神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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58 ケートスの討伐

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 ケートスって何?
 カレンとシャルの顔を見るが首を傾げた。
 2人も分からないらしい。

「えっと、ケートスってなんですか?」

 私は受付のお姉さんに聞く。

「ケートスは、頭部が犬で胴体が魚の姿の海の魔物です。古い魔物図鑑に載っていました」

 なんだそれは。
 そんな得体の知れない魔物がいたのか。
 頭部が犬なら可愛いのかもしれない。
 でも残念ながら私は猫派だけど。

「数百年前はよく目撃されていた魔物のようでした」

 絶滅したと思っていたけど、実はまだ生きていたってことかな。
 そんないにしえの魔物がいるとは。

「討伐するんですか?」
「このままだと食料が少なくなって、この街が廃れていくので討伐対象ですが、冒険者がいないので……」

 こういう場合はどうするんだろう。
 高ランクの冒険者が来るまで待つのかな。
 それとも国の騎士団とかに討伐をお願いするのかな。

「なら、どうやって討伐するんですか?」

 受付のお姉さんが悩んでいる。
 特に考えていないらしい。
 
 ここは私の出番かな。
 討伐できるか分からないけど、挑戦はしてみたい。

「あの、私がその討伐依頼を受けてもいいですか」
「いや、さすがにBランク冒険者でもケートスは倒せないんじゃ……」

 海の魔物であれば、いくら高ランクでも討伐できないことはある。
 いくら強い魔物でも陸であれば倒し方はいくらでもある。
 しかし、海となれば弱い魔物でも戦い方が絞られて、苦戦する。
 
 でも、私は空を飛べる。
 それに夜行性を利用すれば、夜に討伐ができて、住民からも戦闘を見られなくて済む。
 この街の遠くに岩でできた孤島があったため、そこに誘導して孤島を足場にしても戦える。
 空を飛べるだけで戦い方はたくさんある。
 私向きの依頼なのは間違いない。

「絶対倒せるか保証はできないので、条件はつけたいです」
「なんですか?」
「討伐は夜間に行います。それと、戦闘を誰にも見られたくないので、住民には私が討伐することを教えないでください」
「そんなことでしたら構いませんよ」

 なら交渉成立だ。
 私は依頼を正式に受注した。
 討伐難易度も高いことから、お姉さんの計らいで、もし依頼を失敗しても、失敗扱いにはしないとのことだ。
 ありがたい提案だ。

 私は冒険者ギルドで回復薬ポーション魔力回復薬マナポーションを買って、宿に戻った。

「なぁヒナタ。本当に倒せるのか?」
「それは分からないよ。やってみて無理そうだったら、逃げてくるから安心して」

 万が一を考えて、カレンとシャルには宿に残ってもらうことにした。

 私はケートス戦に備えて早めに寝た。

 


 深夜に目が覚めて、私は準備をして海に向かう。
 周囲に人がいないことも確認してから、気配探知を使って、ケートスの居場所を探る。

「いた!」

 海岸から300メートルくらい先に大きな反応がある。
 私は飛行魔法フライで、ケートスに近付く。
 とりあえず、私に敵意を向けさせた方がいいよね。

「ロックショット!」

 岩石弾を10発展開させて、ケートスの反応がある海面に向かって放つ。

「グオオオォォォ!」

 ケートスが姿を現した。
 本当に頭が犬みたいだ。でも気持ち悪い。
 全く可愛くなかった。

 そしてケートスが海に潜った。
 しかし、気配探知で確認してもケートスの反応は移動していない。
 
 何をするのか分からないので、そのまま空中で待機していると、海面にケートスの影が浮き出てきた。

「おおっと!」

 口を開けたケートスが、海面から急に飛び出してきた。
 びっくりした。食べられるかと思った。
 危ないので高度を上げる。
 ケートスも私に敵意を持っている。

 できれば、孤島に行きたいので、私は孤島に向けて移動する。
 気配探知で確認すると、ケートスも付いてきているようだ。
 とりあえず、魔力消費を抑えたいので孤島に行きたい。

「このまま付いてきてよ」

 海面にケートスの影は見えないが、気配探知には反応がある。
 私と同じスピードで真下にいる。

「きゃっ! また……」

 再度、口を開けて海面から飛び出してきた。
 目に見えないから、かなりの恐怖だ。
 急に下から、口を開けて飛び上がってこないでよ……。

「もう少しで孤島だ」

 孤島に着いて、私は飛行魔法フライを解除して、足を地面に着ける。
 本当に小さな孤島で、ケートスが孤島の周りを回っているようだ。
 このままだとらちが明かない。
 私はケートスの影が見えた場所に岩石弾ロックショットを放つ。

 しかし、ケートスには傷がつかない。
 かなり硬いようだ。

 また、このパターンか。
 口の中に魔法を放たないといけないかな。
 目に見えないから、急に飛び出してきて怖いんだよね。
 でも、そうしないと討伐ができない。
 諦めて再度、飛行魔法フライでケートスの上を飛ぶ。

 いつ飛び出してくるか分からない状況で、上空で待っていると、急に海面が割れた。
 一瞬にして魔法障壁が破られて、身体に強い衝撃を受けたことにより、上空に跳ね飛ばされた。

 やばい、何が起きたか分からないけど、意識が……。
 落下しながらも意識を保つ。

 このままでは飛行魔法フライを維持するのも難しいため、すぐに孤島に降りようとしたが、何故かなくなっていた。

「一体何が……」

 さっきの衝撃で孤島が沈んだのか?
 何が起きたか分からない。
 すぐに海岸に避難しないと……。
 
 さらに追い討ちをかけるように海面から衝撃が来る。

「かはっ……」

 もしかしたら、ケートスが衝撃波みたいなものを海の中から出しているのかもしれない。
 2発目の衝撃波をモロに受けて、意識を保つだけでも限界に近い。
 本当にまずい。
 とりあえず急いで、近くの海岸を目指す。

 しかし、ケートスはそれを許さない。
 海面から何度も衝撃波を飛ばしてきた。
 もう一度受けたら確実に意識を失う。
 そうなったら海に落下して喰われるのがオチだ。
 私は衝撃波を回避しながら逃げる。

「やばいやばいやばい」

 かなり焦っている。
 無我夢中で近くの海岸に向かいながら、海面から飛び出してくる衝撃波を避け続ける。
 途中で無限収納から、回復薬ポーション魔力回復薬マナポーションを出して空中で飲みながら海岸を目指す。

 そして、海岸に近づいてきたので高度を下げたところ、海面からケートスが口を開けて飛び上がってきた。

「マジかよ!」

 結構頭が回るみたいだ。
 この瞬間を待っていたと言わんばかりに、今までにないくらいのスピードで飛び上がってきた。
 焦った私は、無意識にケートスの口内に魔法を放った。

「ロックショット!」

 ドゴォォォオオオン!!!

 凄まじい威力の岩石弾ロックショットがケートスを貫いた。

「なんだ、今のは……」

 魔力回復薬マナポーションのおかげで、魔力は余っていたが、いつも通りに魔力を込めただけの岩石弾ロックショットだったはず……。
 それなのに、凄まじい威力だった。
 無意識で岩石弾を放ったので、なぜあんな威力が出たのか分からない。
 新しい固有オリジナル魔法を発動させたのか?

 海岸に辿り着き、ケートスを確認すると、海にお腹を見せて浮かんでいる。
 気配探知で確認すると、反応が消えている。

 私は飛行魔法フライでケートスのところに行き、強奪スキルを使ってから無限収納に死体をしまった。

 海岸に戻り、そのまま気絶するように眠った。
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