神様のミスで女に転生したようです

結城はる

文字の大きさ
82 / 139

82 家庭教師②

しおりを挟む
 それから数日後に再度無詠唱での風刃ウインドカッターに挑戦した。
 驚いたのは前回は一回でも風刃を行使すればフラついていたが、今は3回行使して魔力欠乏になった。
 これは間違いなく魔力量が増えていることになる。
 確信はなかったが、やはり魔法を使えば使うほど魔力量が増えることがわかった。
 そういえばどこかの論文にも魔力枯渇を繰り返せば、魔力量が増えるって書いてあったな。
 信憑性がないとも書かれていたけど、あながち間違っていなかったということだ。
 それとも人によって変わるのかもしれない。

「うぅ、無詠唱だと発動しません……」
「どんな風刃ウインドカッターを発動したいのか、どんな風に飛んでいくのかをイメージしてみて」

 サーシャは目を瞑ってイメージを始めた。すると。

 シュン!

「「できた!」」

 やっとの思いで無詠唱での風刃ウインドカッターが完成した。
 どうやら飛ばすイメージができていなかったみたいだ。

 イメージと一概に言っても、どこまで細かくイメージするかが大事だ。
 私の場合は無意識でやっていることだが、初めての人はそうもいかない。
 例えば私の場合は風刃ウインドカッターを発動させるために、1メートルくらいの大きさの風の刃を時速100キロで放物線を描くように飛んでいくイメージをしている。
 要はどこまでイメージするかだ。
 ただ風刃が飛ぶイメージだけだと、魔法陣も情報が足りずに構築ができない。
 なるべく詳細にイメージすることで、魔法陣が構築しやすくなるのだ。

「おめでとう! サーシャちゃん!」
「ヒナタ先生のおかげです!」

 これが無意識に発動できるようになるまで練習したら、次はいよいよ魔物に挑戦だ。



 それから何日もかけて練習を続けて、サーシャの魔力量も増えてきた。
 そして無詠唱の風刃ウインドカッターも完璧にマスターした。
 やはりサーシャは魔法の才能があるかもしれない。

「今日は森に行って、実際に魔物を試してみよう!」
「はい!」

 サーシャがものすごい笑顔だった。
 どうやら楽しみにしていたみたいだ。

 普通に森に行ってもいいけど、せっかくだから冒険者ギルドに行って常設依頼を受けようと思う。

「セレナさん、ゴブリン討伐の常設依頼を受けるよ」
「え、わ、分かりました。あれ? 隣にいるのは?」
「領主様の娘さんだよ。魔法の家庭教師の一環でゴブリンを討伐しに行こうかと思ってね」
「えぇ!? でも、ヒナタさんなら大丈夫か……」

 セレナは少し不安な表情をしているが、森の奥まで行くつもりもないので大丈夫だろう。

 早速森へと向かう。
 私は気配探知スキルで魔物の位置を確認しながら歩く。

「魔物討伐は初めてなので不安です……」
「大丈夫だよ。私が完璧にサポートするから!」

 とは言ってもどうしようかな。
 私がゴブリンを瀕死まで追いやったところをサーシャにとどめを刺してもらってもいい気はするが、できればサーシャには魔物の恐ろしさを体験してもらいたい。

 ウルレインを出てから、30分程度歩いたところで魔物の反応を見つけた。

「サーシャちゃん。この先に魔物がいるよ」

 サーシャは真剣な顔つきになる。
 私が前でその後ろにサーシャが付いてくる。

 反応が近づいてきて、目の前にゴブリンが3体いた。
 んー、3体だとサーシャには難しいかな。
 でも、手助けするのは最後まで待ちたい。

「サーシャちゃん、3体同時に相手できる?」
「頑張ります」

 サーシャの風魔法なら落ち着いてやれば簡単に討伐できる。
 でも標的である魔物は今までと違って動くし、武器をもって迫ってくる。
 この状況下でも冷静に対応できるか見てみたい。

「なら、サーシャちゃんに任せるよ。いい? 冷静にいつも通りにやれば倒せるからね」
「分かりました……」

 私は隠密スキルでゴブリンからは見えないように姿を消す。
 これで標的はサーシャだけになる。

 サーシャが木の影に隠れながら風刃ウインドカッターをゴブリンに向けて放つ。

「ウインドカッター!」

 突如として放たれた風刃ウインドカッターにゴブリンは反応できずに背中に直撃する。
 しかし致命傷にはならず、3体がサーシャに向かって迫ってきた。

「きゃあ! う、ウインドカッター!」

 再度放った風刃ウインドカッターは1体のゴブリンの首を斬った。
 しかし、まだ2体いるがサーシャはかなり慌てふためいている。
 ちょっとまずいか?

 どんどん迫ってきたゴブリンに怖気付いてサーシャが尻餅をついた。
 あ、これだめだ。

「エアショット!」

 ゴブリン2体の頭に向けて空気弾エアショットを撃ち込む。
 あっという間にゴブリンは気絶する。

「大丈夫? サーシャちゃん」
「す、すいません……」

 腰が抜けたのか、立つことができないみたいだ。
 なので私も座り込む。

「初めてにしてはよく1体討伐できたね。3体同時に来るとあんな風に焦っちゃうかもしれないけど、魔物は待ってくれないから常に冷静にいないとダメだよ」
「はい……」

 初めてだから冷静さを失うのは仕方ない。
 一番のミスは最初の風刃で1体のゴブリンを倒せなかったことだ。
 あれを倒せていたら、もう少し冷静になれたかもしれない。

「とりあえず、残りの2体は気絶させているから、とどめはサーシャちゃんにお願い」
「はい。ウインドカッター」



 初日にしてはいい感じだ。
 いきなり成功してしまうと増長しちゃうかもしれないからね。
 そうなると変に自信がついて油断にもなり得る。

 今日のことをサーシャには反省してもらって次に生かすことができれば上出来だ。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...