神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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59 タラサの街の女神様

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 朝日が登ってきて、周囲が明るくなってきたところで目が覚めた。

「……そうか、ケートスを倒したんだ」

 私は寝ぼけながらもケートス戦を思い出す。
 本当に死ぬかと思った。
 今までで一番ダメージを負った気がする。
 回復薬ポーション魔力回復薬マナポーションがなかったら、死んでいたと思う。

 とりあえず、久しぶりのステータスの確認だ。

名前:ヒナタ
種族:人族
年齢:15歳
職業:魔法使い
HP :197/203(+25)
MP :158/345(+22)
スキル:水魔法LV7
    風魔法LV7
    火魔法LV5
    土魔法LV7
    無属性魔法LV5
    無限収納
    威圧LV4
    毒霧LV1
    毒耐性LV3
    麻痺耐性LV2
    気配察知LV5
    気配遮断LV4
    隠密LV5
    発情LV2
    遠視LV4
    気配探知LV5(+1)
    自然回復LV4
    身体強化LV2
ユニークスキル:強奪

 体力も魔力も大幅に上がっている。
 それに新たに無属性魔法を取得している。
 もしかして、これがケートスが使っていた衝撃波か?

 ブルガルド家から貸してもらった魔法書にも無属性魔法なんて書いてなかった。
 かなり気になるが、イメージも湧かないから無属性魔法はそのうち試してみよう。

 とりあえず、カレンたちも心配しているかも知れないから宿に帰ろう。
 魔力はあまり回復していないけど、自然回復のおかげか体力はほとんど回復している。

「というか、ここの海岸はどこだ?」

 ケートスとの戦闘に夢中で自分がどこの海岸に辿り着いたのか分からない。
 とりあえず飛行魔法フライで上空に飛んで位置を確認しよう。

「結構街から離れていたんだな……」

 無我夢中だったからか、街の海岸からはかなり離れた位置にいたようだ。
 こんな遠くに辿り着いていたんだな。

 ここにずっといるわけにも行かないしすぐに歩いて宿へと帰り、部屋へと戻った。

「ヒナタ!」
「ヒナタさん!」

 部屋に入ってきて2人が私を抱きしめてきた。
 勢いに負けて後方へ倒れた。

「ちょっと2人とも!」

 2人のすすり泣く声が聞こえる。
 かなり心配をかけたようだ。

「遅いぞ! 朝起きたらヒナタがいないから心配したんだぞ!」
「心配させないでください!」

 2人が私の胸に顔を埋めてきたので、2人の頭を撫でて慰める。
 そして私はケートスの討伐がかなりギリギリの戦いになってしまって、そのまま海岸で寝ていたことを説明した。

「ギリギリになったなら、すぐに逃げてくればよかったのに!」
「ケートスが逃してくれなかったんだよ。変な魔法が直撃して危なかったから、海岸に避難しようとしたんだけどずっと追いかけられたんだ」
「それでも心配したんですよ! ヒナタさんに何かあったんじゃないかって……」
「ごめんねシャル……」

 シャルの頭を再度撫でて慰める。こんなに私を心配してくれていたのは申し訳ないと思うと同時に凄く嬉しい気持ちにもなった。
 2人に昨晩の状況を説明をして何とか理解を得られた後、私単独で宿を出て冒険者ギルドに向かった。
 カレン達には宿で休んでいるか、街に遊びに行っているように促しておいた。


 いつもの受付のお姉さんのところに報告に行く。
 今日は冒険者が誰もいない。
 ケートスの出現で逃げ出したか?

「ケートスの討伐報告に来たんだけど」
「え!? 討伐できたんですか!?」

 お姉さんが驚いている。
 予想外の報告だったためか、私たちに何も伝えずに2階に登って行った。

 しばらくすると、40歳くらいのおじさんが登場した。
 多分ギルマスだろう。

「ケートスを討伐したというのは本当か?」
「はい。討伐証明にケートスをアイテム袋にしまっているので、出しましょうか?」

 そう言って、おじさんと受付のお姉さんに連れられて裏手の庭に案内された。

「ここに出してもらっていいか」

 おじさんから許可が出たので、アイテム袋から出すように偽装して無限収納からケートスを取り出す。

 ドン!
 庭いっぱいにケートスが置かれる。
 大きさは15メートルくらいかな。

「……嘘じゃなかったのか」

 失礼な。
 こんな年端もいかない少女が虚偽の報告をすると思ったのか。
 私は基本は正直者だ。

「助かった。あなたのおかげでこの街は救われた。感謝する」
「いえ、依頼を受けたのは私ですし、これも仕事ですから」

 死にそうになったけど、これが冒険者の仕事だ。
 それによく分からない無属性魔法も手に入ったし。

「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はこのタラサの街でギルドマスターをやっているマレルだ」
「私はヒナタです」
「ヒナタか。本当に感謝する。ヒナタはこの街の英雄だ」

