神様のミスで女に転生したようです

結城はる

文字の大きさ
110 / 139

110 久しぶりの再会

しおりを挟む

 みなさんおはようございます。ヒナタです。

 あれから何事もなく山脈を抜けることができた。
 山道を下っていくと、目の前には綺麗な広野が広がっていた。
 そして広野の先には大きな城壁が見える。
 あれが王都か……。

「ママ! おっきなお城が見えるよ!」

 そして城壁の奥には大きな城が見える。
 あれがベルフェストの王城なのだろう。
 サンドラスと同じで大きな城だ。

 やっと辿り着いた。
 初めての他国で初めての獣人族に会える……。
 猫とかいるかな。
 きっと可愛いに違いない。

「コハク、もうすぐ着くよ」

 王都の門に辿り着き、門兵にギルドカード及びコハクの身分証明書を提出する。
 顔の確認と馬車の中身を確認される。

「問題ない。入れ!」

 いよいよ初めてベルフェストの王都に入る。
 門をくぐると目の前には沢山の住民と商店街で盛り上がっていた。
 そしてちらほら獣人がいる。
 あれは……虎さんかな? あっちには兎さんもいる。
 耳と尻尾がなんともキュートだ。

「ヒナタとりあえず冒険者ギルドにお願い」
「了解」

 カレンに言われた通りシャルの案内の下、冒険者ギルドを目指す。
 道中辺りを見渡してみても、サンドラス王国の王都と街並みも似ている感じがする。
 やっぱり違うのは種族くらいかな。

 でもここにいる獣人族でも私の隣にいるのが竜だとは思わないよね。
 そもそも竜が人間の姿になるのが有り得ないだろう。
 ウルレインにいた時に、シャルが時間を作って竜について調べてくれたらしいけど、結局コハクが人型になれた理由は解明できなかったらしい。
 やっぱり私の魔力で生まれたのが影響しているのかもしれない……。
 それか人型になれるスキルを取得したのか……。
 人間の魔力で人型になるってことを証明するには少なくても卵が2つ必要だ。これの証明をするのはかなりの手間だと思う。
 それにスキルについては詳細に調べるにしてもコハクが成人してからだから無理だ。
 そもそもコハクの成人っていつなのかも分からないし。
 人間と同じで生まれてから15年経てばいいのかな?
 それとも人間の年齢に換算した15歳なのか。……ってか竜の歳の数え方は知らない。
 犬だったら実年齢に7を掛けるとかあるけど……。
 悩み事が増えそうだな。

 でも今は、コハクが楽しく人間の生活に溶け込んでくれればそれでいいとも思っている。
 私の生涯でたった1人の娘だからね。
 ゆっくり成長していってほしいものだ。

「ヒナタさん、あそこです」

 コハクについて考えている間に冒険者ギルドが見えてきた。
 冒険者ギルドの前で馬車を止めて、中へと入る。
 中に入ると吹き抜けの3階構造だ。
 そして冒険者の中には獣人族もいる。
 なんか新鮮だね。

「あたしちょっと行ってくるわ」

 カレンがお金を引き出すために前世で言うATMに向かった。
 私達は特に用はないけど辺りを見渡す。
 やっぱりここでも他の冒険者から視線を感じる。
 新入りみたいな雰囲気は醸し出しているつもりはないけど、初めて見る顔だから見ているのかな。
 それにコハクもいるしね。
 子供が来る場所ではないから、変な雰囲気になっているのかもしれない。

「ごめん! 待たせたな!」

 カレンは用事が終わったのか、走って戻ってくる。
 手には沢山のお金が詰まった皮袋を持っている。
 そんな大金持っていると危ない気がする。

「カレン、私のアイテム袋にしまうよ」
「あ、そうだな。頼むよ」

 私は皮袋をカレンから受け取り、無限収納にしまう。
 要件は済んだから冒険者ギルドから出ようとすると……。

「あれ? カレンじゃないか?」

 後ろを振り返ると、背が高く立派な鎧を纏った男性がカレンに声を掛けてきた。

「あ? あぁ、ルカスか……」
「そうだよ! それにシャーロットもいるし、久しぶりだな!」
「お久しぶりです、ルカス様」

 カレンもシャルもどうやら知り合いらしい。
 私とコハクは完全に蚊帳の外だ。
 でもカレン達も元々はベルフェストで活動していたんだから知り合いが沢山いるよね。

「どうしたんだ? もうベルフェストからは出て行ったと聞いていたが……」
「ちょっと故郷に用事があったんだよ」
「あー、確かスリープシ村か。何の用事なんだ?」
「ルカスには関係ねぇよ」
「カレンは相変わらずだな!」

 カレンのこの態度はどこでも一緒のようだ。

「それに見たことのない女性と女の子もいる様だし……。カレンの子供か?」
「ばか! そんなわけねぇだろ!」

 コハクはカレンに全く似ていない。
 まぁ私にも似ていないけど。
 だとしてもカレンの子供って言うのはちょっとデリカシーなさすぎじゃない?

