神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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65 また王様と会う②

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 まさかの王様の登場に驚きつつも平然を装った。
 そして王様は私を覚えていたようだ。

「ご無沙汰しております、国王陛下」

 私は膝をついて頭を下げる。
 礼儀としてやった方がいいからね。

「よい。頭を上げてくれ。それにここは公式の場でもないから言葉も崩して構わん」

 よかったよ。
 やっぱりこういうのはまだ慣れないな。
 言葉遣いは気をつけているけど、いつボロが出るかわからないしね。

「あら、お父様もご存知でしたの?」
「ああ、以前のミスリアド侯爵家の処分に貢献してくれた冒険者だ」
「あら、あの時の……」

 ミスリアド侯爵家か。あのクソ貴族だな。
 あの後、王都で公開処刑がされたみたいだけど私は見に行っていない。
 人が死ぬところなんか好き好んで見るものではないからね。

 王様と王女様は私と対面になるようにソファーに座った。
 それに続いて私もソファーへと座る。

「この度は娘のソティラスを救ってくれて感謝する。其方そなたが助けなければ、来月娘が嫁ぐはずのメロン王国との更なる交易も有耶無耶になっていただろう」
「いえ、偶然通りかかっただけなので……」
「しかし、娘の命を救ってくれて礼もなしじゃ、王としても示しがつかない。本来であれば男爵位を与えようと思うが」
「丁重にお断りさせていただきます」

 貴族なんてまっぴらごめんだ。
 絶対になりたくない地位だよ。
 貴族になると領地を与えられて、サンドラス王国に居続けないといけないし。
 自由に世界を回るという楽しみもなくなる。
 断固拒否だ。

「そういうと思ったので、金銭にしようと思う。ギルドカードは持っているか」

 妥当なのは金銭でお礼だよね。
 お金には困っていないけど、あって困るものでもないし。
 私は言われた通りに、ギルドカードを差し出す。

「ミスリアド侯爵家の処分に貢献したことも踏まえて、謝礼金を振り込んでおこう」

 どうやら王様はこの場でも振り込みができるようだ。
 冒険者ギルドと同じボードを持ってきて、私のギルドカードをかざして何やら入力している。
 あの魔道具? かなり不思議なんだよな。
 どうやって作ったんだろう。

「振り込んでおいた。そのうち確認するといいだろう」

 王様がニヤッと笑いながらギルドカードを返してきた。
 なんか怖いな。
 驚くほどの金額が振り込まれたか、少額しか振り込まなかったかの2択だ。
 この顔だと前者だと思いたい。

「ありがとうございます」
「どうだろう。夜も遅いし、このまま王城に泊まっていってはいかがかな?」

 え、素直に帰りたいんですけど……。
 でも断れないんだよね。
 これはお願いじゃなくて命令だ。

「では、お言葉に甘えて……」



 そして私に用意された部屋は、10畳くらいの部屋でベッドも大きい。
 5人くらい寝てもまだ余裕そうだ。
 こんな大きいベッドは前世でも見たことがない。
 さすが王城だ。

「ヒナタ様、夕食の準備ができました」

 部屋でゆっくりしていると、メイドさんが入ってくる。
 さすが王宮勤めのメイドさんだ。所作がしっかりしている。

「はい、今行きます」

 案内された部屋に入ると王様と王妃様、王女様がいた。
 なんの罰ゲームだよ。

「失礼します」
「ヒナタさんとお会いするのは初めてね。私はヒルデ・サンドラスと申します」
「ヒナタです。よろしくお願いします」

 王妃様から挨拶された。
 ソティラスに似ていて美人な人だ。
 年齢が全く分からないほど若く見える。
 そういえば王様の名前は分からない。
 さすがに聞くのは失礼だから聞かないけど。

「ヒナタ様は王都で活動されているのですか?」

 突然、ソティラスが質問してくる。

「そんなことはありません。護衛依頼でたまたま立ち寄っただけです。そのうち別の街にも行こうと思います。それに他国にも行きたいですし」

 次はどこに行こうかな。
 できれば、異種族がいる国に行きたいものだ。
 エルフとか獣人族とかに会ってみたい。
 このサンドラス王国では見かけたことがないので、他国にいると思う。

「そうなんですね。私もメロン王国に嫁ぎますので、そちらの文化に触れて生きていくのもとても楽しみなんですよ」
「メロン王国ってどんなところなんですか?」
「メロン王国はサンドラス王国よりも農業が盛んな国ですね。サンドラス王国にもたくさん輸入しているんですよ」

 そうだったのか。
 私が知らないだけで、他国から食材が輸入されているものなんだね。
 前世と違って生産国が書いてないから分からないよ。

「それに冒険者でしたら、メロン王国にある迷宮が有名ですね」
「迷宮ですか?」

 迷宮ってあの迷宮?
 前世の漫画の知識だと、階層別に魔物がいて深層になるにつれて魔物が強くなるやつ。
 そして魔物を倒せば宝箱が出てきて、一攫千金が狙えるあの迷宮のこと?

「はい。迷宮に関する書物では、この世界には攻略難易度が高い3つの迷宮があるのです」

 3つだけは難しいのか。
 まだ一度も攻略されていないのかな。

「1つ目はパレルソン帝国にあるクロト迷宮。2つ目はトパロン王国にあるラケシス迷宮。3つ目がメロン王国にあるアトロポス迷宮です」

 へぇ、勉強になるな。
 でも私はあまり迷宮に興味が湧かないから自分の意思では行かないだろう。
 カレンたちが行きたいといえば行くかもしれないけど。
 そういえば前に教会に行ったときにも、蘇生の宝珠があるアスクレピオス迷宮っていうのが書いてあったな。

「そういえば、最近パレルソン帝国にあるクロト迷宮が攻略された、みたいな噂を聞きましたね……」

 え? 攻略できたの?
 攻略難易度は高いんじゃないのかよ。

「今まで攻略されたことがない迷宮なので本当かどうかは分かりませんがね」
「本当に攻略した人がいるなら気になりますね」
「ヒナタさんも挑戦してみてはいかがですか?」

 いやだよ。死にたくないもん。

「気が向いたら行きましょうかね……」

 当たり障りのない返事をしておく。
 それにしてもパレルソン帝国か……。
 どこかで聞いたような気がするんだけど忘れちゃったよ。
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