 英雄にはなりたくないよ。
 だから、こっそり討伐しに行ったんだから。

「ヒナタを英雄として住民にも知らせないとな」
「やめてください!」

 全力で拒否だよ。
 英雄なんてなったら、この街に二度と来られなくなるよ。

「そ、そうか? 名誉なことだと思うが」
「目立ちたくないので……」

 ギルマスは納得いかないような顔をしている。
 普通の冒険者は自分の偉業を周りに言いふらすから、私みたいなのは珍しいんだろう。

「しかし、領主様ぐらいには報告してもいいだろう?」
「私が討伐したことが広まらなければ構いません」
「分かった。とりあえず私の部屋に来てくれ」

 私はギルマスに連れられて、ギルドの2階に案内される。

「ギルドカードを貸してくれ」
「え? はいどうぞ」

 私のギルドカードをギルマスに渡した後、受付にある魔道具と同じ物を取り出して何やら入力している。
 何をしているかは全くわからない。

「えっと、何を……?」
「あぁ、約束を果たすためにな。報酬については受付で振り込んで貰ってくれ」
「あ、はい……」

 約束とは何だろうか。
 私が討伐したことを秘密にすることに関係していることかな?
 まあ別に詮索することでもないよね。
 この街を救った私に対して不利になるようなことをするわけがないだろうし……。

「あと、もしかしたら領主様にヒナタさんが呼ばれる可能性もあるから、数日はこの街に滞在してもらってもいいか?」

 また、この展開か。
 ウルレインでのワイバーン討伐を思い出す。
 あまり貴族とは関わりたくない。
 フィリップはいい貴族だけど、この街の貴族がいい人とは限らない。
 私の力を利用しようとする可能性もある。
 でも、貴族から呼ばれたら断ることもできない。
 不敬罪とか言われて、牢に収監されても困るし。

「構いませんよ。それなら少なくとも3日くらいは滞在しています」

 その後、私はギルマスの部屋から退出して、1階にある受付に戻りお姉さんにギルドカードを渡し報酬を振り込んでもらった。

「ヒナタさん、本当にありがとうございました。今更ですが、私はミルファと言います。よろしくお願いします」
「うん、よろしくね」

 よし。やることも終わったし宿に帰って少し寝よう。
 昨晩は睡眠時間が足りなかったし、寝不足なのだ。

 宿に帰ると、カレン達がいない。
 どうやら街に遊びに行ったみたいだ。
 私はそのままベッドに行き、倒れるように眠りについた。



 コンコン。

 部屋の扉のノックで目が覚める。
 だらしない格好しているけど、とりあえず扉を開ける。

「ヒナタ様でしょうか」

 タキシードを着た男性が立っていた。

「はい」
「領主様がお呼びですので、お迎えに参りました。宿の前に馬車を用意しております」

 男性がそう言って、扉の前から立ち去り階段を降りていった。
 私は急いで、着替えをして馬車に乗り込んだ。

 馬車の中には私と1人の男性。こんな狭い密室に男性と2人きりとか初めてじゃないか。
 なんか緊張してくる。何を話せばいいのかな。この男性はずっと目を瞑って何も話さないし。
 うぅ。気まずい……。

 結局緊張してしまい一言も発することもなく、領主邸に着いた。
 ブルガルド家の屋敷よりは少し小さめだ。

 屋敷の中に入り、小部屋に案内されて入ると領主がいた。

「私はタラサの街の領主パラトス・ミレトイアだ。あなたが、ケートスを討伐した冒険者か」
「冒険者のヒナタです。私が討伐しました」
「あなたのような可憐な少女が討伐したなんて……」

 なんだ、信じられないか。
 虚偽だと言い張って私を牢にでも入れるか。
 そうなったら、この屋敷がなくなるぞ。

「正直、あなたのことを聞いた時は信じられなかったが、ギルマスが確認したと言っていたからそうなのだろう。ヒナタさん、タラサの街を救ってくれて感謝する」

 領主が頭を下げた。
 この街の貴族もいい人なのかもしれない。
 分からないけどね。

「いえ、ギルマスにも言いましたけど仕事として受けただけなので」
「そうか。では領主としてもお礼をしたい。机に謝礼金を置いといた。受け取ってくれ」

 こういうお金は3回目だ。
 サーシャの救出と、ワイバーンの討伐でも貰っている。
 最近お金が貯まりすぎて、もう家を買えそうだよ。
 前世では考えられないくらい貯金があるよ。

「あ、ありがたく頂戴いたします」


 パトラストとは当たり障りのない会話をしてから、馬車で宿まで送ってもらった。
 宿の部屋に戻ると、カレン達がいた。

「カレンたちも帰ってきてたんだ」

 カレンとシャルが深刻な顔をしている。
 あれ、何かあったのかな。

「どうしたの2人とも?」
「ヒナタ、落ち着いて聞いてくれ」
「うん、なに?」

 カレンが真剣な顔で私を見つめる。
 え、こんな前置きするって今までなかったよね。
 なんかの事件にでも巻き込まれたのかな。
 私はカレンの言葉を待っているとカレンが口を開いた。

「この街でヒナタが女神様って呼ばれている」
「……は?」
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