17 / 28
17話 真に相応しい貴族とは
しおりを挟む
「ガロン辺境伯に追い出されたんだろう? 僕と一緒に頭を下げれば地位もお金も何もかも取り戻せる!! そして僕との素晴らしい時間もだ!!」
「え……あ……」
マズい。
ここまでだとは想定していなかった。
あまりにも酷すぎる態度に言葉が出てこない。
というかかける言葉もない。
「まずはノエルに対する謝罪から、ではないでしょうか? ファニング家の関係者としてお二人の事情を把握している以上、マゼン伯爵の都合だけでお渡しするワケにはいきません」
エリスさんの言葉で我に返る。
そうだ、今必要なのはマゼンの謝罪と誠意。
向こうに戻る気なんて微塵もないけど、最低限のマナーさえしてくれたら何かしら考えてやってもいい。
上から目線で申し訳ないけど、貴方がした事は許せないし怒っているのよ。
「傷アリに謝罪する価値はないだろ? こちらはヴァーレイン家と結婚”させてやってる立場”だぞ!!」
だから貴方がしていい態度ではない。
それすら分からないなんて……
「マゼン様、私は貴方と再婚する気はしません。後、そちらに戻る気もありませんので」
指摘も説教もしない。
伝えるのは私の思いと事実のみ。
何を言っても直さないと、私は諦めているから。
「ふざけるなぁ!!」
「っ!!」
「ノエル!!」
そんな私の態度がよほど頭に来たのだろう。
マゼンは怒りに任せて、近くに落ちていた小石を私に向けて投げつけた。
「額から血が……今すぐ手当するからじっとしてて」
「大丈夫です。今更傷が増えた所で変わりませんから」
「そういう問題じゃないって。ほら」
小石は私の額に当たったらしい。
ジンジンとした痛みが続くが、目に傷を負った頃に比べれば大した事ない。
なのにエリスさんは綺麗なハンカチを使ってまで私の手当てをしてくれる。
本当に優しい人だ。
「女としての価値がない癖にイキがりやがって!! お前を拾ってやってる僕に感謝くらいしたらどうなんだ!!」
「貴様!! それ以上の愚行は当主様が許さんぞ!!」
「あぁうるさい!! どいつもこいつも僕に意見しやがって!!」
うるさいのは誰ですか。
一番愚かなのは誰ですか。
誰も貴方の言葉に耳を傾けない。
貴方の行動を正しいとも思わない。
ただ愚か者が一人いるだけ。
「ノエルゥウウウウウウウウウウ!!」
何も知らない子供のように叫び続けるマゼン。
強引に追い出したいが、ここにはマゼンと対等に並べられるだけの地位を持つ人間がいない。
私もお父様から追い出されたから、辺境伯としての地位は実質ないようなもの。
「うるさいのは貴方です……」
「何だと?」
誰かこのうっとおしい男を黙らせて。
その願った心が私を動かす。
「婚約破棄した今、貴方と私には一切関係がない!! 迷惑なその口を閉じてください!!」
言った、言ってしまった。
ここまでしてしまえば、小石どころでは済まないだろう。
でも私の心は妙にすっきりしていた。
やりきった、と。
「貴様ァアアアアアアア!!」
「っ!! ノエル!!」
「エリスさん!?」
マゼンが腰の剣を抜く。
その瞬間、エリスさんが私に覆いかぶさった。
一瞬だけ止まった時間の中で、マゼンを身体で止めようとする門番と目をつぶる必死なエリスさんの姿が見えた。
本当に優しい人ばかり。
でも、私の為に傷つくのは……耐えられない。
グサッ!!
