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第3章
第60話 境界線
しおりを挟む「ちょっと琉緒!何言ってるのよ。」
「お前は首を突っ込むな。聞いたら何かしようとするって分かってる。それなら最初から聞かなければいい。」
「ここまで聞いたらもう同じよ!・・・それで、あなたは何か悩みでもあるの?」
深紅色の魂は控えめな話し方はするが、琉緒の引き留めようとする態度を見ているにも関わらず全く遠慮はなかった。
「あ・・・えっと、私ではないんですけど、妹たちが・・・。案内するので直接お話ししてもらってもいいですか?」
「うん?いいよー??」
琉緒は何度も止めようとするが美癒は深紅色の魂についていったので、同じようについていくしかなかった。
何か悪い事が起こるような予感がして気が気でない様子で両手を握りしめていた。
深紅色の魂は、深緑色の魂の元へと2人を案内した。
「私の妹です・・・。この人達が悩みを聞いてくれるって言ってたから話して。」
「初めまして。悩みを聞いてくれるって・・・本当ですか!?
実は私、まだ前世の記憶が残ってて、船に乗ってここに来る前に主人を見つけたんです。・・・でも主人は私の事を覚えていないから話しても信じてもらえなかった。その後もしつこく付きまとってしまったから主人は私が嫌で離れて行ったんです。」
深緑色の魂が話すのを相槌ををうちながら聞く。
「そっか。旦那さんだった人が離れていくなんて・・・辛いよね・・・。」
美癒は家族を思い出しながら悲しい気持ちになった。
「どうせ生まれたらあんたも忘れるんだから、前を見てろよな。」
「そう思うのは分かります。私はそれで良いかもしれない。でも主人は・・・川の向こうに行ってしまいました。本心で決めたのではなく、私から離れたい一心で決めたんだと思います。」
(川の向こう・・・って、人間を選ばなかったってこと?)
美癒は琉緒を見ると、「変顔か!」ってツッコミたくなるくらい嫌な顔をして首を横に振ってきた。
「ちなみに旦那さんは何に生まれかわろうとしたの?」
「分かりません。川の向こうに行ったところしか見てないので・・・。」
「そっか、あなたは旦那さんに会いたいわけではなく、旦那さんが何に生まれ変わるかを本心で決めて欲しい・・・で合ってる?」
「はい、記憶があるせいで今は主人と離れるのが悲しいけど、主人には私のせいで後悔して欲しくないの。」
目線だけ上にあげて口をへの字にしながら考え込む美癒。
「美癒、だめだぞ。俺らは話を聞いてやるだけで何もできねぇ。」
「分かってる!・・・けど・・・。」
「だめだ!」
諦めきれない様子の美癒を見て、琉緒はゆっくりと首を横に振る。
(なにか力になりたいよ!もし旦那さんが本当は人間に生まれたいと思っているなら、方法はあるでしょ・・・?)
美癒は深緑色の魂に向かって声をかける。
「助けてあげられるかもしれない。・・・でも先ずはジン様に相談させて欲しい。」
「この辺りを担当している神使任務の人には相談したわ。でも川の向こうは担当外だからってどうしようもなかったの。」
「ジン様にはその話が伝わってないのかもしれない。」
美癒は琉緒に、ジンを呼んできて欲しいと頼んだ。
いつもなら突っ走って勝手なことをし兼ねない美癒だったが、きちんとジンに話をしようとする姿を見て”少しは成長したな”と感じた。
琉緒にとって、ジンを呼びに行くのは不本意だったが、美癒がこれ以上暴走しないために首を縦に振った。
そしてジンを呼びに行った琉緒は「忙しいって言ったよな?」と笑顔で嫌味を吐きつつ、美癒達の元へ来てくれた。
もちろんこのような態度は琉緒に限定されている。
「ジン様!忙しいって言ってたのにすみません。」
「いやいや、僕って仕事が早いからさ。」
「お前・・・俺には散々嫌味を言ってきたくせに・・・。」
琉緒はジンを睨んだあと黙り込んだ。
「ここへ来る最中に事情は聞いたよ。」
「琉緒ナイス。」
「ただ・・・問題があってね。元ご主人が本当は人間が良かったって言った場合・・・入れ替わるしか方法がないんだ。つまり誰かが川の向こうに行かないといけない。誰が入れ替わるのか、アテは有るのかな?」
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