神様のミスで女に転生したようです

結城はる

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99 コハクと別行動②

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─ヒナタ視点─

「お姉ちゃん達は何歳なんですか?」

 森に向かう途中にルークが私たちに聞いてきた。
 いきなり女性に年齢を聞くとか失礼だよ。
 私は元男だから別にいいけどね。

「あたしは20歳で、シャルが19歳、ヒナタが15歳だ」
「ならヒナタは俺らと同い年だな」

 急に私にはタメ口になった。
 私は同い年の新人冒険者を装っているからしょうがない。
 というよりタメ口の方が私も話しやすい。

「そうなんだ。なら同い年同士よろしくね」

 私は笑顔でルークに言う。
 こちらへの警戒心はまだありそうだが、冒険者ギルドで声を掛けた時よりは緩くなったかな。
 それにしても、この2人は武器も持っていないのに本当に大丈夫なんだろうか。
 今まで一度も森に行ったことがないのかな。

「2人はよく薬草採取の依頼をしているの?」
「はい。薬草採取なら一番安全だから……」

 シアンが答えてくれる。
 どうやら初めてではないらしい。
 だとしてもこの格好で森に行くのはどうかと……。

「そうなんだ。でも何も装備しないのは危ないんじゃない?」
「孤児院にいる子供達の生活費のために使っているんです」

 もしかしたら稼いだ分を全額孤児院のために使っているのかも。
 あまり孤児院のことは詳しくないけど、そんなに生活が困窮するほどなのか……。
 そういうのって街から補助金が支給されているはずだけど、あまりたくさんのお金は渡されていないのかも。
 ということはこの子達に何かあれば、さらに孤児院が困窮するということか……。
 ますますほっとけないよね。

「ところでヒナタは冒険者になってどのくらいだ?」
「つい最近だけど?」

 嘘ではあるが、あながち間違いでもない。
 まだ冒険者になって半年くらいだ。
 子供に嘘をつくのは少し心苦しいけど、ここはしょうがないよね。
 いつかは正直に言った方がいいけど。

「それにしては姉ちゃん達、いい装備しているよな……」

 うっ……。
 カレンとシャルが言葉に詰まる。
 そして私を見る。
 これは完全に私に丸投げだ。
 まぁこの状況になったのは私が原因だからしょうがないか。

「形から入るタイプなんだよ!」
「ふーん……」

 疑いの目を向けるルーク。
 これで誤魔化されてくれないかな……。

「そ、それより! 薬草採取についていろいろ教えてほしいな」
「まぁいいけど……」

 誤魔化せたかは全く分からない。
 でも多分、誤魔化せてないと思う。
 でもルークはあまり気にしていないのか普段通りの顔になった。
 もしかしたらカレン達みたいなお姉さんに仕事を教えるのが嬉しいのかもしれない。
 このくらいの男の子は女の子にいい格好をしたい時期だしね。
 うん。ポジティブに考えよう。

 その後は5人で他愛もない会話をして、森を進んで行き薬草を見つける。

「ヒナタ、これが採取する薬草だ。冒険者ギルドで売っている回復薬の原料でもあるんだ」

 ルークが薬草の用途まで教えてくれる。
 とても優しい子だ。

「そうなんだ。これはどうやって取ればいいの?」
「本来は根まで一緒に取ればいいんだけど、それだともうここからは薬草が生えてこなくなるから、根は残して採取するべきだな」

 そうなんだ。知らなかった。
 初めて薬草採取した時は、根まで一緒に採取していたけど。

「それだとギルドで換金するときに安くならないの?」
「安くはなるが、この場所は街からも近くて安全だから、ヒナタのような新人冒険者でも安心して依頼がこなせるだろう?」

 え、この子優しすぎない?
 自分のことだけじゃなくて、他人のことも考慮しているのか。
 自分たちが貰える報酬よりも今後の新人冒険者の命を優先している。
 優男君だね。
 シアンもルークに惚れちゃうね。

「ルークは優しんだね。私みたいな新人のためにありがとう」
「ふんだ! そんなの気にすんなし!」
「ちょ、ちょっとルーク!」

 ルークが照れたのか、顔を逸らした。
 シアンがルークを叱る。
 というより嫉妬してる?
 シアンはルークのことが好きなのかな。
 なんか2人の関係が微笑ましく思えてきた。

 そして始めにルークがお手本として、薬草を採取してくれた。
 その後に私とカレン、シャルも採取していく。

「姉ちゃん達は上手だな。これで依頼も達成だ」
「ありがとうねルーク」

 依頼にある数量分だけ薬草を採取して、この場を後にする。
 
 これで依頼は完了だから、帰ったらルーク達にバレないように孤児院にでも行ってみようかな。
 あまりにひどいようなら、フィリップに言って補助金の上乗せも頼めるかもしれない。

