92 / 139
92 謎の少女の正体は
しおりを挟む誰なんだ、この可愛い少女は。
いつの間に私のベッドに入り込んだ?
そしてコハクはどこにいったの?
私は自分の部屋を見渡す。
しかしコハクはいない。
あれだけ私から離れるのを嫌がっていたのに、私を置いてどこにいったんだ。
「ママ!」
急に寝ていた少女が私に抱きついてくる。
っていうかママってどういうこと?
「ちょ、ちょっと待って! ママってどういうこと?」
私はコハクのお母さんのつもりだけど、この可愛い少女のお母さんになった覚えはない。
少女は首を傾げて、私を見つめる。
「あれ?」
女の子は両手で自分の身体を触りはじめた。
頭、顔、胸、お腹、お尻、足の順に触っていく。
え、どうしたの?
「人間の姿になってる!?」
自分の姿に驚いたのか、ベッドから落ちた。
どうしたんだこの少女は?
人間の姿になっているって……。
……ちょっと待って。この子、私のことをママって言ったよね?
「え、もしかして……、コハク?」
「そうだよ!」
両手をあげて肯定してきた。
ちょっと待って、本当にコハクなの?
コハクって女の子だったんだ。
人間の姿になったら女の子だってわかる。
身長は小さい。人間だと5歳くらいの見た目かな。
髪は綺麗な白髪で背中まで伸びている。
そして何よりの証拠として股にあれがあるのだ。
いや、ないのが正しい表現か?
ちょっと表現しにくい。
とにかく生殖器がある。
完全に女の子だってわかる。
「……ほ、本当の本当にコハク?」
「だからそうだってば!」
この感じはコハクだ。間違いなく。
最近反抗期かと思うくらいの態度が多かったからね。
でも、なんで急に人間の姿になったの?
本人も分かっていないみたいだし。
「な、なんで人間の姿になっているの?」
「んー、よく分からないけど、昨日の夜に人間の姿になればママたちと一緒にお外で遊べるって思ったの!」
ということは、コハクは人間の姿になって私たちと家の外に行きたいと願ったってことか。
そうしたら人間になっていたと……。
私が魔力を与えた影響もあるのかな。
不思議すぎて頭が混乱しているが、一度割り切った方がいいのか。
竜は人間の姿になれるんだ。
「ちなみにだけど、竜の姿に戻れる?」
「うん! やってみる!」
一応確認だ。
コハクの意思で竜と人間の姿に変われるなら、これからのことを考えると不都合がなくなる。
なにせ、自分の意思と関係無く変わるのなら安易に外にはいけない。
これは重要な問題だ。
コハクは目を閉じて身体に力を入れている。
なんかこの姿すごい可愛い。
コハクが頑張っている。すると……、急に見慣れたコハクの姿になった。
コハクが飛び回って喜んでいる。
竜の姿だと話せないみたいだ。
これなら安心して街にも出られそうだね。
とりあえずカレンたちとフィリップにも報告したほうがいいよね。
フィリップにはどう説明すればいいんだよ。
私だってこの状況が分かっていないのに。
とりあえず竜の姿のままでいてもらって、1階に降りて朝食の準備をする。
コハクはいつも通り私の頭の上に乗っている。
朝食の準備をしているとカレンとシャルが起きたようだ。
朝食の焼いたパンと牛乳、サラダをテーブルに置いて、みんなで食べ始める。
「カレン、シャル。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」
「どうしたんですか? そんな改って」
シャルが私の真剣な顔を見て、首を傾げながら聞いてくる。
カレンはまだ眠そうにしている。
「実はね。コハクが人間の姿になれるようになったんだ」
「「はい?」」
そういう反応になりますよねー。
2人は私の頭を心配するかのような目で見てくる。
そんな蔑むような目で見ないで。私は正常だから。
「コハク、見せてあげなさい!」
私は立ち上がってコハクに言う。
そしてコハクは言われた通り、目の前で人間の姿になる。
「「えええええええ!」」
私はドヤ顔で2人を見下ろす。
カレンも目が覚めたみたいだ。
「ちょ、ちょ、ちょ……」
「あわわわ……」
この2人の反応は本当に面白いよね。
ギャグ漫画とかに出てくるような反応を見せてくれる。
「あはは! カレンお姉ちゃんもシャルお姉ちゃんも驚きすぎ!」
コハクがお腹を抱えて笑い出す。
コハクが2人を揶揄っている感じが実に面白い。
全裸なのが気になるけど。
「というわけで、私の言った通りでしょ?」
2人は状況が理解できないのか、口を大きく開けて唖然としている。
大丈夫かな、顎外れない?
