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第2章
第18話 フラグメント
しおりを挟む美癒は目を覚まして、生々しい夢の余韻に暫く浸っていた。
(・・・なんか凄い夢見たなぁ。さっきジン様から、入れ替わった姉妹の話を聞いた影響だよね・・・。)
「あれ、美癒ちゃん起きたの?もうすぐ着くからちょっと待ってね。」
瞼を上げると、ジンの顔が目の前にあった。
「お・・・お姫様抱っこ!?」
(何この恥ずかしい状況!?琉緒に飛ばしてもらう事はあっても、お姫様抱っこで運ばれた事なんてないよ!)
美癒の反応を見てジンはニヤリと悪戯っぽく笑う。
「あぁ、これ?僕がしたくて勝手にしてるんだ。嫌だった?」
「嫌というより、恥ずかしくて・・・。」
「ヨダレ?」
「・・・もう!!!ジン様のいじわる!!!!」
ジンの衣服が本当に濡れている事に気付く。
確かに美癒はよだれを垂らしていたが、衣服が濡れた原因は涙だった。
「私、泣いて・・・?」
「はははっ、まだ寝とく?」
「いえ!!起きときます。」
涙については敢えて何も聞かないでいてくれてると気付いて、優しさに甘えた。
「そういえば琉緒は?どこにいるんですか?」
「さあ?後ろの方で一生懸命ついてきてる(追ってきてる)んじゃない?」
「・・・まるで他人事みたいですね。」
「ははは、その通り他人事だよ。」
ジンの背後を覗いてみたが、琉緒の姿は見当たらなかった。
「さっき話を聞いたあの姉妹の話ですけど・・・。」
「あの姉妹が何か?」
「お姉さんが直前に魂を入れ替えたって言ってましたが、本当に申し訳なかったと後悔してると思います。」
「・・・なるほどねー、でも僕は話に聞いただけだからよく分からないんだ。ごめんね。」
「いえ、私こそなんとなく思っただけで。根拠のないこと言ってすみません・・・。」
「そっか、そういえば琉緒が拗ねてるから、美癒ちゃんの悩みゴト勝手に話しちゃった。ごめんねー。」
(私の悩み?あぁ・・・ちゃんと聞いてくれてたんだ・・・。)
「別にいいですよ。琉緒とは絶交中だから私から言いにくかったんで。」
「絶交中?その割に琉緒はいつも通りだね。」
「私が一方的に・・・。」
「何かあったの?」
「琉緒が私の部屋の鍵が欲しいとか言うから。」
ジンは3回くらい瞬きをして笑いだす。
「美癒ちゃんの部屋はいつも開いたままだから、琉緒に渡してた方が安全なんじゃない?」
「何で私が琉緒なんかに・・・・・って、え?
何で私の部屋が開いたままだと知ってるんですか?」
「あ・・・。」
咄嗟に口を手で押えて、テヘッと笑う。
「もしかして私の部屋に入りました?」
「うん、何回もね☆
寝ている美癒ちゃんの頭を撫でてる時に琉緒が入ってきた事もあったし。
修羅場だったなー、はははっ面白い。
それにヨダレ垂らした寝顔なんて何回も見ちゃったし。
それで琉緒は鍵を欲しがってるんじゃない?」
「・・・。」
「・・・あれ?怒った?」
「・・・。」
「・・・んーっと、鍵閉めない美癒ちゃんが悪いよねー?」
「・・・うわーん!!!降ろして!降ろして下さい!!!
ジン様のバ・バカーーーーーーー!!!!」
ジンは変わらず、はははっと笑ったまま美癒を部屋に送り届けるとサッと去っていった。
(ヒドイ!ヒドイ!!ヒドイ!!!
女の部屋に勝手に入ってくるなんて!!!
ヨダレだけじゃないよ、私は寝てるとき半目なのよ!!!!)
自分が悪いのに、恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
因みに半目で寝ているというのは、琉緒に言われて知った事だ。
自分ではどんな顔をしてるのか分からない。
興奮したまま風呂を済ませ、髪を乾かしていると、ピンポーンとチャイムの音がした。
・・・が、無視した。
【空の世界】から戻ってきた琉緒に違いないと思ったからだ。
案の定、
「入るぞー。」
と琉緒の声が聞こえた。
「入ったら怒るからね!!!絶交中なんだからね!!!!」
大きな声で聞こえるように叫んだ。
ただの八つ当たりである。
「うわっ・・・何をそんな怒ってんだよ。分かったよ、入らねぇ。じゃあな。」
ただならぬ気配を感じた琉緒は、明日にしようと急いで帰っていった。
美癒のも、自分がしていることはただの八つ当たりだと自覚していた。
(今日は疲れたし、もう寝る!)
【空の世界】への往復中に睡眠を取っていた美癒だが、本当に濃い1日だったためとても疲れていた。
興奮状態だったが、すぐに眠りについた。
明日は誘導実習で、異界の山に行く日であるーーー。
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