「そこの愚かな貴族よ、何をしている」
「っ!?」
マゼンの足元に一本の矢が突き刺さる。
矢が飛んできた方向を見るとそこには……
「ディゼ様……?」
弓を構えたディゼ様の姿がいた。
「え……あ……」
マズい。
ここまでだとは想定していなかった。
あまりにも酷すぎる態度に言葉が出てこない。
というかかける言葉もない。
「まずはノエルに対する謝罪から、ではないでしょうか? ファニング家の関係者としてお二人の事情を把握している以上、マゼン伯爵の都合だけでお渡しするワケにはいきません」
エリスさんの言葉で我に返る。
そうだ、今必要なのはマゼンの謝罪と誠意。
向こうに戻る気なんて微塵もないけど、最低限のマナーさえしてくれたら何かしら考えてやってもいい。
上から目線で申し訳ないけど、貴方がした事は許せないし怒っているのよ。
「傷アリに謝罪する価値はないだろ? こちらはヴァーレイン家と結婚”させてやってる立場”だぞ!!」
だから貴方がしていい態度ではない。
それすら分からないなんて……
「マゼン様、私は貴方と再婚する気はしません。後、そちらに戻る気もありませんので」
指摘も説教もしない。
伝えるのは私の思いと事実のみ。
何を言っても直さないと、私は諦めているから。
「ふざけるなぁ!!」
「っ!!」
「ノエル!!」
そんな私の態度がよほど頭に来たのだろう。
マゼンは怒りに任せて、近くに落ちていた小石を私に向けて投げつけた。
「額から血が……今すぐ手当するからじっとしてて」
「大丈夫です。今更傷が増えた所で変わりませんから」
「そういう問題じゃないって。ほら」
小石は私の額に当たったらしい。
ジンジンとした痛みが続くが、目に傷を負った頃に比べれば大した事ない。
なのにエリスさんは綺麗なハンカチを使ってまで私の手当てをしてくれる。
本当に優しい人だ。
「女としての価値がない癖にイキがりやがって!! お前を拾ってやってる僕に感謝くらいしたらどうなんだ!!」
「貴様!! それ以上の愚行は当主様が許さんぞ!!」
「あぁうるさい!! どいつもこいつも僕に意見しやがって!!」
うるさいのは誰ですか。
一番愚かなのは誰ですか。
誰も貴方の言葉に耳を傾けない。
貴方の行動を正しいとも思わない。
ただ愚か者が一人いるだけ。
「ノエルゥウウウウウウウウウウ!!」
何も知らない子供のように叫び続けるマゼン。
強引に追い出したいが、ここにはマゼンと対等に並べられるだけの地位を持つ人間がいない。
私もお父様から追い出されたから、辺境伯としての地位は実質ないようなもの。
「うるさいのは貴方です……」
「何だと?」
誰かこのうっとおしい男を黙らせて。
その願った心が私を動かす。
「婚約破棄した今、貴方と私には一切関係がない!! 迷惑なその口を閉じてください!!」
言った、言ってしまった。
ここまでしてしまえば、小石どころでは済まないだろう。
でも私の心は妙にすっきりしていた。
やりきった、と。
「貴様ァアアアアアアア!!」
「っ!! ノエル!!」
「エリスさん!?」
マゼンが腰の剣を抜く。
その瞬間、エリスさんが私に覆いかぶさった。
一瞬だけ止まった時間の中で、マゼンを身体で止めようとする門番と目をつぶる必死なエリスさんの姿が見えた。
本当に優しい人ばかり。
でも、私の為に傷つくのは……耐えられない。
グサッ!!
「そこの愚かな貴族よ、何をしている」
「っ!?」
マゼンの足元に一本の矢が突き刺さる。
矢が飛んできた方向を見るとそこには……
「ディゼ様……?」
弓を構えたディゼ様の姿がいた。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
悪役令嬢、辞めます。——全ての才能を捨てた私が最強だった件
ニャーゴ
恋愛
「婚約破棄だ、リリアナ!」
王太子エドワードがそう宣言すると、貴族たちは歓声を上げた。 公爵令嬢リリアナ・フォン・クラウスは、乙女ゲームの悪役令嬢として転生したことを理解していた。 だが、彼女は「悪役令嬢らしく生きる」ことに飽きていた。
「そうですか。では、私は悪役令嬢を辞めます」
そして、リリアナは一切の才能を捨てることを決意する。 魔法、剣術、政治力——全てを手放し、田舎へ引きこもる……はずだった。 だが、何故か才能を捨てたはずの彼女が、最強の存在として覚醒してしまう。
「どうして私、こんなに強いの?」
無自覚のままチート能力を発揮するリリアナのもとに、かつて彼女を陥れた者たちがひれ伏しにくる。
元婚約者エドワードは涙ながらに許しを請い、ヒロインのはずの少女は黒幕だったことが判明し、処刑。
だが、そんなことよりリリアナは思う。
「平穏に暮らしたいんだけどなぁ……」
果たして、彼女の望む静かな生活は訪れるのか? それとも、新たな陰謀と戦乱が待ち受けているのか——!?
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
聖女はただ微笑む ~聖女が嫌がらせをしていると言われたが、本物の聖女には絶対にそれができなかった~
アキナヌカ
恋愛
私はシュタルクという大神官で聖女ユエ様にお仕えしていた、だがある日聖女ユエ様は婚約者である第一王子から、本物の聖女に嫌がらせをする偽物だと言われて国外追放されることになった。私は聖女ユエ様が嫌がらせなどするお方でないと知っていた、彼女が潔白であり真の聖女であることを誰よりもよく分かっていた。
婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜
夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」
婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。
彼女は涙を見せず、静かに笑った。
──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。
「そなたに、我が祝福を授けよう」
神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。
だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。
──そして半年後。
隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、
ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。
「……この命、お前に捧げよう」
「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」
かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。
──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、
“氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる