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第2章
第17話 フラグメント
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ジンによって深い眠りについた美癒は夢を見ていた。
霞みがかった目の前には菜都が立っている。
自身の目には涙が溢れて視界が悪い・・・だが視線は必至に妹を捉える。
「入れ替わりなんて絶対しない!”ここで見る未来の人生なんて確実じゃない”って
お姉ちゃんが言ってたんだよ!?」
「菜都お願いだから・・・私の考えが甘かった。”大丈夫”って思ってたけど、いざ先に自分が生まれるって時になると・・・あなたのことが心配で心配で・・・怖くて不安で仕方ないの。
菜都が事故で死んでしまうなんて嫌!私はもう【この世】に行かないといけないから、入れ替わるなら今しかないわ!早くしないと時間がない!!」
姉は首を振りながら懇願するが、妹はそれを聞き入れる様子もない。
「私は本当に妹として生きる人生が良いと思って選んだの。今更お姉ちゃんに私の人生を・・・未来を奪われたくない!」
必死な訴えに苛立った姉は膝をバンと強く叩いた。
「奪うだなんて、何て言い方するの!?ひどい!!」
互いに興奮していたが、先に深呼吸をして落ち着いたのは妹だった。
「・・・お姉ちゃん、何度も言うけど私は大丈夫だよ。絶対死なない。やりたいこといっぱい語り合ったじゃん。実現させようよ・・・私を信じて---。」
揺らがない決意を持つ妹を見て、姉はそれ以上 言葉が出なかった。
黙り込む2人の元へ【この世】への使いがやって来る。
ーーー残酷にも時は待ってくれない。
「・・・菜都、分かったよ。ごめん・・・ごめんね・・・。私行ってくる。待ってるからね・・・信じてるよ・・・。」
妹を助ける方法は分からないが、信じる以外に何もできない。
そう自分に言い聞かせるしかない姉は、最後に妹を抱きしめようと両手を広げた。
妹も応えるように両手を広げ、抱き合う。
「お姉ちゃん・・・信じてくれてありがとう。そして、いってらっしゃい・・・。」
ーーーと、その途端。
パアーーーーー・・・っと、姉の手から眩しい光が発せられた。
「え、なに?私何かした!?な、菜都!!!?」
「お姉ちゃん!?」
2人は光に包み込まれる。
眩しさで目を開けていられない。
そして・・・気が付くと姉と妹の魂が入れ替わっていた。
【この世】へ行くはずだった姉の魂が取り残され、
妹の魂が美癒の身体へと吸い込まれていったのだ。
それとともに【この世】への使いの姿もなくなっている。
「な、菜都!?菜都!!!?・・・え?菜都が私になってる?何これ、どういうこと?」
状況が理解できない姉は、菜都の人生を手にしたのだった。
あの眩しい光が原因だろうかと考えていたところで、以前入れ替わりの相談を聞いてくれていた神使任務の女性がやって来た。
「一体何が起こったのですか!?」
「菜都が・・・菜都が!!!」
「こ、これは・・・!あなたが魔法を使ったようですね。」
「え?私なにも知らない。魔法なんて知らない!!」
「しかし間違いありませんね、美癒さんと菜都さんの魂は入れ替わりました。それも・・・あなたの意志によって・・・。」
「まさかそんな・・・。私は願ってたけど、菜都はそんなこと望んでいなかった!わざとじゃないの・・・菜都は嫌がってたのに、ごめんなさい。ごめんなさい!!!!!」
冷静さを失い、涙を流しながら取り乱す。
「落ち着いて下さい。確かにこれはお互いが了承していない入れ替わりですが・・・既に菜都さんは美癒さんの人生を与えられて【この世】へ行ってしまった。どうしようもありません。言葉は悪いですが、ここでの記憶は忘れてしまいます。だから罪悪感を抱く必要もない。無駄に苦しむだけだから、あなたは自分を責めないで。」
神使任務の女性も、初めての経験に戸惑いながら必死に励まそうとしていた。
美癒が”菜都”になったその日から、荒れた気持ちを落ち着かせるため
毎日のように神使任務の女性が足を運んでくれていた。
しかしその後、代わりに姉になった彼女が流産により”美癒”として生まれることが出来なかったことを知り、更に自分を責めた。
毎日、毎日泣いたーーー。
絶望の中で、精神がおかしくなりそうだった。
いや、おかしくなっていたと思う。
そしてある日偶然出会えたのが、元妹と同じ紅藤色の魂の大翔だった。
狂ってしまった心は止められず、大翔のことを元妹だと思い込んでしまい
大喜びで大翔から離れなかった。
弟なのに、姉妹のように接して沢山話した。
以前の美癒と菜都のように・・・。
見兼ねた神使任務の女性は神様に報告し、【この世】に生まれる直前まで魂を深い眠りにつかせた。
そして心優しい大翔は美癒と菜都の話を承知の上で、弟として生まれるように同じ両親を選んでくれたのだったーーー。
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