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83 鉱山に行く①
しおりを挟むサーシャに魔法を教え始めて2ヶ月が経過した。
あれからも魔物の討伐に行き続けて、サーシャ単独でもオーク討伐ができるようになった。
最初のゴブリン討伐の失敗からたくさん反省していたので、それからの成長は著しいものだった。
やはり人間は失敗をして学んでいくものだと思う。
今では私と同じように、魔力の出力調整もできるようになったし、固有魔法の空気弾もできるようになった。でも飛行魔法は難しいから教えていないよ。
しかし2ヶ月でここまでできるようになるとは驚きだよね。
家庭教師が優秀だったみたいだ。
え? 調子に乗るなって? ごめんなさい。
もう冒険者登録したらDランクになれそうなくらいに強くなったと思う。
ステータスが見られないから、風魔法レベルも魔力量も分からないが、学園に行けばかなりの優等生だと思う。
聞くと学園でも魔物討伐の授業があるらしくて、最初はみんな恐怖でゴブリンも討伐できないみたいだ。
なんせ学園の生徒はほとんどが貴族だ。
子供のうちから魔物討伐に行かせる親がいないのは頷ける。
それに魔物討伐だけでなく、私との対人戦も経験させたから学園の生徒ではサーシャの相手にもならないと思う。
そもそも新入生がいきなり無詠唱魔法を扱える時点で異端なんじゃないか。
さらにサーシャのこの容姿に合わせて、成績も優秀で魔法の天才。
周りの男どもからモテまくるのではないか。
そして他の女子から妬まれていじめを受けるとか……。
サーシャいじめられないよね? 大丈夫だよね?
先生は心配だよ。
でもサーシャに教えられることは大体終わったので、私の家庭教師もこれで終了だ。
最終日にフィリップから言われていた上級魔法の風撃を教えてみたが詠唱すると普通にできた。
え、上級魔法まで行使できるなら風魔法レベル7はあるんだけど……。
ちょっとサーシャが強くなりすぎていない?
正直ここまでできるようになるとは思っていなかった。
将来は王宮魔術師にでもなりそうだ。
でもこれで目標は達成だ。
「ヒナタさんのおかげで娘が優秀な魔法使いになれた。短い間だったが、感謝する」
「ヒナタ先生お世話になりました」
フィリップとサーシャにお礼を言われて、私は屋敷を後にした。
3ヶ月くらいの家庭教師だったけど、かなり楽しかった。
サーシャと一緒にいられたこともそうだが、私は人に魔法を教えるのが好きなようだ。
前世ではそんなことなかったような気がするけど、学校の先生になるのも良かったのかもしれない。
定期的な家庭教師生活も終わったので、これでカレンたちと冒険者としての活動ができる。
いや、家庭教師期間も依頼は受けていたよ?
でも、ウルレインってあまり面白い依頼が少ないんだよね。
強力な魔物がいないから平和なのはいいことだけど、冒険者にとってはどうも暇を持て余す。
新人冒険者にはもってこいの街だけど。
冒険者ギルドにカレンたちと向かい、依頼ボードを見ると面白いものを見つけた。
「こんな依頼昨日あったか?」
依頼を見ると、サンドラス王国にある唯一の鉱山にネメアーという魔物が住み着いてしまったらしい。
ネメアーは獅子のような姿をしており、金色に輝く毛皮は剣などの攻撃をも弾き返し、犠牲者が多数出ているそうだ。
このままでは鉱山からの資源の調達もできないため、サンドラス王国全土に渡って各冒険者ギルドに依頼書を発行しているらしい。
「これ、面白そうね」
私がそう言うと、2人は深刻な表情をする。
「剣が効かないなら、あたしたちが行っても意味なくない?」
確かにそうだな。
でも私の魔法攻撃は効くかもしれない。
うーん、2人を置いて私だけ行くのもありだな。
2人には悪いけど。
「なら私だけ受けてもいいかな? 倒せそうなかったらすぐ引き返すからさ」
「……ヒナタは一度決めたら強情だからな」
そんなことはないと思うけど。
カレンにはそう見えていたのか。
でも、1人の方が飛行魔法ですぐに行けるから便利なんだよね。
3人だとどうしても馬車での移動になるから。
それにこの鉱山って結構遠いみたい。
馬車だとウルレインから2週間はかかりそう。
「ごめんね。2人を危険な目に合わせるのは私も望んでいないから、私だけ受けるよ」
すぐにネメアー討伐の依頼書を剥がして、セレナのところに行って依頼を受注する。
「ヒナタさん大丈夫ですか? 噂だとこの依頼、Aランクパーティでも無理だったらしいですけど……」
「まあ、魔物との相性もあるだろうしね。無理そうだったらすぐに逃げてくるから安心して」
心配そうに見つめてくるセレナを宥めて、私はすぐに冒険者ギルドを出発する。
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