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番外編
現実で出逢う①
しおりを挟むーーー6年後
住宅街に並ぶ、とある一軒家に”あの一家”は住んでいた。
国民の多くが休日である日曜日。
庭では大変な作業が行われている。
「ったく。菜都のやつ・・・よくも俺をこっちの世界に戻したな。」
彼は顔も服も土で汚れている。
「もう~、そんな大昔のことをまだ言ってるの!?成長しないわね。」
彼女も同様、真っ黒だ。
「は!?菜都は俺に対してどれだけ酷い仕打ちをしたと思ってるんだ?一生根に持つって言っただろ。」
「ほんッと、琉緒ったら特別ガキんちょのまま変わらない。」
そう、くだらない喧嘩をしているのは菜都と琉緒だ。
「魔法が使えない不便さが、どれだけ必死に伝えても分からねぇだろーが!」
「ふんっ!ここに来て漸く、魔法が使えない私の気持ちも分かったんじゃなーい?」
菜都は土で黒くなった軍手で、わざと琉緒の顔を撫でまわす。
元々は花柄で可愛い軍手だったが、今では真っ黒で全く分からない。
「きったねー!!・・・オリャッ!くらえ!!」
琉緒は肩で顔を軽く擦ったあと、足元にいた長~~いミミズを菜都の顔面にプラーンと持ってくる。
「・・・ギャーーーー!!!」
菜都の叫び声が響き渡る。
「花が好きなら虫とも上手く付き合うんだな。」
「最低!最低!!!」
そんなやり取りをしているなか、香織が敷地内に入ってきた。
「あんたら、またやってるの?毎日毎日飽きないわねぇー・・・。」
「香織!ちょっとこのミミズどっか連れて行ってよ!!私ここから動けない!!!」
ミミズの恐怖で角に追いやられた菜都を見て、香織は呆れながらため息をつく。
香織は素手でミミズを拾い上げると、菜都から離れた位置にソッと置いていた。
「す・・・素手?」
香織の意外な一面を見て、琉緒はつい口に出して驚いていた。
「はぁ・・・菜都のために花壇作ってお花植えてくれてるんでしょう?あれ、こっちには野菜も植えてある!」
「俺がやったんだ。仕事が早いだろー。」
「そうね。でも何で今更?」
菜都の代わりに香織が褒めてくれるわけもなく、あっさりと流される。
少し不貞腐れている琉緒に代わって美癒が答える。
「今までは美癒の方に手が掛かってたからね。もうそろそろお花の世話する余裕もできるかなぁーっと・・・。」
ーーー”美癒”
少女は菜都と琉緒の間に生まれた、4歳になる娘の名だった。
「美癒は??」
菜都と琉緒が作業をしている間、香織に娘の面倒を見てもらっていた。
だが美癒の姿は見当たらない。
「あー・・・ほら。」
菜都と琉緒は、香織が指さす方向へ視線を移す。
自然と2人の顔は笑顔になる。
「ふふっ、香織の手が空いたわね。あと少しだから手伝ってよ。」
「あーーー・・・っと、やっぱり心配だから美癒を見てこよ。」
「香織が逃げたー!!」
そんなこんなで、庭の大改造計画は無事に終わりを迎えた。
2人はシャワーを浴びたあと、再び外に出て植えたばかりの花を見つめる。
「”プリムラジュリアン”かぁ・・・。この花の名前、初めて知った。」
「私もー。」
当の本人も、花の名前なんて全く分かっていなかったが、
中学校に咲いてたとき、菜都が気に入ってたから琉緒もずっと気になっていたのだ。
「みんな帰ってこないね。また美癒が『帰りたくない~!』ってわがまま言ってるのかも。」
「・・・公園に迎え行くか。」
「そうだね。」
さきほどまでくだらない喧嘩をしていたのが嘘のように、2人は仲良く手を繋いで公園へと歩き始めた。
近所にある少し広めの公園に近付いていくと、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
「いま滑り台のところにいる。」
「相変わらず琉緒は目が良いねぇ~。私は全然分からない。」
まだだいぶ離れたところにいて、公園を囲う木々で余計に見えにくいというのに、琉緒は美癒を見つけ出す。
「初めて見る子もいるなぁ。」
「仲良く遊んでると良いね。」
香織たちも付いているので、特に心配はしていない。
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