神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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48 シャルを探す②

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 私たちはミスリアド侯爵家に着いた。

「カレンは怪しまれない程度にこの周囲にいて」
「任せろ。もし争いになったら何か合図をくれ」
「分かったよ。その時は少し大きめの魔法でも使って騒ぎを起こすよ」

 そうならないようにはするけどね。
 私は隠密スキルと気配遮断スキルを使って屋敷へと飛行魔法フライで移動した。

「結構人がいるな」

 屋敷の窓枠を見てみるとメイドさんが何人も歩いている。
 換気のためか空いていた窓から侵入し、屋敷を探索する。

 しばらく屋敷を歩いていると、あのシャルに言い寄っていたクソ貴族の姿が見えた。
 ついて行くと自分の部屋と思われる場所に入った。

「最近は楽しませてくれる女がいないな。すぐに死んでしまう」

 すごいことを言い出した。
 もしシャルが捕まっていたとしたらやばい。

「でも、今日の夜は少しだけ楽しみだ……。冒険者の女なら少しは耐えられるだろう」

 これはたぶんシャルのことだ。
 何をするのか分からないが、このクソ貴族は今夜にでもシャルに何かをするつもりだ。
 早くシャルを見つけないと……。

 でも私が手を出して指名手配にでもなったら目も当てられない。
 かなりイラついているが冷静になろう。
 私はクソ貴族が部屋を出て行くのを待ってから、部屋に何か証拠がないか探した。

 すると……。
 机の引き出しの奥から、暗殺者との契約書や、人を攫うための闇組織との契約書、横領の証拠書類……たくさん出てきた。
 どうやらこのクソ貴族だけじゃなくて親の当主も関与しているみたいだ。
 2人のサインが書かれている書類もある。
 これはクソ貴族達をおとしめるために必要な証拠になる。
 持っていこう。

 そして私はシャルを探すために、屋敷の探索を続けるが何も見つからない。
 念のため気配探知スキルを使ってマップを開く。
 すると、私のいるところに別の反応があるのだ。
 おかしい。私の周囲に人はいない。
 上の階の反応の可能性もあるので、窓から外に出て飛行魔法フライで確認するがやっぱり違う。

 ……もしかして地下があるのか。

 すぐに私は地下への入り口を探した。しかし、なかなか見つからない。
 屋敷のどこを探しても地下への入り口らしきものがなく、そして隠し扉のようなものも見当たらない。

「どこにあるんだ。くそっ……」

 なかなか見つからなくて焦りも出てくる。
 というか、そもそもこの屋敷で働いている人たちは地下のことを知っているのか。
 少しクソ貴族の立場になって考えてみる。最悪の気分だけど。

「もしクソ貴族が屋敷の従業員にもバレないように人を攫っていたとしたら、隠し扉の存在は隠したいはず。だとしたら……。外か!」

 私は急いで屋敷の中から出て外の庭園を探した。
 とても手入れがされている綺麗な庭園だったが、地面に入口がないか事細かく調べる。
 それでもやはり見つからない。もう日も傾いてきたようだ。
 
 屋敷の周囲の庭園を探し続けていると、屋敷の裏手に手入れがほとんどされていない庭が見つかった。
 明らかに怪しい場所だ。

 汚い庭を細かく探す……。
 すると、地面に小さな取手のようなものが見つかった。
 取手を持ってスライドさせてみる。

「見つけた……」

 ……やはり地下があった。

 薄暗い階段を降りていくと、奥には扉があった。
 どうやら鍵がかかっていないみたいだ。

 扉を開けて通路に沿って奥に進む。

 薄暗い場所だが、いくつもの牢がある。
 目を凝らしながら一つ一つの牢を確認していると、ついに牢の中で鎖に繋がれたシャルの姿があった……。
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