へどうぞ」
「ええ、分かりました」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
応接間へ通して、暖かい紅茶とお菓子を用意する。疲労回復の効果がある薬草を練り込んで作ったハーブクッキーだ。
「よろしければ、紅茶とお菓子で旅の疲れを癒して下さい」
「では」
紅茶を飲んで一息つかれた、相変わらず綺麗な所作だ。
「薬草の栽培が回復したとお聞きしました。さらにこのように利用するとは」
「身体を温める薬草を練り込んで作らせたクッキーです」
「なるほど」
多くの貴族が彼女を家庭教師として招きたいのはその美しい所作を自分たちの子に身に着けさせたいからだ。だがいくら金を積まれそうとも生徒の質が悪ければ例え皇族だろうと辞退するのが彼女の恐ろしい所でもある。
「シェリー夫人、何故この時期にこちらへ?この時期の領の厳しさはご存じでしょうに」
「いえ、本当は3か月前にこちらへ参りたかったのですが引き継ぎに手間が掛かってしまいこの時期になりましたの」
多分、女主人としての引き継ぎだろうな。この人が姑とか大変だろうに。顔も知らない女性にそっと黙祷する。
「なるほど、しかしそこまでしてこちらへ来た理由は?」
「リーティア様には作法を教えましたがこの度領主となられたことでさらなる作法が必要と思いまして馳せ参じました」
「え、た、確かにそうですが」
私が習った作法は初歩中の初歩だ、他は学術院へ入学するため試験勉強にしていた。
「良いですか?今、アレクサンドラ領主への関心はかなり高いです。それにこのまま功績を上げていけば皇帝陛下主催の建国パーティーへの招待もあるでしょう」
「なっ?!しかしアレクサンドラ家は皇帝陛下に不忠を向けました。そんな家をあの方が招待するとは............」
そう、忘れがちだが私は仮釈放中のようなものだ、そんな人物を呼ぶとはあり得ない。
「確かにそうですね、しかし他の諸侯は別です。力を付けている貴女を己の派閥に加えようとしてきます。政争に巻き込まれないためにも作法や社交術を身に着けていただく必要があります」
う、痛いとこ突いてくる。私も少しだけだが帝国貴族の派閥は知っている。今1番勢力のある皇帝派、それに対抗している貴族派、どちらでも無い中立派だ。
アレクサンドラ家は元々貴族派ではあったが私となれば別の派閥へ鞍替えも可能だ。しかし面倒だなぁ。
「それで夫人が指導すると?」
「はい、夫にも現当主の息子にも話は通しました。既に私は教育者として第1線を引いた身です。しかしそれでもやるべき教育はまだあると思っております」
ぶっちゃけるとシェリー夫人はかなりの権力者だ、今でこそ彼女は伯爵夫人だが彼女の祖先には大賢者というビッグな存在がいる。そしてその子供が当時の皇帝から尊爵という大公すら凌ぐ地位を与えられたという、その影響は今の続いており、シェリー夫人の発言は侯爵もねじ伏せられるぐらいだ。
給金は私の潤沢な給料から引けば良い。使い道が分からなかったのでちょうど良い。
「シェリー夫人、もう一度私の家庭教師として働いてください」
「無論です、リーティア様。このシェリー、貴女を立派な貴族として教育させていただきます」
こうして翌日からシェリー夫人のスパルタ教育が始まった。
馬車の扉が御者によって開けられると年老いた女性が降りてきた。
気品のあるドレスに黒い髪をまとめ上げ、うす緑色の眼は金縁の丸眼鏡で隔てられているがかなり眼光が鋭い。
彼女がシェリー・セリーブその人である。
「お久しぶりです、ルーティア・アレクサンドラ嬢。アレクサンドラ領主任命この度はおめでとうございます」
「お、お久しぶりです、シェリー・セリーブ伯爵夫人。そしてお祝いありがとうございます。話したいことは山ほどありますが今は冬の厳しい頃です、応接間へどうぞ」
「ええ、分かりました」
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応接間へ通して、暖かい紅茶とお菓子を用意する。疲労回復の効果がある薬草を練り込んで作ったハーブクッキーだ。
「よろしければ、紅茶とお菓子で旅の疲れを癒して下さい」
「では」
紅茶を飲んで一息つかれた、相変わらず綺麗な所作だ。
「薬草の栽培が回復したとお聞きしました。さらにこのように利用するとは」
「身体を温める薬草を練り込んで作らせたクッキーです」
「なるほど」
多くの貴族が彼女を家庭教師として招きたいのはその美しい所作を自分たちの子に身に着けさせたいからだ。だがいくら金を積まれそうとも生徒の質が悪ければ例え皇族だろうと辞退するのが彼女の恐ろしい所でもある。
「シェリー夫人、何故この時期にこちらへ?この時期の領の厳しさはご存じでしょうに」
「いえ、本当は3か月前にこちらへ参りたかったのですが引き継ぎに手間が掛かってしまいこの時期になりましたの」
多分、女主人としての引き継ぎだろうな。この人が姑とか大変だろうに。顔も知らない女性にそっと黙祷する。
「なるほど、しかしそこまでしてこちらへ来た理由は?」
「リーティア様には作法を教えましたがこの度領主となられたことでさらなる作法が必要と思いまして馳せ参じました」
「え、た、確かにそうですが」
私が習った作法は初歩中の初歩だ、他は学術院へ入学するため試験勉強にしていた。
「良いですか?今、アレクサンドラ領主への関心はかなり高いです。それにこのまま功績を上げていけば皇帝陛下主催の建国パーティーへの招待もあるでしょう」
「なっ?!しかしアレクサンドラ家は皇帝陛下に不忠を向けました。そんな家をあの方が招待するとは............」
そう、忘れがちだが私は仮釈放中のようなものだ、そんな人物を呼ぶとはあり得ない。
「確かにそうですね、しかし他の諸侯は別です。力を付けている貴女を己の派閥に加えようとしてきます。政争に巻き込まれないためにも作法や社交術を身に着けていただく必要があります」
う、痛いとこ突いてくる。私も少しだけだが帝国貴族の派閥は知っている。今1番勢力のある皇帝派、それに対抗している貴族派、どちらでも無い中立派だ。
アレクサンドラ家は元々貴族派ではあったが私となれば別の派閥へ鞍替えも可能だ。しかし面倒だなぁ。
「それで夫人が指導すると?」
「はい、夫にも現当主の息子にも話は通しました。既に私は教育者として第1線を引いた身です。しかしそれでもやるべき教育はまだあると思っております」
ぶっちゃけるとシェリー夫人はかなりの権力者だ、今でこそ彼女は伯爵夫人だが彼女の祖先には大賢者というビッグな存在がいる。そしてその子供が当時の皇帝から尊爵という大公すら凌ぐ地位を与えられたという、その影響は今の続いており、シェリー夫人の発言は侯爵もねじ伏せられるぐらいだ。
給金は私の潤沢な給料から引けば良い。使い道が分からなかったのでちょうど良い。
「シェリー夫人、もう一度私の家庭教師として働いてください」
「無論です、リーティア様。このシェリー、貴女を立派な貴族として教育させていただきます」
こうして翌日からシェリー夫人のスパルタ教育が始まった。
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