夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第1章

第16話 乾き

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まるで作り話のようだが本当にあった出来事。

考え込む兄弟の魂。

悩むのは当然のことだろう。

もし叶うなら、兄弟揃って本当の願いは”共に大人になり年老いていく”こと。

〔兄さん・・・僕だってきっと死なない。未来予想は不確定すぎて、簡単に違う未来に塗り替えることが出来るんはずなんだ。例え死ぬ運命でも僕は負けない強さを持ってる。だから僕を信じて、兄として先に生まれてよ・・・。〕

《うぅ・・・っ。変わってやりたい・・・のに。・・・ごめん、ごめんなぁ・・・。》

魂が小刻みに揺れる。

お互い大雨のように涙を流していた。

それは、とても綺麗な涙だった・・・。

「じゃあ、このままで良いよね?医療もどんどん進んでいってるみたいだし、病気や事故でも助かるケースは増えてると思うよ。」

ジンはその場の空気に似合わず、相変わらず軽い口調で話している。

〔はい、このままで良いです。手間をかけさせてしまいすみません。〕

《僕も・・・弟と共に想像する別の未来を信じます。すみませんでした。》

「いいよいいよー。もう大丈夫だとは思うけど、またお兄さんの気が変わったら声をかけてね。」

《〔ありがとうございました!!!〕》

話は終わり、ジンは美癒の方を向く。

「あれ?・・・美癒ちゃん、どうしたのボーっとして。帰るよー???」

強張った表情の美癒は、話しかけられて現実に戻り、目を見開いて慌てる。

「あっ!は、はい!すみません。兄弟君たちお元気で。またねー!!!」

「元気でね~。」

《〔さようなら~。〕》

美癒は手を振って、歩き始めたジンの背中を追いかける。

「・・・ジン様はてっきり兄弟君たちの話を全然聞いてないのではないかと思って、心配してました。」

「ははは、ひどいなぁ。僕だって話は真剣に聞くよ。ここでは色々あるからね。」

「すみません。」

「え、まさか・・・そんなことを考えてボケーっとしてたの??」

「いえ、それは違くて・・・。姉妹の話、何だかゾッとするなぁって。」

美癒は鳥肌の感覚を思い出し、両腕を擦る。

「あぁ・・・参考として未来の人生を見たからって、それに囚われていたら駄目ってことだね。」

「そうですね、あの兄弟君たちが一緒に大人になってくれたら私も嬉しいです。」

それはジンも同じ気持ちで、軽く頷く。

「でもちょっと気になることがあって・・・。
姉になった元妹は、生まれることが出来なかったから【水の世界】にいるんですか?
妹として生まれた元姉は、今でも【この世】で生き続けていて、魂を操る能力は使えるままなんですか?」

「ははは、美癒ちゃんは鋭いね。」

「琉緒には脳ミソ空っぽってよく言われますけど。」

「そうだよね。美癒ちゃんの言った通り、生まれることが出来なかったから【水の世界】に来たみたいだよ。」

美癒の左側の頬がピクッと動いた。

(”ソウダヨネ”って・・・?ジン様も私のことを脳ミソ空っぽって思ってるんだ・・・。)

美癒はコホンと咳払いをすると話を続けた。

「私の思った通り、【水の世界】にいるんですね!勝手に魂を入れ替えられて、そのうえ生まれることも出来なくて・・・怒ってなかったんですか?」

「怒ってないでしょ~。悪意があったわけじゃないし、寧ろそのあと生まれた妹のことをずっと大切に思っていたと思う。」

「へぇ・・・誰なんだろう。まだ【水の世界】にいるんですか?」

「どうだろうね~・・・それと妹として生まれた子は、当たり前だけど【空の世界】の出来事は覚えてないし、【この世】の人間だと魂を操る能力も使えない。折角兼ね備えた能力だけど、ただの一般人だよ。
 ・・・・・・来たな。」

ジンの視線が美癒の背後に移る。

「へ?」

周りの空気がフワッと浮いた感覚がして
美癒が振り向くと、琉緒が飛んで来ていた。

「琉緒・・・。」

怒った顔した琉緒の足が地上に付くと、美癒の腕を掴んで自分の方に引き寄せる。

「ジン!!!何のつもりだ!」

「ははは、美癒ちゃんが悩んでるみたいだったから、気晴らしに遠出かな。」

琉緒は美癒の方に目をやる。

「悩み?・・・いや、だからって美癒を連れ回すんじゃねえ!一応病み上がりなんだ!!!」

「やめてよ琉緒、私がついていくって言ったの!」

「美癒は黙ってろ!」

「おい琉緒、美癒ちゃんにそんな言い方はないんじゃないか?それにお前の場合、勝手に此処へ来ただけでも問題だぞ。」

「将来に向けての社会科見学だ!」

(いやいや無理があるって・・・。)

「まあいい、琉緒がここに来た事は僕が何とかしてやる。」

(いいんですかぃ・・・。)

そう言いながらジンが美癒の元へ近付き、琉緒の手を引き離す。

「腕、大丈夫?痛くない?とりあえず【水の世界】に戻ろう。
---ごめんね美癒ちゃん、また眠ってて・・・おやすみ。」   

「おいジン!!!!」

遠ざかる意識の中で、琉緒が怒っている声が聞こえた。

(すごく怒ってる・・・ジン様大丈夫かな?)          

この状態で意識を失うのは正直心配だったが、考える暇もなく目の前が真っ暗になり再び眠りについた。
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