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98 コハクと別行動①
しおりを挟むみなさんおはようございます。ヒナタです。
昨日は感動的なカレンとシャルの友情物語もあって私も感極まりました。
しかし、それを邪魔するかのように朝から唐突にお客様がやってきました。
「コハクちゃーん、遊びましょー!」
玄関の前でサーシャがコハクを誘っています。
コハクは竜の姿で私の頭の上に乗っかっています。
コハク曰く、竜の姿の方が楽なんだとか。
だから外出時は人間の姿で、家の中では竜の姿でいたいみたいです。
どっちの姿だろうと私に甘えてきて可愛いので二倍お得です。
「サーシャちゃん、いらっしゃい」
私は玄関を開ける。
前回と同じで、サーシャと護衛の騎士が1人来ている。
「ヒナタお姉ちゃんおはようございます。あれ? コハクちゃんが人の姿になれるって聞いていたんですけど……?」
頭に乗っているコハクを見ながら不思議そうにしている。
コハクの情報はフィリップから筒抜けだ。
「家の中では竜の姿なんだよ」
「キュイ!」
「そ、そうなんですね。今日はコハクちゃんと2人でお出掛けしたいんです!」
え、2人でお出掛けするの?
嫌な予感もするけど、サーシャなら安心かな。
でも最近サーシャは、私じゃなくてコハクにべったりだから少し寂しいよ。
嘘でも私に会いにきたって言って欲しいものだ。
「……そ、そうなんだ。コハクはサーシャちゃんと2人で大丈夫?」
「キュイ!」
どうやら大丈夫みたいだ。
なら今日はコハクをサーシャに預けて、私は冒険者ギルドかな。
「ママ、行ってきまーす!」
その後、人間の姿になったコハクに服を着せてサーシャと護衛の騎士と外に出て行った。
カレンたちも準備ができたようなので、私たちは冒険者ギルドに行く。
「3人なのも久しぶりだな」
カレンの言葉に私とシャルも頷く。
最近はコハクも仲間になったから3人は久しぶりだ。
なんか楽しみになってきた。
─サーシャ視点─
なんとかコハクちゃんとのお出掛けに成功しました。
朝早くからヒナタお姉ちゃんの家に突撃訪問したのは申し訳なかったですが。
コハクちゃんも急なお誘いなのに応じてくれてありがとうございます。
でも、コハクちゃんが竜だと分かっていても、私よりも小さい女の子と一緒だとお姉ちゃんになった気分でとても嬉しいです。
「コハクちゃんはどこに行きたいですか?」
「お肉食べたい!」
コハクちゃんはとてもいい笑顔で言ってきます。
ヒナタお姉ちゃんが言っていましたが、コハクちゃんはオークのステーキが大好きとのこと。
でも朝からステーキはちょっと……。
「せっかくですから、私がよく行っている喫茶店に行きませんか?」
以前ヒナタお姉ちゃんとも行ったお菓子屋さんです。
あそこならステーキはありませんが、軽食もあるのでコハクちゃんも食べてくれると思います。
「そこはおいしいお肉があるの?」
コハクちゃんはお肉にしか興味がないのでしょうか。
ヒナタお姉ちゃんはお肉しか与えていないのではと疑ってしまいます。
それでは栄養が偏ってしまうので、たまにはお野菜も食べさせた方がいいかもしれません。
「お肉はないけど、甘いお菓子とかがありますよ。甘いものは好きですか?」
「甘いもの好きだよ!」
よかったです。
喫茶店ならパンとかに合わせてサラダも食べられますし、甘いクッキーもあります。
それにしても、お姉さまのお誕生日にヒナタお姉ちゃんが作ってくれたパンケーキはとてもおいしかったです。
またヒナタお姉ちゃんにお願いしたら作ってくれるでしょうか。
もしかしたら、ヒナタお姉ちゃんはコハクちゃんにもお肉以外にパンケーキも食べさせているのかもしれません。羨ましいです。
「ママがよく甘いソースをかけたお肉を作ってくれるの!」
前言撤回です。
ヒナタお姉ちゃんはお肉しか与えていません。
こうなったら私がコハクちゃんにお肉以外のおいしいものを教えてあげなくてはいけません。
「ここが私おすすめの喫茶店です!」
喫茶店に到着しました。
コハクちゃんは目をキラキラさせてお店を見ています。
コハクちゃんは今まで外食をしたことがないとヒナタお姉ちゃんが言っていました。
とても嬉しそうにしている顔を見ると私も嬉しいです。
中に入って、店員さんに注文します。
