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47 シャルを探す①
しおりを挟む「それでシャルが攫われたってどういうこと?」
シャルだけ狙われたということは原因に心当たりがある。
カレンに外傷もないから争ったとも思えない。
「夜中に急に知らない奴らが部屋に3人いたんだ。私は慌てて剣を取ろうとしたんだけど、気がついたら寝ていたみたいで。そしてシャルのベッドを見たらいなくなっていた……」
私がウルレインで眠らされた時と同じスキルなのかもな。
睡眠魔法みたいな……。
「とりあえず落ち着いて。攫われたということは、殺すつもりはないかもしれないし」
そうは言っても今回のように宿に忍び込んでまで攫われるということは、殺される可能性が低いにしても、それ以外ならあり得る。
私が奴隷売買組織に捕まった時みたいな目に遭うかもしれない……。
「たぶん攫ったのはこの前のクソ貴族だと思う。あいつならこれくらいのことやってても不思議じゃなさそうだしね」
「確かにそうだな……」
ここは私の出番かな。
隠密スキルを使ってシャルの救出に向かおう。
「カレンよく聞いて。シャルの救出には私が向かう」
「な! 何言ってんだよ!」
「落ち着いて。私には姿を消せるスキルがあるから、クソ貴族の屋敷にも侵入できる」
カレンは目を見開いて私を見た。
ゴブリンの巣の偵察の時を思い出したのだろう。
「とは言っても、本当にあのクソ貴族がシャルを攫ったのか分からないから偵察程度だよ。でも、もしシャルがいたら必ず取り返してくるし、落とし前もつけさせる」
「あ、あたしにはただ待っていろって言うのか!?」
「そんなことはないよ。カレンには屋敷の外にいて欲しい。もし私が失敗して相手にバレて争いになったら、カレンにも助けに来て欲しいんだ。その方が心強いから」
私はカレンの肩を掴んで説得する。
すると、カレンも納得してくれたようで小さく頷いた。
とりあえず、クソ貴族の屋敷がどこにあるか調べないといけない。
ブルガルド家に行けば教えてくれるかな。
屋敷くらいなら大丈夫だよね。
「とりあえず、クソ貴族の屋敷を調べたいから、ブルガルド家に行って教えてもらってくるよ。カレンはここにいて、すぐ帰ってくるからさ」
私は隠密スキルを発動させて、飛行魔法でブルガルド家へと向かった。
「冒険者のヒナタです。ユリア様はいらっしゃいますか」
私はブルガルド家の門番に話しかけた。
「ヒナタ様か。少し待っていてくれ」
門番は屋敷に向かってしばらくして帰ってきた。
「歓迎する。どうぞ中へ」
屋敷へ案内されていつも通りサーシャが抱きついてきてくれた。
「ヒナタお姉ちゃん!」
「久しぶりだね。サーシャちゃん!」
久しぶりにサーシャ成分を補充できた。
このままサーシャとイチャイチャしたいけど、今日は我慢しなくちゃいけない。
「ごめんね、今日はユリアさんに用事があってきたんだ」
「そ、そうなんですか……。残念です」
そんな落ち込まないで。
すごい悪いことした気分になるよ……。
「あら、ヒナタさん。私に用事って何かしら?」
「ユリアさん。すいません。ここじゃ話しにくいので、別室でもいいですか」
そう言って私はユリアに案内されて別室へと向かった。
2人きりになった私は事情を説明する。
「実は、私のパーティメンバーが夜中に攫われました。たぶんですが、ミスリアド侯爵家の手の者だと思います。少し前に攫われた仲間が酒場で愛人になれと言い寄られていたので……」
「なんてことですか……。ミスリアド侯爵家にはいい噂はありませんがそんなことを。それで私に用事とは?」
「ミスリアド侯爵家の屋敷の場所を教えて欲しいんです」
「……侵入でもする気なの」
ユリアの目が鋭くなった。
確かに貴族の屋敷に侵入するのは危険な行為だ。
もし見つかれば、ただでは済まない。
でも、シャルは絶対に助けたい。
「その通りです。私なら大丈夫です。協力をお願いしたいのです」
私は立ち上がり、地面に頭を下げて土下座した。
仲間のためならこの頭はいくらでも下げられる。
「……本気のようですね。でも1つ約束してください。必ず無事に帰ってきてください」
「当然です」
なんとか説得できて、私はクソ貴族の屋敷を教えてもらった。
ブルガルド家を出て急いで宿へと戻った。
「カレン! 屋敷は分かったから急いで行くよ!」
「お、おう!」
カレンは大人しく宿で待っていてくれた。
こういうときって冷静さを欠いているから、1人で強行突破する可能性もあったしね。
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