「ははっ! 冗談だよ!」

 なんだ冗談か。
 このルカスという男性は案外いい人なのかもしれない。
 それに冗談を言える仲だというくらいに親しいみたいだ。

「ルカスこそ王国騎士だろ? 冒険者ギルドに何の用だよ」
「カレンよく聞け。俺はもう王国騎士団副隊長まで出世したんだ。どうだ、すごいだろ?」

 話が噛み合っていない。
 でもこの2人を見ていると面白い。

「貴族だとコネもあるから出世も早いんだろーな」
「カレン失礼だよ!」
「ばっか! ちゃんと実力で出世したんだよ!」

 このルカスという男性は貴族だったのか。
 だとしたら親しみやすい貴族だな。
 こういう貴族ばかりなら接しやすいんだけどね。

「で? なんで冒険者ギルドに?」
「あー、最近冒険者の女性が行方不明になってな。それで俺自らギルマスに情報を聞きに来たんだ」
「昔から変わんねーな」
「全くだよ……」

 どうも昔から人攫いが横行しているような口ぶりだ。
 前にカレンが言っていた、不法な奴隷売買が頭をよぎる。

「まぁ、せっかく会えたんだ。時間ができたら飲みにでも行こーぜ」
「……時間ができたらな」
「では、そちらにいる麗しい女性もよかったらどうですか?」
「え、私もですか?」

 突然ルカスが私の方を振り向いて話し掛けてくる。
 麗しい女性って言われるとなんかむず痒いんだけど……。

「もちろんですよ。カレン達のお仲間なのでしょう? でしたらご一緒にどうですか?」
「あ、ではその時はお邪魔しますね」
「是非。楽しみにしていますね」
「さっさと仕事に戻れよ」
「はいはい。じゃあなカレンにシャーロット!」

 そう言ってルカスは冒険者ギルドから出て行った。
 なんか嵐のような人だったな。
 でも悪い人ではなさそうだし、仲良くして損はないだろう。

「すごい仲が良いんだね。カレンの元カレ?」
「ちっげぇよ! 前に騎士団と一緒に魔物討伐した時に知り合いになっただけだよ」

 何だ、仲が良かったからちょっと期待したのに。
 カレンとシャルとはそういう話にならないから、故郷に帰ってくれば恋人くらいいると思ったんだけどな。

「そんな顔で見たって本当に違うからな」

 おっと。
 私がニヤついていたのに気が付かれたか。

「ごめんね。冗談だから」
「どうだか」

 カレンが不貞腐れてしまった。
 あちゃー。やっちゃったな。
 よし、こうなったら……。

「ごめんってば~!」
「ばか、離れろ!」

 私はとりあえずカレンに抱きついた。
 カレンが照れたのか、私を振り払おうと手で押し返してくる。

「コハクも~!」

 そしてなぜかコハクまでカレンの足に抱きつく。
 今のカレンはモテモテだ。

「ふふっ。遊んでないで、宿でも行きましょう?」

 シャルにイチャついているところを止められる。
 私とコハクはすぐにカレンから離れた。
 ちょっとカレンを揶揄いすぎたかな。
 でも普段クールな女性が照れて頬を赤らめているのを見ると可愛いんだよね。
 ついやっちゃったよ。

 そして冒険者ギルドを出て、馬車に乗り込み宿へと向かう。
 以前にカレン達がよく泊まっていた宿だそうだ。
 馬を厩舎に入れて、宿の中へ入ると受付に1人の女性が立っていた。

「いらっしゃ……、カレンじゃないかい! それにシャーロットまで……」
「久しぶりだな」
「お久しぶりです」

 どうやらカレン達は宿屋の人とも仲が良かったみたいだ。
 女性は受付から出て来てカレン達に近づいた。

「どうしたんだい。急に来なくなったから心配したんだよ……」
「ちょっと色々あってな……。こっちではもう仕事はしてないんだよ」
「そうだったのかい……。でもよく来たね。部屋は……4人部屋でいいかい?」
「あぁ、それでお願いするよ」

 そして私達は充てがわれた部屋へと移動する。
 この宿屋は内装がとてもおしゃれで、変わった蝋燭が置いていたりする。
 匂いはしないからアロマキャンドルではなさそうだ。
 でも蝋燭一つでここまで雰囲気が良くなるんだね。

「いや~なんか今日は疲れたな」
「久しぶりに会った人もいて懐かしかったね」
「そうだな……」

 久しぶりに故郷に帰ってくると、街並みも人の雰囲気も変わっていることが多いけど、この2人を見ているとそうでもなさそうだ。
 2人の思い出のまま今も健在しているのだと思う。

 そして少し休んだ後は、食堂に行ってカレン達が昔話で宿屋の女性と盛り上がっていた。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...