夢で出逢う - meet in a dream -

LikuHa

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第4章

第94話 月明り

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放課後に寄り道をして向かったハンバーガー店。

「うん、分かった。別れよう。」

ポテトをつまみながら、琉偉と菜都は別れ話をしていた。

隣の席に座っていた知らないカップルが、2人の会話を聞いてしまい静まり返っていた。

「菜都・・・ごめんな。今までありがとう。」

「ちょっとー。親友に戻るんでしょ?だったら”今までありがとう”なんて言わないで。”これからも宜しくね”でしょ!」

”はい”っと言いながら菜都は琉偉の前に右手を出して握手を求める。

琉偉から始めた別れ話。

それは琉偉の願いである”親友”の申し出も含まれていた。

「あ・・・あぁ。親友としてよろしく。」

琉偉は右手をズボンに擦り付けたあと菜都と握手をした。

ギュッと強く握ってゆっくりと離していく。

「それにしても琉偉が死にかけてたなんて・・・それに美癒に会ってたなんて。
あとは、琉緒も記憶を取り戻して良かった・・・のかな?」

初めて琉偉の前で”お兄さん”ではなく”琉緒”と呼び捨てにした。

なぜかというと
2人で話していたのは、ただの別れ話ではない。

ゼロが菜都を狙っていた本当の理由や、琉偉が死にかけて美癒に会ったことや、兄が美癒に好意を寄せていることなど、琉偉の知ること全てを打ち明けていた。

「兄貴はゼロと対峙したあの晩のことも急に思い出したみたいだが・・・アイツはおかしくなっちまった。そもそも何で兄貴が美癒を知ってるのかが不思議なんだよなー・・・美癒と菜都が入れ替わる前も面識はなかっただろ?あと、何で急に”美癒が来てる”って言って探し回ってたのか・・・。」

頭のスッキリしない琉偉はブツブツと呟く。

その問題点は逆に菜都が知っている事だった。

「あ・・・あのね、今までの琉緒は琉緒じゃなかったっていうか・・・。
【水の世界】ってところにいた本物の琉緒が、あの晩本物の身体に戻ってきたの。
【水の世界】にいた頃は美癒も琉緒もずっと一緒にいてーーーー」

菜都は大まかに説明していく。

「そういえば琉緒も【水の世界】とか言ってたなぁ。なんのことかと思ったけど、いま美癒がいる場所なのか。」

「うん、私も入れ替わる前の美癒だったころ琉緒にはすごいお世話になってたんだよ。琉緒が”美癒が来てる”って言ったのは・・・なんのことだか本当に分からないんだけど・・・。
あのね、私・・・菜都の身体を返したいと思ってる。」

「え・・・?」

菜都の言葉に対して驚いているうちに、背後から別の声がした。

「本当にそう思ってんのか?」

菜都の視線は琉偉の後ろへと移る。

琉偉が振り向くと、そこにはハンバーガーやポテトなどが沢山乗ったトレーを両手に持つ近藤君が立っていて2人を見下げていた。

「こ・・・近藤!?」

「すごい久しぶりだね・・・。」

近藤君が菜都を見る瞳は、相変わらず冷たかった。

スッと視線を琉偉に移して表情を緩める。

「琉偉先輩、ちわっす。琉緒先輩は大丈夫?あれから公園に来ないんスけど。」

「ああ、この前は兄貴を運ぶのを手伝ってくれてサンキュ。兄貴はあれから部屋に引きこもってる。俺も全然話が出来てない。」

「えー・・・琉偉先輩の都合が良い日にお邪魔してもいいスか?琉緒先輩に会いたいんで。」

「あ、あぁ。なんなら今日の帰りでも大丈夫だけど。」

「それなら今日の帰りに。」

「分かった。ほら、連れがお前を呼んでるぞ。」

琉偉が、離れた所にいる近藤君の友達を指さす。

「おーい、こっちの方 席あいてたぞー!」

パーマがかかったお洒落な髪をした男の子が手を振っている。

「分かった、すぐ行くー!」

近藤君は友達に返事をすると再び菜都の方に目をやる。

「で?今言ってた、土田先輩の身体を返したいって話。まさか冗談じゃないよな?」

「ほ・・・本気だよ。」

「どうやって返すんだ?」

「それは・・・。」

返すと言ったものの、なんの当てもない。

菜都は下を向いて黙り込む。

そしてハッと気付いて言い返す。

「っていうか、なんで近藤君がそのことを知ってるの?」

何で気付かなかったのだろうか。

近藤君の問いに無意識に答えかけていたが、近藤君が入れ替わりについて知っているなんておかしい。

菜都と琉偉の会話が聞こえたからといって、普通は意味が理解できるはずがない。

「え?菜都が近藤に話してたわけじゃないのか?それなら何で知ってる・・・?」

琉偉も不思議そうに近藤君を見つめる。

「俺はアンタに初めて公園で会った時から、別人だって気付いてたんだよ。」

「初めて・・・?公園・・・?一体いつのことだ?」

意味が分からない琉偉は菜都の様子を伺う。

3人の間には妙な雰囲気が漂っている。


”初めて公園に会った日”はいつだったか。

・・・そう、それは近藤君だけではない。

【この世】の琉緒に会ったのもあの日だった。


(そういえば私が菜都になって初めて近藤君に会った時、”あんた誰” とか ”土田先輩じゃないだろ” とか言われたような気もする・・・。)

菜都はチラッと近藤君を見た。

「まさか・・・本当に?」

「・・・俺は土田先輩に”守る”って約束したんだ。もちろん一方的な気持ちだけど、俺は守ることができずに土田先輩を失った。だから返して欲しい・・・頼む。」

とても悔しそうな表情で菜都を見つめてくる。

それを見て菜都は心が痛くなった。

何で彼はこんなに自分を恨む目で見るのだろうか・・・。

奪いたくて奪ったわけではない。

私は”悪者”なのかーーー?

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