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2.虫取菫とキューピッド
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結果的に言えば、もちろん告白はされなかった。
晴天の昼休み校舎裏の楠の木陰にひっそりとあるベンチで、購買で買ったパンを食べながらその後の出来事を陽次郎に話した。
焼きそばパンを食べながら聞いていた陽次郎は、パックのレモンティーを口に含んでふむと頷いた。
「つまり佐藤くんの元カノが今俺のお友達にいて、俺と仲良しの月子に元鞘に収まりたいから何とかしてと頼んできたと」
「いや、女の面では素行が良くない陽次郎の毒牙から救いたいってことらしい」
「それを結局引き受けちゃうとこが月子だな」
「だって見ず知らずの先輩に声かけるってよっぽどじゃん?陽次郎にこの話を伝えるくらいの事はできるし」
「お人好し」
私の頬を陽次郎が人差し指でついてくる。
つんつんなんて可愛いものではなく、ぐりぐりと強めにつつかれ割と痛い。
おせっかい、貧乏くじ等と言いながらどこか嬉しそうにつついてくる言動のギャップがすごい。
「良い人すぎ。だから自分の恋を犠牲にして相手の恋を実らせるんだ」
「だってなんか、頼られたらー」
「ほっとけないもんな。月子は昔から頼ってくるやつに甘い」
やけに真剣な表情でそう言うので、何も言葉が出てこなかった。
怒っているのとは違うが、何かうっすらとした毒を感じる。
名探偵に失言を指摘されて詰んだ犯人みたいな気持ちだ。
「それで?どのこのこと」
「え…ああ」
目を伏せた相手が急に話題を戻した事に戸惑う。
(なんだったんだろ)
少しもやとっしながらも、私はスマホを手に佐藤君が半ば強引に連絡先を交換してきた際、送ってよこした彼女の写真を見せた。
佐藤くんの隣に可愛らしいツインテールの女子が写っている。
この間佐藤君が声をかけて来た際に陽次郎の元に駆けて来たこだ。
「あー鈴木さん。てか資料画像がツーショ」
「未だに好きなんでしょ。あの時佐藤くんめっちゃ陽次郎睨んでたし」
「んーでも鈴木さんて…」
何か言いかけてふとこちらを向いた陽次郎に私は首を傾げた。
「佐藤君は月子に具体的にどうしろって?」
「『若竹先輩のこと誘惑するなり、色目を使うなりなんとか彼女から引き離すことはできないんですか』って言われた」
「ほう…赤子に重量挙げを強要するようなもんだな」
「赤子のポテンシャルにもよるっしょ、なんでも否定する姿勢はよくない…いやさすがに赤子に重量挙げは無理だろ、たとえが悪すぎる」
「上腕二等筋がたくましい赤子をみたことないもんな」
「それはオカルト掲示板でも見かけたことないわ」
焼きそばパンを食べ終わった陽次郎はぺろりと指を舐めながら「だろうな」と呟いた。
そして紙パックを持った手でこちらを指した。
「なんで月子にそんなことを?」
「ずっと一緒にいるから本妻なんですよね?て言われた。江戸時代の大名レベルの捉え方されて困ったわ」
「本妻ね」
唇をとがらせてそう呟いた後、陽次郎は手を伸ばして私の髪を一房すくった。
そのまま髪を指に巻き付ける。
「じゃあ、やってみる?」
結果的に言えば、もちろん告白はされなかった。
晴天の昼休み校舎裏の楠の木陰にひっそりとあるベンチで、購買で買ったパンを食べながらその後の出来事を陽次郎に話した。
焼きそばパンを食べながら聞いていた陽次郎は、パックのレモンティーを口に含んでふむと頷いた。
「つまり佐藤くんの元カノが今俺のお友達にいて、俺と仲良しの月子に元鞘に収まりたいから何とかしてと頼んできたと」
「いや、女の面では素行が良くない陽次郎の毒牙から救いたいってことらしい」
「それを結局引き受けちゃうとこが月子だな」
「だって見ず知らずの先輩に声かけるってよっぽどじゃん?陽次郎にこの話を伝えるくらいの事はできるし」
「お人好し」
私の頬を陽次郎が人差し指でついてくる。
つんつんなんて可愛いものではなく、ぐりぐりと強めにつつかれ割と痛い。
おせっかい、貧乏くじ等と言いながらどこか嬉しそうにつついてくる言動のギャップがすごい。
「良い人すぎ。だから自分の恋を犠牲にして相手の恋を実らせるんだ」
「だってなんか、頼られたらー」
「ほっとけないもんな。月子は昔から頼ってくるやつに甘い」
やけに真剣な表情でそう言うので、何も言葉が出てこなかった。
怒っているのとは違うが、何かうっすらとした毒を感じる。
名探偵に失言を指摘されて詰んだ犯人みたいな気持ちだ。
「それで?どのこのこと」
「え…ああ」
目を伏せた相手が急に話題を戻した事に戸惑う。
(なんだったんだろ)
少しもやとっしながらも、私はスマホを手に佐藤君が半ば強引に連絡先を交換してきた際、送ってよこした彼女の写真を見せた。
佐藤くんの隣に可愛らしいツインテールの女子が写っている。
この間佐藤君が声をかけて来た際に陽次郎の元に駆けて来たこだ。
「あー鈴木さん。てか資料画像がツーショ」
「未だに好きなんでしょ。あの時佐藤くんめっちゃ陽次郎睨んでたし」
「んーでも鈴木さんて…」
何か言いかけてふとこちらを向いた陽次郎に私は首を傾げた。
「佐藤君は月子に具体的にどうしろって?」
「『若竹先輩のこと誘惑するなり、色目を使うなりなんとか彼女から引き離すことはできないんですか』って言われた」
「ほう…赤子に重量挙げを強要するようなもんだな」
「赤子のポテンシャルにもよるっしょ、なんでも否定する姿勢はよくない…いやさすがに赤子に重量挙げは無理だろ、たとえが悪すぎる」
「上腕二等筋がたくましい赤子をみたことないもんな」
「それはオカルト掲示板でも見かけたことないわ」
焼きそばパンを食べ終わった陽次郎はぺろりと指を舐めながら「だろうな」と呟いた。
そして紙パックを持った手でこちらを指した。
「なんで月子にそんなことを?」
「ずっと一緒にいるから本妻なんですよね?て言われた。江戸時代の大名レベルの捉え方されて困ったわ」
「本妻ね」
唇をとがらせてそう呟いた後、陽次郎は手を伸ばして私の髪を一房すくった。
そのまま髪を指に巻き付ける。
「じゃあ、やってみる?」
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