「ん?」

 気配探知に反応があった。
 この先に魔物が3体いる。

「どうしたんだヒナタ?」
「この先に魔物がいるね」
「え、この辺に魔物はいないはずなのに……」

 ルークが怯え始めた。
 しかし、男の子だからか近くにあった木の棒を持って戦闘態勢に入る。

「ここは俺がやるから、姉ちゃん達とシアンは隠れててくれ」

 男らしい一面も見せるルーク。
 格好良すぎて孤児院でもモテモテなんじゃないかと思うよ。

「でも、ルークが……」

 シアンが不安そうな顔でルークに声を掛ける。
 シアンとしてはルークのことが心配だろう。
 でもルークとしては唯一の男の子だから、女性陣を守りたい気持ちになっている。
 私を女性という括りにしていいか分からないけど。

「大丈夫だシアン。安心して見ててくれ」

 シアンを安心させるために言っているが、声が震えている。
 でもここは私たちがやった方がいいかな。
 しかし、ルークのこの勇気を蔑ろにもできないような気がする。

「あたしもやるよ」

 カレンがルークに声を掛ける。
 こういう時、カレンは頼りになるな。
 目に見えて武装しているから、戦闘に参戦するのも不自然ではない。

「い、いいんですか? いや、でも……」

 ルークは不安そうにカレンを見る。
 やはり女性に戦わせるのはプライドが許さないか?
 でもここは少しでも戦力が多い方がいいと思うけど。

「気にするな、あたしにはこの剣があるからな」

 カレンは剣を抜いて、ルークを安心させるように言う。
 ルークは少し不安そうだが頷いた。

「ルーク、この剣使って」

 私は自分の腰に装備していた短剣を渡す。
 さすがに木の棒で挑むのは無理があるからね。

「あ、ありがとう……」

 カレンとルークは剣を構えた。
 目の前にいるのはゴブリン3体だ。

「いくぞ!」

 ルークの掛け声で、2人はゴブリンに向かっていった。



─サーシャ視点─

 コハクちゃんと手を繋いで目的の場所に向かいます。

「ねえ、サーシャお姉ちゃん。どこに行くの?」

 コハクちゃんは大人しく私についてきてくれています。
 こうしていると私もお姉ちゃんに見えるでしょうか。

「コハクちゃんはヒナタお姉ちゃんのことは好きですか?」
「うん! ママ大好きだよ!」

 ヒナタお姉ちゃんは優しいママなんですね。
 コハクちゃんは竜ではありますが、こうやって一緒にいると忘れてしまいそうです。
 コハクちゃんのこの反応からも、ヒナタお姉ちゃんはコハクちゃんに愛情を持って育てているのがよく分かります。
 さすがヒナタお姉ちゃんです。
 でも、コハクちゃんが生まれてからというもの私とは遊んでくれないのが少し寂しいです。
 家庭教師期間はよく会っていたので、とても充実した日々でした。
 たまに厳しいことを言われたりもしましたが、ヒナタお姉ちゃんは私のためを思って教育してくれていたのも分かっています。
 そんなヒナタお姉ちゃんのために、コハクちゃんとお店に向かいます。

「これから行くのは大好きなヒナタお姉ちゃんに日頃の感謝の気持ちを込めてプレゼントを買いに行くんです」
「ママにプレゼント!」
「そうです。私とコハクちゃんでプレゼントを差し上げればヒナタお姉ちゃんも喜ぶと思うんです」
「ママに喜んで欲しい!」

 コハクちゃんも喜んでいます。
 ヒナタお姉ちゃんにはたくさんお世話になっています。
 お父様は教えてくれませんが、ウルレインの人攫い事件やワイバーンの襲撃の解決もヒナタお姉ちゃんが関与していたことは知っています。
 お父様もヒナタお姉ちゃんも私に心配させないように黙っていますが、何となく気がつきます。
 そんなヒナタお姉ちゃんのために、私はお小遣いを貯めてお礼をすることにしました。
 喜んでくれるでしょうか。不安です。

「コハクちゃんここですよ!」
「おぉ!」

 私たちがやってきたのは、少しお値段が高めの装飾店です。
 ヒナタお姉ちゃんはおしゃれな服装ですが、装飾品は付けていません。
 なのでヒナタお姉ちゃんに似合う装飾品をプレゼントにしたいと思います。
 それに装飾品なら、ヒナタお姉ちゃんも身につけてくれると思うので私も嬉しい気持ちになれます。
 いいものが見つかるといいです。
 今から楽しみで仕方ありません!
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