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90 白竜と遊ぶ
しおりを挟む名前はどうしたものか。
白竜だからってシロとかは安易だしね。
それなら読み方を変えてハクとか。
どっちも国民的アニメの犬とかジ◯リに出てくるような名前なんだよね。
シロとハクは恐れ多いわ。
だったら、白竜と私の銀髪を合わせて、ハクギンとか。
んー、なんか違うよね。何より可愛くない。
私の名前と合わせても語呂が悪いしな。
私が悩んでいると、カレンも意見を出してくる。
「ヒナタが親だから対になるようにヒカゲとか!」
考え方は悪くないけど、この子が女の子だったらヒカゲは可哀想じゃない?
竜の性別は全く分からない。
だって生殖器がついてないんだもん。
だとしたら女の子なのか?
でも男の子でも生殖器がないのなら、安易に性別が分からないうちに、男の子のような名前はつけたくない。
できればどっちでも対応できそうな名前がいいよね。
というか性別ってどうやったらわかるんだろう?
「で、でしたらプラチナとかどうですか?」
はいはい。白金ね。
それだとシャルの金髪と合わさっちゃってるから。
え、もしかしてシャルの子供だと思ってる?
この子は私の子供だよ。
私が託されたし、私の魔力で生まれたんだから正真正銘の私の子供だ。
何かいい案がないかな。
別に私と合わせる必要性もないからな……。
「……コハクとかどうかな?」
ふと私の口から出る。
男でも女でも使えそうな名前じゃない?
何より可愛いし。
あれ? でもジ◯リに出てきてたキャラクターも本当の名前にコハクってあったような……。
名前が長くて覚えていないや。
「お、いいじゃん」
「いいですね! コハクちゃん!」
でも2人も気に入ってくれたようだ。
今日からこの子の名前はコハクにしよう。
「コハク……」
私は抱きしめているコハクに向かって名前を呼ぶと、心なしか笑ったように見えた。
名前も決まったし、フィリップを呼ぼう。
手紙でもいいけど、それだと数日かかりそうだからコハクを2人に預けて私は領主邸に行く。
「そうか。孵化したのであれば見に行かせてもらう」
フィリップに白竜が孵化したことを伝えて、一緒に私のマイホームに来ることになった。
「この子が……」
フィリップが孵化した白竜を凝視する。
大人しく眠っている白竜はとても可愛い。
「危険はないのか?」
「私のことを親と思っているので危険はないと思いますよ。でも、今後のことを考えると絶対とも言えません」
「そうか、しばらくは外出を控えるようにしておいてくれ」
それはそうだ。
もし住民にバレたら討伐対象になる。
しばらくは私も家にいないといけないかな。
「分かりました。しばらくは私が責任を持って育てますね」
こうして私の子育てが始まる。
それから数日経ったが、コハクは基本的に私にべったりだ。
本当に私を親と認識しているようで、離れるようとすると嫌がるから常に一緒にいる。
料理を作るときも、お風呂に入る時も、寝る時も一緒だ。
というより1人で歩けるようになってから、私に付いてくるのだ。
ここまで一緒にいると愛着が湧きすぎて、私も離れたくない。
でもたまには私も外に出たい。
依頼を受けて身体を動かしたい。
このままだと絶対に太る。
カレンたちは私を置いて冒険者ギルドにほぼ毎日行っているし。
でも責任を持って育てるってフィリップにも言っちゃったしね。
しばらくは依頼を受けるのを諦めよう。
育児休暇は必要だよね。
そして最近では翼も大きくなってきたので、飛ぶ練習をするようになった。
長時間は飛べないが1分くらいなら安定して飛べる。
そのうち一緒に空の旅ができるのを楽しみにしている。
そして飛べるようになってからは、今まで以上に自由にマイホームを散策するようになった。
外には行かないように言って聞かせているが、好奇心からか窓から出て行こうとする。
その度に私やカレン、シャルが止めに入るが、わがままな子なので泣き出してしまう。
でも私が抱きしめると泣き止む。本当にお母さんになった気分だよ。
大分自由に動けているから私がいなくても大丈夫かなと思ったけど、離れようとすると飛んで追いかけてくる。
最近では私の頭の上が定位置だ。
今の大きさなら耐えられるけど、これ以上大きくなったら私の首がもたない……。
食事は基本的に私の魔力を与えているが、魔物の肉も好んで食べるので、夜だけはコハクも合わせてみんなで食事を摂るようになった。
そんな毎日が続いていき、とうとうサーシャがお父さんから話を聞いたのか遊びにやってきた。
「ヒナタお姉ちゃん!」
玄関からサーシャの声がしたので、扉を開ける。
目の前にはドレス姿のサーシャが玄関の前に立っていた。
後ろには護衛の騎士が1人。
多分コハクを見にきたんだろうけど、フィリップはよく許可したものだな。
私がいうのもなんだけどコハクは魔物だよ。それに魔物の中でも頂点に君臨する竜だよ?