とりあえず2人にコハクのことは説明したから、後のことは2人からの質問待ちで。
今はコハクの服をどうするか考えなくては。
子供用の洋服を買いに行こうかな。
「な、なんでコハクが人間になったんだ!?」
あれ、カレンは正気に戻ったのかな。
思ったよりは早かったな。
「なんかね。人間の姿になりたーいって思ったらできたの!」
私の代わりにコハクが答える。
子供らしい回答をするから本当に可愛い。
カレンもシャルも納得していないようだが、こればっかりはしょうがない。
私も納得はしていないからね。ただ割り切っただけだ。
とりあえず私はコハク用の服を買いに行くことを伝えて、マイホームを出ていく。
「どんな服がいいのかなー」
洋服屋に行く途中でコハクの服を考える。
私と同じでワンピース姿でもいいかな。
何着か買ってみてコハクが気に入るか試してみよう。
大体、親と同じ格好だったら嬉しいよね。
下着は……。ブラは必要ないね。パンツだけ買っていこう。
洋服屋で子供用の服を見繕ってもらい、コハクに似合いそうなものを私のセンスで選ぶ。
ピンクとオレンジのワンピース2着と水色のTシャツと黒のスカートを1着ずつ買った。
マイホームに帰ってコハクに着させてみる。
「「「可愛い~!」」」
「えへへ、そうかな?」
なんというか、ワンピースを着たコハクが可愛すぎる。
うん。この姿でフィリップのところに行こう!
あれ? でもこの状態から竜に戻ったら服ってどうなるの?
試したほうがいいよね。今後のために。
一度買ってきたばかりのワンピースを脱がせて、不要になった古着を着せてみる。
そしてコハクは竜へと変わる。
ブチブチブチ!
やっぱり鱗によって服が破れた。
そりゃそうだよね。当たり前だよね。
今後はコハクが竜に変わるときは服を脱いでからにしないと。
とりあえず人間の姿に戻ってもらって、私とコハクの2人でフィリップのところへ行く。
「どうしたんだヒナタさんと……、そちらのお嬢さんはどちら様かな?」
フィリップが初めて見たコハクに首を傾げている。
とりあえず執務室に入れてもらい、3人になる。
「あれ? 今日はサーシャちゃんはいないんですか?」
「いるんだが、勉学のため部屋にいる」
そういうことか。
サーシャちゃんにも可愛いコハクを見せてあげたかったけど勉強なら仕方ないよね。
「そうでしたか。で、話というのはですね……その、信じてもらえないかもしれませんが、この子は白竜です」
「は?」
やっぱりそんな反応になりますよねー。
カレンたちで経験済みだから私は冷静だよ。
でもコハクはこの状況を分かっていない。
コハクはフィリップのことを覚えていないのだ。
一度、生まれた直後に会ってはいるが、寝ていたから覚えていないらしい。
サーシャのお父さんっていう説明だけしている。
このままだと信じてもらえないので、コハクに竜の姿になるように指示する。
もちろん服は脱がせたよ。毛布で隠してね。
さすがに男性の前でそのまま服は脱がせないよ。
そして竜になったコハクを見てフィリップが驚く。
「な、な、な……」
みんなこの反応だな。
まあしょうがないか。
フィリップには落ち着いてもらい、経緯を説明する。
とは言っても、よくわからないことも多いのでその辺は調べるしかない。
というより調べて分かるものなのか……。
とりあえず人間の姿になれるし、意思の疎通もできるので安心してください、という感じで説明した。
フィリップもなんとか納得してくれたので、今後も私が責任を持って育てることを条件として、人間の姿なら街を出てもいいという許可が降りた。
あと今後のことも考えて、コハクの身分証明書を作ってもらった。
年齢的に冒険者登録ができないからね。
話も終わったので、私は屋敷を出てマイホームに帰った。
────────────────────────────────────
頑張って毎日更新をしてきましたが
少し体調が不安定になってきたので毎日更新を一旦取り止めます。
更新を楽しみにしている読者様には申し訳ありませんが
頑張って3日に1話のペースでは更新していきたいとは思っています。
よろしくお願いします。
31
あなたにおすすめの小説
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる