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番外編
現実で出逢う②
しおりを挟む公園の入り口に着くと、菜都の視線も娘を捉えた。
美癒の叔父さんにあたる、琉偉と遊具で遊んでいる。
「ふふっ、琉偉の膝に乗って滑り台してる。」
そんな2人の周りをウロチョロと動き回っているのは香織だ。
携帯を向けて、写真撮影をしている。
この3人が親子と言われても不思議ではないくらいだ・・・だが、美癒がそれを許さない。
「ルイはミユとケッコンするんだから!」
離れた位置からでも聞こえる娘の甲高い声。
菜都と琉緒は小走りで3人の元へと駆け寄る。
「美癒、叔父さんを困らせないの。」
父と母に気付くと美癒は途轍もなく嫌な顔をした。
一方で琉偉と香織は安心したように胸をなでおろす。
「ルイー、もういっかいすべるー。」
「ちょっと・・・そろそろお尻がイタイ・・・。」
「ーーーそれなら私と滑ろうよ。」
「イイヨー。」
美癒は初めて見る女の子と手を繋いで滑り台へと駆けていく。
琉緒と琉偉は2人の後ろをついていった。
菜都と香織も子供たちが遊んでいる遊具を見ながら話し始める。
「同い年くらいの子かな?」
「美癒の方がお姉さんらしい。」
「へ~ぇ・・・ご両親は?」
「さっきまではママさんがいたんだけど、お姉ちゃんがトイレに行きたいって言ってるのにあの子は帰りたがらないから、どうせ一緒に遊んでるし戻ってくるまで見ててあげてるの。」
「さすが保育士さんだね。」
「小さい子は何をするか分からないから、かなり神経使うわよ。」
美癒と女の子は、繰り返し滑り台で遊び続けている。
「・・・飽きないのかな?」
「飽きないと思う。」
少し経つと女の子の母親が戻ってきた。
「すみません、助かりました。」
香織たちに向かって頭を下げると、娘の名前を呼ぶ。
「ララー!帰るわよ~!!」
ララと呼ばれた女の子は、母親に気付くと嬉しそうに駆け寄ってきて抱き着いた。
「おねーちゃんはー?」
「バァバとお菓子食べてる。遊んでもらったんだからご挨拶しなさい。」
「はあい。」
ララは遊具の方に振り向き、大きく手を振った。
「バイバーイ!!」
「ララちゃん、また遊ぼうねー!!」
美癒も高い位置から笑顔で手を振る。
次にララは、菜都と香織の方を向いた。
菜都と初めて目が合うと一瞬驚いた顔をして、離れた位置にいる琉緒と菜都を交互に見る。
どうしたものか、菜都は不思議そうに女の子を見つめる。
「”必ず守る”ーーー」
「え!?」
真顔で呟くララを見て、菜都はとびきり驚いた。
「ララ?」
ララの母親も驚いている。
「ら・・・ララちゃん、今なんて言った・・・?」
「・・・え?わかんない。」
ララ自身も、なぜそのようなことを口に出したのかが本当に分からないようだった。
「す、すみません。この子がよく分からないことを言ってしまって。」
ララの母親が慌てて間に入る。
菜都は少し考え込んだあと、再びララに視線を移す。
「い・・・いえ・・・。ねぇララちゃん、もしかしてお姉ちゃんが2人いる?」
「うんー、ララのおねえちゃん、ふたりー!」
ララの返事を聞いて、菜都はフワッと優しく微笑みかけた。
「お会いしたことありましたか?」
「いえ、ただ聞いてみただけです。ララちゃんたちと会うのは初めてだと思います。それでは・・・。」
菜都はペコリと頭を下げてララに手を振ったあと、香織とともに美癒のいる遊具へと向かった。
ララの母親は腑に落ちない表情で2人の背中を見つめたあと、ララとともに帰って行った。
「美癒、暗くなるから帰るよ。」
「ルイがえほんをかってくれるってー!」
「え?」
視線を琉偉に移すと、慌てて言い訳をはじめた。
「い、いや・・・ララちゃんがいなくなったから滑り台誘われたんだけど『絵本買ってあげるから帰ろう』って・・・スミマセン、絵本で釣りました。」
菜都と香織は噴き出してしまい、笑い声が響いた。
「美癒、絵本は明日にしよう。今日はもう帰らないと。」
「えーヤダヤダ!!」
「あーあ、美癒の大好きなオムライスを作っておいたんだけどなぁ~~~?」
「・・・か、かえる!」
美癒の気が変わらないうちにみんなで公園を後にした。
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