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89 我が子が孵化する②
しおりを挟む「ヒナタさん、竜の卵は魔力を与えれば早く産まれるみたいですよ」
あれから1週間が経ち、シャルが竜について調べてくれた。
なんでも竜の子供は親から魔力をもらって孵化するらしい。
ってことは私が温め続けたのは……、いや考えないようにしよう。
それから食事も魔力だけで十分みたいだ。
でも味覚もあるらしくて食事を与えても問題ないらしい。
その場合は食事を体内で魔力に変換するので、親の魔力が少ない時は魔物の肉を食べさせるといいらしい。
素晴らしい情報を手に入れた。
シャルには感謝だね。
私が卵のそばにいるから外出できないと分かって、わざわざ調べに行ってくれたみたいだ。
今日の夕飯はご馳走にしよう。
早速夜に魔力を卵に与える。
返事がない。ただの屍のようだ。
なんて冗談を言っている場合じゃない。
私も魔力は多いけど、どのくらい与えればいいのか分からない。
とりあえず毎日魔力枯渇になるまで与えてみようかな。
多分竜ならすぐに孵化できるくらい魔力を与えられるんだろうけど。
本当の親の白竜はネメアーによって死にそうだったから、子供に与えられるほどの魔力も回復しなかったんだろう。
っていうか、私が魔力を与えてもいいんだよね?
私の魔力の影響で、孵化したら私そっくりの竜が出てくるとかないよね?
ちょっと心配事が増えてくるけど、今はそんなことを考えている場合じゃないか。
この子が孵化するまで無心で頑張ろう。
あれから4日経ち、卵に変化があった。
いつも通り夜に魔力を与えていたら、モゾモゾと卵が動くのだ。
そして卵に亀裂が入る。
ピピピ……
「う、産まれる?」
パキーン!
ついに我が子が孵化した。
白竜の子供は小型犬くらいの大きさですごく可愛い。
翼も小さくて、生まれたての小鹿のようにヨロヨロとしている。
「か、可愛い……」
あまりの可愛さに我が子を抱きしめる。
「キュイキュイ……」
鳴き声も可愛い。
私を親と思ったのか、胸に抱きついてくる。
あまりの可愛さに失神してしまいそうだ。
私の魔力で生まれたから、私に似た姿で生まれなくてよかった。
ちゃんとした小さくて可愛い白竜だ。
「名前考えないとな」
しかし私にはネーミングセンスはない。
明日にでもカレンたちに相談しようかな。
私の胸で眠ってしまった白竜に少しだけ魔力を与えて一緒にベッドで眠った。
翌朝、ベッドの中で何かが動く気配がして目が覚める。
すると白竜が私の顔を覗いている。
朝からこんな素敵な目覚めがありますか。
昨晩と違って、自分で歩けるようになったみたいだ。
でもまだヨチヨチ歩きみたいな感じだ。たまに転んでいるし。
まだまだ足の筋力もないからしょうがないよね。
私は白竜を抱えて、1階に降りる。
白竜の食事は私の魔力でもいいけど、せっかくだから何か作ってあげたい。
これが母性というものなのか……。
生肉でもいいのかな? 一応両方出しておこうかな。
私はオーク肉を焼いてステーキにしたものと、オークの生肉を両方一口サイズにカットして白竜に与える。
「キュイキュイ!」
両方食べるんだな。
しかも美味しそうに食べている。
でも、ステーキの方が好きなのかな?
最後に一切れ残して美味しそうに食べた。
この子は好きなものは最後に残して食べる派だ。
満腹になったのか白竜がウトウトとし始める。
私は白竜を抱きかかえてソファーに座る。
両手が塞がり朝食の準備ができなくなった。
白竜をソファーに寝かせればいいのだが、眠った白竜が可愛すぎて離したくない。
30分程経って、2階からシャルが降りてきた。
私が抱いている白竜が目に入る。
「え!? 孵化したんですか!?」
「昨晩にね」
シャルは白竜に近づいてくる。
眠った白竜を撫でる。シャルがすごい笑顔だ。
「……可愛い」
ふふふ。
そうだろう。我が子は可愛いだろう。
この子を見ているだけで癒しになるよね。
「今ね、名前を考えているところなんだ」
「名前ですか……」
「そう。3人で考えようかなって」
2人で考えていると、カレンも起きてきたようだ。
目を擦りながら2階から降りてくる。
「おはよう」
「「おはよう」」
寝ぼけながらも私が白竜を抱いている姿を見て、急に目が開く。
「孵化したんだ!」
「そうなの。だから今、名前を考えているところなんだけど……」
「……できれば、白竜とヒナタを合わせた名前の方がいいのか?」
まあ、確かに初めての子供は両親の名前から一文字ずつ合わせるとかよくあるけど……。
どうしたものか……。
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