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50 王宮に招待
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
昨晩は大変な思いをしました。
あのクソ貴族が相応の報いを受けるのを願うばかりです。
さて、私が目覚めると、目の前のシャルが私を見ていました。
「シャル! 気分はどう!?」
私が叫んだことにより、カレンも起きた。
「シャル!」
カレンがシャルに抱きつく。
「う、うん。大丈夫です。ところでここはどこですか?」
「ここは、ブルガルド家の屋敷だよ。昨日、シャルが攫われたから助けに行って、ここに置かせてもらったんだ」
「そ、そうでしたか。迷惑をかけてごめんなさい……」
シャルが落ち込む。
今回、シャルは何も悪くない。
悪いのはあのクソ貴族ただ1人だ。
「シャルは悪くないよ。それに仲間なんだから助けるのは当然でしょ!」
「それよりも何か変なことされなかった?」
カレンがシャルを心配して声を掛ける。
「なんかずっと寝ていたからあまり覚えてないけど、身体に異常はないかな……」
「そっか……。ならよかったよ」
本当にシャルに何もなくてよかった。
もしシャルの身体に何かあったら、私はあの屋敷を木っ端微塵にしていただろう。
私たちが話をしていると、扉が開いてユリアが入ってきた。
「あら、みんなおはよう」
「「「おはようございます」」」
綺麗な白いドレスを着たユリアが昨晩のことについて話をしてくれた。
「昨日のことだけど、王宮に行って宰相に話を通してもらったからもう大丈夫よ。今朝には騎士団がミスリアド侯爵家に行っていると思うから。確実にミスリアド侯爵家は取り潰しね」
よかった。
それなら今後もシャルが狙われる心配もなくなる。
やっぱり証拠収集をしておいてよかったようだ。
「それでね。この証拠を集めてくれた冒険者に国王様が直接お礼をしたいらしいのよ」
「「「は?」」」
え?
いまなんて言った?
「す、すいません。もう一度お願いします」
「国王様がヒナタさんに会いたいって!」
「……どうしてそうなるんですか!?」
嘘でしょ。
私みたいな普通の冒険者がなんで国王と会えるんだよ。
作法とか知らないよ。失礼なことするかもしれないよ。
カレンもシャルも私を憐れみの目で見ている。そんな目で見ないでよ……。
「どうしてって……。それについては、国王様から聞いて。とりあえず、私と一緒にすぐに王宮に行きましょう!」
言われるがままに、馬車に乗せられて王宮へと向かう。
「あの私、礼儀作法とか知らないんですけど……。それに格好もこんな感じだし」
私の今の格好はワンピース姿だ。冒険者というより、ただの街娘になっている。
「礼儀作法なんてどうでもいいのよ! それにヒナタさんのその格好も可愛いわよ」
どうやら話が通じていない。
女の子らしい可愛い服装ですかって聞いているんじゃないんだよ。
失礼な格好じゃないか心配しているんだよ。
そんなこんなで王宮へ到着。
門番の騎士に挨拶もして、中へ入っていく。
それにしても大きいな。本当にお城って感じだ。
ユリアについて行って、どんどん進んでいく。
王宮にいる人からもジロジロ見られている。
やっぱりこの格好じゃダメだよね……。
「さあ、ヒナタさん。着いたわよ」
気がついたら、目的地に到着したようだ。
目の前には大きな扉がある。
まさしく、この先に王様がいるような雰囲気を醸し出している。
私は緊張しながらも、開いた扉の先に広がるレッドカーペットの上を歩いていく。
前を見ると、玉座に座った王様がいる。まさしく王様って感じだ。冠を被っている。
私は、王様の前に着くと、ユリアにならって片膝をついて頭を下げた。
「面をあげよ」
私は言われた通り、頭をあげて、王様の顔を拝見した。
年齢は40歳くらいに見える。でもこの世界の人は若く見えるから実際は分からない。
顔はダンディなおじさまって感じだ。
「ユリアよ。そのものが此度のミスリアド侯爵家の犯罪の証拠を集めた冒険者か」
「はい、その通りです」
私は黙って聞いている。王様がすごい見てくる。
「その者、名前はなんという?」
「はい、ヒナタと申します」
「女性に聞くのは憚られるが、年はいくつだ?」
「15歳です」
本当は34歳です。なんて言えるわけがないよね。
この容姿で34歳はあり得ないだろう。
「まだ若いな。しかし、今回のミスリアド侯爵家の件では世話になった。今までも王都の住民が攫われる事件は起きており、犯人もミスリアド侯爵家だと睨んでいたのだが、証拠がなかったのだ」
なんだ。王様からも怪しまれていたのか。
でも、証拠がないのに屋敷に行って何も見つからなかったら、それはミスリアド侯爵家への侮辱になるし、王族の失態でもあるからね。
「いえ、私は仲間を助けるために動いたに過ぎません」
実際、シャルさえ助けられればそれでよかったのだ。
証拠集めはついでに過ぎなかった。
「そうか。ちなみにミスリアド侯爵家は取り潰しが決まった。送られてきた証拠でも十分だったが、地下牢を調べたら、100人以上の遺体が見つかった。どれもひどい状態だったらしい。よって、現当主と息子は公開処刑が決まっている。それ以外の家族については、いまだ検討中だ」
公開処刑か。でもそれくらい当然だな。
それで、被害にあった人と家族が報われればいいけど。
「さて、今日招いたのは、ミスリアド侯爵家の取り潰しの報告と貴殿にお礼を言いたかったからだ。この王都の住民を守ってくれて感謝する」
王様が私に向かって頭を下げた。
貴族はクソみたいなやつしか聞かないけど、このサンドラス王国の王様は常識人みたいだ。
「いえ、もったいないお言葉です」
「そうか。では、もう下がって良いぞ。急に呼び出して失礼したな」
私たちは頭を下げて、部屋から出た。
「はぁ~、緊張したぁ~」
「ふふ、ヒナタさんよくできていたわよ」
もう王宮に呼ばれるとか勘弁してほしい。二度と来たくない。
早く帰ってサーシャと遊びたい。
私たちは馬車に乗り、ブルガルド家へと帰った。
「ヒナタお姉ちゃん!」
「サーシャちゃん!」
屋敷の中に入った瞬間、サーシャが飛び出してきた。
サーシャを抱きしめていると、嫌なことを全て忘れられる。
このままお持ち帰りしてもいいかな。
「今日は、ヒナタお姉ちゃんと遊べますか?」
そんな上目遣いで言われると断れないよ。
「もちろん!」
私はカレン達がいる場所に行き、2人にサーシャと遊んでくると伝える。
すると、2人も付いてくると言ってきた。
……なんで、私とサーシャのデートの邪魔をするんだ。
さすがにここで2人は来ないで、とも言えないので、笑顔で快諾した。
うまく笑顔ができていたかは分からないけど。
私たちは、4人で王都を回ろうと外に出て行った。
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