焼いたパンに温かい牛乳と付け合わせのサラダ、それにデザートにクッキーを2人分頼みます。
「おしゃれなお店だね!」
コハクちゃんはお店の内装をキョロキョロ見ています。
外食は初めてなので新鮮なのでしょう。
とても可愛らしいです。
「お待たせしました」
店員さんが注文したものを持ってきてくれました。
コハクちゃんは運ばれてきた食事を見てよだれを垂らしています。
お腹が空いていたのでしょうか。
「いただきます!」
コハクちゃんが一目散にパンにかぶりつきました。
「おいしい!」
コハクちゃんはあっという間に頼んだ食事を平らげてしまいました。
あまり急いで食べると消化に悪いと思いますけど、大丈夫なんでしょうか。
よく噛んで食べた方がいいと思います。
「このクッキーっておいしいね!」
コハクちゃんはクッキーを気に入ってくれたようです。
この喫茶店のクッキーはウルレインでも一番おいしいです。
私のお気に入りなのでよかったです。
「ヒナタお姉ちゃんの作るお菓子もおいしいので、今度作ってもらったらどうでしょう?」
「そうなの? ママお菓子作れるんだ! 知らなかった!」
どうやらヒナタお姉ちゃんはコハクちゃんにお菓子は作っていないようです。
あんなにおいしいのになぜしょう。
ヒナタお姉ちゃんのことだから、面倒くさいのでしょうか。
私も食べ終わりましたので、今度は本当の目的の場所に行きたいと思います。
今回コハクちゃんをお呼びしたのは、これが理由なのです。
「さて、コハクちゃん。次に行きましょう」
「え、どこに行くの?」
「ふふふ、内緒です」
私たちは次のお店に向かいます。
─ヒナタ視点─
コハクをサーシャに任せて、私たちは冒険者ギルドに到着した。
「今日はどうしようかな」
3人で依頼ボードの前で悩んでいると、2人の子供が私たちに並んで薬草採取の依頼書を剥がしていった。
かなりボロボロの衣服を羽織った男女の子供だ。
でも冒険者登録をしているから、成人はしているのだろう。
女の子は私より背が小さいけど。
「どうしたんだヒナタ?」
「いや、あの子達が気になって……」
「孤児の子供たちだろう。成人したら冒険者になってまだ小さい孤児達のために働いたりするからさ」
孤児達はそんなに生活が困窮しているのか。まともな衣服も買えないほどに。
男の子はまだいいかもしれないけど、女の子であの格好はさすがにかわいそうに思えてくる。
他にもあの子達のような孤児がいると思うと放っておけない。
「ちょっとヒナタ!」
気がついたら私は、孤児の子達に近寄って行った。
「君たち、薬草採取の依頼を受けるの?」
私が近寄ったことで2人は警戒をしている。
こんな小さい女性が話しかけても警戒されるとかちょっとショックだよ……。
「何の用ですか?」
気が強いのか男の子が女の子を庇いながら答えてきた。
勇ましい男の子はかっこいいね。
「私も薬草採取の依頼を受けるんだけど一緒にどうかな?」
「なんのためにあなたと一緒に行かないといけないんですか?」
まさにその通りなんだよね。
でも私としては、もしこの2人が森で魔物に襲われて死んだ時の方が、後味が悪い。
装備も整っていないのに、森に行くのは危険だ。
それは私がよく知っている。
「私、薬草採取の依頼初めてだから教えてほしいんだ」
嘘ではあるが、このようにお願いする方がいいだろう。
あまり変なことを言うと警戒されて断られるかもしれないし。
なにせ新人冒険者はカモになりやすい。
先輩冒険者から騙されて、危険な目に遭うこともあり得るからね。
それもあるから、私は初心者の冒険者を装った方がいいかもしれない。
「い、いいですよ……」
女の子が男の子の裾を掴みながら私に答えてくれた。
2人で揉めているようだが、女の子が説得をしてなんとか同行できることになった。
「よろしくね。私はヒナタ」
「俺はルークだ」
「わ、私はシアンです……」
カレン達にも説明して、薬草採取の初心者を演じて欲しいと協力をお願いした。
この子達は私たちのことを知らないみたいだから、冒険者になったばかりなのだろう。
こっちとしては好都合だ。
私たちの装備が新人冒険者とは思えないが、それは聞かれたら適当に答えよう。
とにかく初めての5人での冒険だ。
新人冒険者の子もいるからいつもより慎重に行こう。
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