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第2章
第50話 プリムラ
しおりを挟む「摘んだら30分で枯れるなんて勿体ないよね。」
「花は摘まれた時点で生きていられないんだ。もうそろそろ帰ろう。」
「・・・うん。」
美癒は目にしっかりと焼き付け、名残惜しい気持ちのまま琉緒とその場を後にした。
「また一緒に行ってくれる?」
行きと違って別々に飛んでいる美癒は、隣にいる琉緒に向かって声を上げる。
「いつでも行けるだろ。ただ声が賑やかで当分は行きたくないな。」
「ふふっ気にしなかったらいいのに。」
琉緒が黙ったため、美癒はそれ以上なにも言わなかった。
美癒の部屋まで帰ると、夢の世界から現実に引き戻された気分だった。
花を見に行く前は不機嫌だった美癒が、今ではすっかりいつも通りだ。
そんな美癒を見ながら、琉緒はどうしても聞きたかった事を尋ねるためソファに座って低い声を出す。
折角明るくなった美癒に安心しながらも、どうしても聞くしかなかった。
「美癒、俺を【この世】に戻すつもりか?」
「え・・・!な、なんのこと!?」
(ジン様が話した・・・?そんなわけない、琉緒に話しても絶対に琉緒は納得しない!)
突然な問いにどう答えたらいいのか分からず困惑する。
「理由は知らねぇ・・・けど俺は戻るつもりないって前に言ったよな?」
「本当になんのことだか・・・。」
「説明できないのか?」
「・・・ごめん・・・・・・。」
問いただしても答える気がないと分かった琉緒はため息をつく。
「ジンに聞くからいい。それに・・・どうせ美癒にはできねぇ。」
迷いがあるからーーー
と、気付いている琉緒。
(やっぱりジン様から聞いたわけではないんだ。それにゼロのこととかは知らないみたい。それにしても私には出来ないだなんて失礼な・・・。)
惚けて正解だったと思い美癒はその場をやり過ごした。
しかしその後に流れる空気はどんよりと重く、琉緒は美癒の部屋から出て行った。
ジンに会いにいっているのではないかと気が気ではなかったが、その日琉緒は美癒の部屋に帰ってこなかった。
そのまま次の日となり、美癒は【この世】へ行くためにジンと待ち合わせの場所へ向かった。
初めて行くビルに足を運ぶとエレベーターに乗り、指定された156階のボタンを押す。
ゆっくりと上がっていき、ガラス張りのエレベーターからは外の風景が丸見えだった。
(高いなぁ・・・。琉緒と飛ぶ時は怖くないけど・・・やっぱり一人だと高い所は怖い。)
美癒は外を見ずにエレベーターの扉だけを見つめていた。
156階に着き扉が開くと、廊下にはジンと琉緒が立っていた。
「あ、美癒ちゃんいらっしゃい。」
「こんにちは。どうして琉緒が・・・?」
いつからジンといるのか、昨日から会っていたのか、美癒の全身には冷や汗が流れていた。
「今来たとこ。」
「・・・昨日は?」
「ん?昨日?何かあったの??」
何も知らない様子のジンを見て、美癒はホッと胸をなでおろした。
大きく深呼吸をして美癒はジンの方を見た。
「いえ、なんでもないです。琉緒はどうしたの?・・・まさか、一緒に【この世】へ行ってくれるの!?」
「いや、見送りに来ただけだ。」
(なーんだ、一瞬期待しちゃった・・・。でも見送りされたあと琉緒はジン様と2人になるよね・・・不安が続くよー・・・。)
ジンに案内されるがまま廊下を歩き部屋に入る。
そこはジンのオフィスだった。
「奥の部屋は僕の部屋なんだ。琉緒と美癒ちゃんも神使任務に就く頃にはこのビルに引っ越し予定だよ。皆こんな感じの部屋だから。」
「へ・・・へぇ~。オフィスだけでも広いですねぇ。」
部屋を見渡しながら、まさか自分がこのような部屋に住むなんてと思い感動した。
「さ、箱を出してくれる?」
ジンは美癒の前に右手を出して箱を受け取ろうとする。
「箱?」
美癒は首をかしげる。
ジンは美癒を見て言葉が出なかった。
「・・・あぁー!!!神様にもらった箱!【この世】に行くのに必要なんだった!!」
(忘れてたぁー・・・!ど、ど、ど、どうしよう~~~っ。)
思い出した美癒は大慌て。
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