危険を考慮して娘を近寄らせないものじゃないのかな。
一応定期報告として、コハクのことは領主様に手紙で伝えていたけどあまり私を信用しすぎるのも良くないよ。
「いらっしゃい。サーシャちゃんが私の家に来るなんて何かあったの?」
一応とぼけてみる。
間違いなくコハク目当てだろうけど。
「コハクちゃんと遊びに来ました!」
ほら、やっぱりね。
そのお目当てのコハクは私の頭に乗っかっているよ。
「それと、最近ヒナタお姉ちゃんと会っていなかったので……」
そんなこと言われたら抱きしめたくなるよ。
本当にサーシャは可愛いな。
最近はコハクに付きっきりだったからごめんね。
「ヒナタお姉ちゃん苦しいです……」
おっとっと。
無意識にサーシャを抱きしめていたようだ。
って痛い痛い! コハク、私の頭を叩かないで!
コハクも嫉妬しているようなのでサーシャから離れる。
あ、やばい。
私のせいでコハクがサーシャに敵対心を抱いている。
ごめんねサーシャ。コハクと仲良くなるのは時間がかかりそうだよ。
「コハクちゃんと遊んでもいいですか?」
「別にいいけど、私から離れないから一緒に遊ぼうか」
とりあえずコハクにはサーシャと仲良くすることを言い聞かせる。
サーシャがせっかく会いに来てくれたんだから蔑ろにしてはいけない。
それに攻撃的なことはご法度だ。
「キュッキュッ!」
うん、いい返事だ。
コハクの頭を撫でると喜んでいる。
といっても何して遊ぶの?
ご飯をコハクにあげるとか、散歩に連れて行くとか……。
なんか犬みたいな扱いになっちゃうな。
でも散歩はダメだね。本当は運動のために外に連れていきたいけど。
それにご飯の時間にはまだ早い。
「コハクちゃんを抱きしめてもいいですか?」
「うん? いいけど……」
サーシャがコハクを抱きしめる。
え、何この絵面? 可愛すぎるんだけど。
カメラがあったら撮影会の始まりだよ。
「鱗が少し硬いですけど、可愛いです……」
「キュキュッ!」
コハクも喜んでいるようだ。演技じゃないよね?
できればコハクとサーシャには仲良くしてもらいたい。
この調子で良い関係でいてください。
「何して遊ぶ? 外には行けないから家の中だけになるけど……」
何して遊ぶのかなと思ったけど、サーシャは何かボールのようなものを取り出した。
ん? これって……。
「コハクちゃん! 取って来てください!」
そう言って、ボールを投げた。
いやこれじゃ間違いなく犬だよ。
竜が犬扱いされている。
これじゃ竜としてのプライドがズタボロだよね。
こんなのコハクも言うことを聞かないんじゃ……。
「キュキュー!」
ものすごいスピードでボールを追いかける。
それに飛ばずにちゃんと走っている。
あ、追いかけるんだ。
竜としてのプライドはないみたい。
でも結果オーライかな。コハクも楽しそうだし。
それにいい運動になりそうだ。
思ったよりもペットに近い存在になったコハクでした。
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