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番外編
香織の変恋慕②
しおりを挟む公園で琉偉と陽太に会う日はすぐにやって来た。
香織の決意が固いことに気付いた菜都は
怪しまれないように琉偉をコンビニに誘い、わざとその場から離れた。
「ごめん、コンビニの用事は済んだけど・・・公園に戻るのはちょっと待ってくれるかなぁ?事情は後で言うから。」
どのくらい2人きりにすれば良いのか分からなかったので、なるべく時間を引き延ばそうとした。
言いにくそうに話す菜都を見てなにかを察した琉偉は恐る恐る訊ねる。
「もしかして、告白・・・とかじゃないよな?」
「え、何で!?」
するどい質問を受けると菜都の目が泳ぎ始めた。
「はぁ・・・分かりやすいなぁ。
でもマズイわ。陽太は他に好きな人がいる。」
「え”!?」
驚いて咄嗟に出た声は裏返っていた。
告白が成功するかは正直分からなかったが、他に好きな人がいるという事実に驚く。
だってそれは、琉偉と陽太は菜都と香織以上に仲の良い異性がいなかったから。
その頃香織は、琉偉の言っていた通りフラれてしまっていた。
「今後も今まで通り、友達として仲良くしてくれるかな?」
陽太は返事しにくそうに目を逸らした。
「・・・私の気持ちを知ってしまった陽太の方が気まずいよね。でも私って切り替えがすごく早いの。すぐ他の好きな人ができるよ。」
「香織がそれで良いんなら・・・。」
菜都と琉偉が公園に戻って来た時には、香織と陽太はいつものように笑いながら話していた。
もちろん香織は無理して笑っていたが、菜都は何も聞かなかった。
菜都と香織が2人きりになった時には既に辺りは真っ暗になっていた。
自転車をゆっくりこぎながら帰る最中、香織は涙を少しだけ流した。
「香織・・・我慢してたよね・・・よく頑張ったね。」
「ははは、フラれちゃったの気付いてた?陽太と一番仲良い女子って言ったら私だと思ってたのに・・・。ごめんね、気を遣わせちゃって。」
「香織が一番辛い時に謝らないで。何でも吐いてくれたらいいんだからね!」
帰ってからも、きっと香織は一人で泣いてるだろう。
自分の味方が1人でもいるって、すごく心が救われる。
素直な香織が初めて失恋した日だったーーー。
それから何日か経ったが、陽太と琉偉は公園に一度も来なかった。
陽太は友達のままでいて欲しいという願いに同意したものの、結局はどう接していいのか分からず気まずく感じたのだろう。
クラスが違うから、学校内ではあまる話すこともなかった。
だが陽太と琉偉が来なくても、菜都達はいつも通り公園にいた。
2人だけでいると、今まで話したことのないような人とも仲良くなってきた。
違う学年の子もいれば、年上の高校生や年配の人まで。
そんな時に出会ってしまったのだ。
あのオジサンと・・・ーーー
***
「あの時、俺らが公園に行かなくなったから変なオッサンに絡まれるようになったんだろうな。」
たらればを言っていたらキリがないのはお互いに分かっていた。
それでも後悔はずっと残る。
「バカ陽太のせいよ。」
「あぁ陽太が意気地なしのせいだ。」
後にその事件について香織から聞いた琉偉は、菜都のことが心配すぎてすぐに告白したのだ。
「あの時の近藤君ったらすごくカッコよかったわ~。」
「俺だって助けたかった。」
目を輝かせて近藤君を崇める香織の横で、琉偉は悔しそうな顔をする。
それを見て、香織は思った。
あのとき助けに来ていたのが琉偉だったら
ゼロに狙われてしまうのは近藤君ではなく琉偉だった、と。
「近藤君くらいの運動神経がないと無理よ。」
助けられるのも、ゼロに狙われるのも・・・。
「あのなー俺は部活に入ってないだけで運動神経は良い方なんだよ。でも、香織はあれからずっと近藤に片思いしてるもんな。」
ーーーそう、私はずっと片思いしている。
きっと叶うことのない相手。
それでも私たちを助けてくれたあなたはヒーローだから。
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