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88 我が子が孵化する①
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
なんだかんだで久しぶりにゆっくり寝たような気分です。
白竜に出会ってからというもの、竜装化を試したことで全裸になって落ち着いて寝ることもできなかったしね。
バスタオルを羽織っているからといっても3日間は流石に落ち着かなかった。
その後も王様に会いに行ったりして忙しい日々だった。
そんな私は白竜の卵を抱きしめながら寝ていました。
育て方が分からないから、とりあえず温めていたほうがいいと判断したからです。
稀に中にいる子供が動いたときは順調に育っているのを感じます。
早く生まれないかなー。
そして起きた後は、卵を毛布で包んで持ち運びます。
っていうか、竜って何を食べるんだろう。
やっぱり肉食? 食費が嵩むな。
猿でもわかる竜の育て方、みたいな本とか売ってないかな。
あ、でもシャルならもしかしたら知っているかも。
あとで聞いてみよう。
とりあえず白竜の卵が気になるからあまり長時間の外出は控えたい。
なるべく我が子のそばにいたいよね。
いつ孵化するか分からないからこそ私がそばにいなければ。
もし誰もいない時に孵化したらこの子も寂しいだろう。
もし私がいない時に孵化してカレンとかシャルがいて親と勘違いしたらどうする。
なんとしても私が孵化を見守らねば。
さて、今日はまずフィリップのところに行ってみようかな。
何を言われるかは分からないけど。
「捨ててきなさい」とか言われたらどうしよう。
そんなことになったらこの街から出る可能性もあるよ。
我が子を捨てるくらいなら親になる私がそばにいるのが自然だよね。
すでにこの子は私の子供なのだ。愛情たっぷりに育てるのだ。
前世が男でも今は女性だ。母性が溢れまくっている。
まさか初めての子供が竜だなんてどこの世界を探しても私だけなんじゃないか。
私は朝からフィリップの屋敷へと向かう。
いつも通り門番に話しかけて、屋敷内へと案内される。
「朝から用事とは何か緊急なのか?」
ある意味緊急なのかな?
朝早くから来たのは、フィリップが間違いなくいると思ったからだ。
私が自由に出入りしているから暇なイメージがあるが、街のためにかなり忙しそうにしている。
そのため失礼とは思いつつ朝早くからお邪魔した次第だ。
「少しご相談が……」
真剣な面持ちで話す私を見てフィリップは緊急の用事と判断したのか、執務室に案内されて2人きりになる。
そりゃ真剣になるよね。早く帰って我が子のそばにいたいし。
私はフィリップに説明する。
冒険者の依頼で鉱山に住み着いたネメアーを討伐に行ったこと。
その帰りに洞窟の中で白竜を発見したこと。
白竜から死の直前に卵を託されたこと。
その卵はマイホームに大切に保管していること。
「鉱山の魔物が討伐されたことは聞いていたが、まさかヒナタさんだったとは……。いや、それよりも白竜の卵をどうするか……」
フィリップは前世でいうところの、考える人と同じポーズをしている。
「私が責任を持って育てますのでどうか……、お願いします!」
誠心誠意頭を下げてお願いをする。
我が子のためだ。
「わかった。白竜についてはヒナタさんに一任しよう。その代わり……」
そこからは一応条件を言い渡された。
一つ、孵化した白竜が危険と判断した場合、すぐに討伐すること。
二つ、私の言うことを聞くように育てること。
三つ、ある程度育って危険じゃないと判断した場合、街の住民にも竜の存在を明らかにするため、なるべく連れて歩くこと。
四つ、住民に白竜が危険じゃないことへの理解を得ること。
五つ、孵化したら見に行くから教えて欲しい。
以上、五つの条件を言い渡される。
正直住民の理解が一番難しい。
危険じゃないと判断されたら、フィリップも協力してくれるらしいけど、どうなるかは分からない。
いくら親である私や領主様が危険じゃないと言っても、住民からはある程度の反対は出てくることになる。
住民全員が納得するのは難しい問題だ。
でもフィリップも協力的なのは一歩前進かもしれない。
最悪の想定をして私が街を出ていくという手段もあったわけだしね。
私はマイホームに帰り、卵を抱きしめながら眠りにつく。
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