神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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94 コハク、勝手に無双する

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 私がギルマスの部屋から出て、カレン達と合流すると3人は他の冒険者とお酒を飲んだりして団欒していた。
 ちなみにさっき私にプロポーズしてきた男性も混ざっていた。
 あ、カレン達はお酒は飲んでなかったよ。それにコハクもジュースを飲んでいるようで安心する。
 そのまま3人に用事が終わったことを報告して、いざオーク討伐に行こうと言ったが何やら私にもジュースを頼んだみたいで小一時間冒険者ギルドで駄弁ったりして過ごした。
 ちょいちょい私にプロポーズしてきた男性からの視線を感じたが当然無視。
 流石にゆっくりしすぎたので、急いで冒険者ギルドを出て私達はオークの出現報告があった森周辺へと移動する。

 コハクは私が肩車をして移動している。
 ウキウキして楽しそうにしているが、あまり暴れると首が痛くなるよ。

 オーク討伐なら前回、竜の姿のコハクが単独でも討伐できているから、特に心配することもないかな。
 人間の姿のコハクがどれくらい強いのかも気になるからね。

「それにしてもヒナタがAランクなんてな~」
「いつの間にって感じですね」

 それについては私も驚いているから。
 王様権限で勝手に昇格させちゃうから取り消すこともできないし。
 普通にギルドでの昇格だったら絶対に断っていたのに。
 それにしても内緒で昇格とかあり得ないでしょ。
 あの王様を嫌いになりそうだよ……。

「ははは……、私も驚いているよ」

 なんでもAランクの冒険者はかなり少ないらしい。
 世界の冒険者の5パーセントくらいしかいないとのことだ。
 そしてSランクだと1パーセントもいない。

 そんなことから、ウルレインなんていう大きな街でもないのに、Aランク冒険者がいるとなると英雄扱いだ。
 今後街に何か緊急事態があれば、私が筆頭に指揮をする可能性もある。
 それだけは勘弁してもらいたい。
 私は後方で、指示に従っている方が性に合っている。
 そもそも単独戦ばっかりやっているんだから、指揮ができるわけがない。
 なにも起きないことを祈るばかりです。

「オークの反応はあるか?」

 私は気配察知で周囲の反応を調べているが、今のところない。
 オークの出現報告の近辺に来ているはずだか、どうやらオークたちは離れてしまっているようだ。

「反応は調べているけど、周辺にはいないね」
「ママ、あっちにいるよ」

 突然コハクが指を差しながら発言する。
 私の気配探知では半径で500メートル以上は把握できるが、コハクは何か確信を持って言ってきた。

「コハク、魔物がどこにいるのか分かるの?」
「あっちから美味しそうな匂いがするの!」

 あれ?
 この言葉を信用してもいいのか?
 でもコハクの食い意地は凄いからオークは嗅ぎ分けられるのかもしれない。

 コハクが指を差した方角へ行ってみる。
 しばらく歩いていると、気配探知に反応があった。
 本当にいたよ……。

「この先に反応があるよ。20体くらいかな」

 私の言葉にカレンとシャルも気を引き締める。
 コハクは両腕が竜鱗になった。
 全員が戦闘態勢に入る。

「依頼内容と違うじゃねぇかよ……」

 目の前に群がっているオークを発見する。
 なんか軍隊の進軍中みたいになっている。

「あたしが合図したら行くよ」

 カレンの言葉に私とシャルは頷く。
 ……しかし、コハクは聞いていなかった。

「いけー!」

 コハクが単騎でオークの群れに飛び込んだ。

「ちょ、ちょっとコハク!」

 あまりにも急なことだったので、私たちは困惑してしまったが、コハクを止めようと声をかけてもコハクは止まらなかった。
 私たちも急いで加勢をしようとしたが、コハクが1体のオークに向かって攻撃を仕掛けた。

「コハクパーーーンチ!」

 ものすごいスピードで繰り出された右ストレートは、オークの頭を一瞬にして吹き飛ばした。

「うわーお……」

 思ったよりコハクのパンチは強いようだ。
 これからはコハクを怒らせない方がいいかも。
 あのパンチは私の物理攻撃耐性スキルでもタダでは済まないかもしれない。

 そして私たちがコハクの戦闘に唖然としている間に、コハクは次々とオークにお得意の右ストレートをお見舞いしている。

「コハク、強いんだな……」
「信じられませんね……」

 私もここまでとは思わなかったよ。
 やはり人間の子供の姿でも竜なんだと思わされる。
 
 あっという間にコハクは20体以上のオークを討伐して、私たちのもとに帰ってきた。
 帰ってくるコハクは返り血でひどい有様だ。
 これを洗うのは私なんだよね。
 子供が公園で遊んできて、泥だらけになった服を洗濯するお母さんの気分になる。
 でもそれならまだヤンチャだなと済ませられるが、これはちょっと……。

「今夜はご馳走だね!」

 血塗れになったコハクが両手をあげて喜んでいる。
 ここは褒めるべきか、叱るべきか。
 ……うん、叱るべきだろう。

「コハク、1人で勝手に行っちゃダメだよ」

 少し声色を低くしてコハクを叱る。
 4人で討伐に来ているんだから、連携して討伐をするべきだ。
 それを1人で勝手に飛び込んでいくなんて言語道断だ。
 今後のことを考えると、ここで反省してもらわないと。

「で、でもコハク1人で倒せたよ?」
「それでもダメなの。4人で来ているんだからみんなで討伐しないと、カレンお姉ちゃんたちにも失礼でしょ。それにコハク1人で行っちゃうと私たちも心配するでしょ。あまりママを心配させないで」

 こういう時大事なのは、協調性だ。
 パーティで動いているのだから、勝手な単独行動は許されない。
 
「うぅ……。ごめんなさい」

 反省してくれればそれでいい。
 これで二度と同じことはしないだろう。

 それにしても今回の依頼ではコハクの戦闘力がよく分かった。
 ここまで強いとかなりの戦力になりそうだ。

 さて、これで依頼は完了なんだろうけど、気配探知にはまだ反応がある。
 少し距離があるが、大きな反応があるみたいだ。

「この先に大きな反応があるね」

 私たちは反応がある方向に向かう。
 森の茂みを進んでいくと、目の前にいたのはオークの上位種がいた。

「あれは……、オークジェネラルだ」

 カレンが言う。
 カレンたちにとってオークジェネラルは宿敵だ。
 以前、オークジェネラルによって眠らされて捕まった過去がある。

「ヒナタ、あれはあたし達に任せてくれないか……?」

 前回のことを考えてか、もう一度挑戦したいのだろう。
 気持ちはなんとなく分かるから、意見を尊重するべきだ。

「分かった。何かあったらすぐ援護するから。コハクも大人しくしててね」
「ありがとう……」
「ありがとうございます……」
「わ、分かったよママ……」

 とりあえず私はコハクの手を繋いで隠密スキルを発動させる。
 このタイミングで少し実験をしてみたい。
 隠密スキルを使うことで、姿を消せるけど身に付けたものも消えているので、誰かと接触していれば、その人も隠密の効果があるのか。
 今までも何度かやっているが、実際に効果があるのかはっきりしていない。
 カレンたちがオークジェネラルと戦っている間に移動してみても、気が付かれないのであれば実験は成功だ。

 カレンは剣を構えて、シャルは木の上に移動する。

「行くぞ! シャル!」
「うん!」
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