【完結】傷アリ令嬢と馬鹿にされてきましたが、真の価値には気づいていないみたいですね

早乙女らいか

文字の大きさ
11 / 28

11話 侯爵様は変わっています

しおりを挟む
「こ、ここが研究所ですか」

 ディゼ様に案内された先は私が所有していた畑よりも更に広い農園。
 生えているもの全てが薬草だ……凄い。

 そこでは職員?らしき人達が農園の周りでサラサラと何かを書いていては歩いてを繰り返していた。
 
「こっちだよ」
「え? あぁ、はい……」 

 更に着いていった先にあった建物。 
 そこでは衝撃的な光景が広がっていた。

「っ!? まさかこれ全部……」
「そう、ここはポーションを研究・開発している場所だよ」

 いくつもの試験管に様々な色のポーションが入っている。
 職員が試験管の中に薬草やよく分からない物を合成しては成分を調べている。
 
(ポーションにここまで力を入れるなんて……想像以上だわ)

 ポーションは軽い傷を治す程度で、そこまで効果が高い訳では無い。
 なのに、そのポーションにのめり込んで、自分で研究室まで作ってしまうだなんて。

 暇つぶし代わりに始めた私とは大違いね……
 少し場違いな気もする。 
 
「気楽にして。ここでは君の立場を気にする人はいないからさ」
「そう言われましても……元とはいえ貴族令嬢だった私が馴染めますか?」
「大丈夫だよ。ここはノエルみたいに複雑な立場の子も多いから」

 静かに笑いながら、ディゼ様は私の肩にポンと手を置く。
 
「……わかりました」

 自信はないけど、せっかく与えてくれたチャンス。
 商人との取引だけでは不安な事も多いし、色んな事にチャレンジしなくちゃ。

 ディゼ様の期待に応えようと私は決心した。

「それにしてもあのオレンジポーションは一体どうやって作っているんだ? よければ教えてほしいんだけど」
「あぁ、あれは簡単ですよ。領地のオレンジを肥料にしたハイポーション用の薬草に子牛のミルクと魔力を混ぜて……」
「え?」

 ディゼ様が目を大きく開けて驚く。

「「「え?」」」

 ちょうど私達の話を盗み聞きしていた職員も同じように驚く。

「あ、あの……ディゼ様?」
「そうか、肥料か……ハイポーション用の薬草にアレンジを加えるのは今まで試したけど、まさか土地由来のオレンジとは想定外だった」
「もしかしたら各地方の土で薬草の育ち方に変化が現れるのでは!?」
「これは肥料から何から何まで徹底的に検証しないと……」

 ディゼ様や職員達が急に慌ただしくなる。
 そんなにとんでもない事を言ったの?

「えっと、何がどうなっているのやら」
「あぁごめん。ノエルを置いてしまっていたね」

 まあオレンジポーションは私の想像以上に広まっている。
 その材料がありふれた物だと分かれば騒ぎもする……かしら?

「そうだ。教えてくれたお礼にノエルに嬉しいお知らせを伝えよう」
「嬉しいお知らせ?」

 やけに上機嫌になったディゼ様から一つお知らせが。

「多分だけど、マゼンは近いうちに大変な事になると思うよ」
「マゼン? あぁ……なるほど」

 あのマゼンが大変なことになるという知らせ。
 それが何故かというのは私でも理解していた

 だってそのために色んな種を撒いたんですもの。
 花が開くのは意外と早いみたい。

 植物と違って、人間は短い時間で色んな事が動くからね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

悪役令嬢、辞めます。——全ての才能を捨てた私が最強だった件

ニャーゴ
恋愛
「婚約破棄だ、リリアナ!」 王太子エドワードがそう宣言すると、貴族たちは歓声を上げた。 公爵令嬢リリアナ・フォン・クラウスは、乙女ゲームの悪役令嬢として転生したことを理解していた。 だが、彼女は「悪役令嬢らしく生きる」ことに飽きていた。 「そうですか。では、私は悪役令嬢を辞めます」 そして、リリアナは一切の才能を捨てることを決意する。 魔法、剣術、政治力——全てを手放し、田舎へ引きこもる……はずだった。 だが、何故か才能を捨てたはずの彼女が、最強の存在として覚醒してしまう。 「どうして私、こんなに強いの?」 無自覚のままチート能力を発揮するリリアナのもとに、かつて彼女を陥れた者たちがひれ伏しにくる。 元婚約者エドワードは涙ながらに許しを請い、ヒロインのはずの少女は黒幕だったことが判明し、処刑。 だが、そんなことよりリリアナは思う。 「平穏に暮らしたいんだけどなぁ……」 果たして、彼女の望む静かな生活は訪れるのか? それとも、新たな陰謀と戦乱が待ち受けているのか——!?

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

reva
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

能ある妃は身分を隠す

赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。 言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。 全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。

気がついたら乙女ゲームの悪役令嬢でした、急いで逃げだしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 もっと早く記憶を取り戻させてくれてもいいじゃない!

処理中です...