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幼児期
豊、目撃する。
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それは幻想的な光景だった。
遥の手から舞い上がってゆく光が まるで龍のようで……。
ああ、言い伝えは本当だったんだ。
昔から、母が、父が、祖母が、祖父が話して聞かせてくれた。
『泉より現れし龍の化身が夜空へ飛び立つ時、闇夜の神子が覚醒する』と……。
光が余韻を残しながら淡く消えてゆく。
「な、なんなんですの!?」
遥が戸惑いながら目の前の少年に声をかける。
が、返事はなく少年は崩れるように倒れた。
「フライツさま!?」
「触ったらダメだ!!」
慌てて駆けよる。
「お父様!?」
「頭を打ったかもしれない!遥、悪いけど誰か人を呼んできて」
「は、はい!!」
走り去る娘の後ろ姿を横目に少年を見つめる。
言い伝えが本当なら娘の、遥の人生は過酷なものになるな……。
内に もう一人の人格を住まわせる娘を思い、それもまた運命なのかと豊は ため息をついた。
知らせを聞いた親族は皆、夕飯どころではなく、闇夜の神子の覚醒を喜び、目覚めるのを待っていた。
「俺たちの代で現れるなんて夢みたいだな!!」
「本当だわ!!ずっと聞かされていたけれど半信半疑だったもの」
熱に浮かされたように賑わう。
「しかし、龍の受け皿が遥ちゃんだったとはね~」
少しバカにしたような含みのある伯父の言葉に視線を向ける。
「それは、どういう意味ですか?」
「あ、いや。龍の受け皿は絶世の美女だったと書かれていたからね~」
「僕の遥は可愛いですよ」
「あ、いや。まぁ、そうだね~」
へらへらと笑いながら部屋を出ていった。
「お父様、龍の受け皿とは なんなんですの?」
可愛い遥が小首をかしげて聞いてきた。
「……大昔にね、僕たちの先祖が村に悪さをする龍を退治して、それを己の魂に封印したんだよ」
「まぁ!!」
他人事のように驚く遥。
「受け皿の能力が強ければ強いほど龍をコントロールできるとかで……」
「まぁ!!それは とても素晴らしいですわね!!」
「はたで見てる限りはね……」
「?」
そっと遥を抱きしめる。
「お、お父様?」
いつの間にか父と呼んでくれるようになった もう一人の娘。
「どんな時でも僕たちは君の味方だからね」
「それは嫌というほど分かっていますわ」
ふふふと無邪気に笑う その顔を見つめ、もしもの時は連れて逃げる覚悟をする。
「お待たせいたしました」
良子に連れられて先程の少年がやってきた。
「体はもう大丈夫なのですか?」
母、茜が問う。
「……はい」
茜の横に座らされ、少しオドオドしながら下を向く少年。
「こちらは竜王崎グループ現 総帥のご子息、下平林 忍さんです」
「は、初めまして」
ぺこりと頭を下げる。
「驚くべきことですが、我が一族が待ち望んでいた『闇夜の神子』が現れました。それがこの忍さんです。急なことですが『龍の受け皿』である遥さんと二人、簡易的ではありますが お披露目の義をしたいと思います。遥さん、こちらへ」
「は、はい」
いきなり呼ばれ、僕を振り返りながら母の横に座る。
「では、これより二人のお披露目の義、ならびに婚約の義を……」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
母の言葉を遮るように忍くんが立ち上がる。
「婚約なんて聞いてないし!!」
「お父上の許可は いただいておりますよ」
「はっ!?」
信じられないと顔に書く。
まぁ確かに急だからね。
元来 闇夜の神子と龍の受け皿は一心同体なのだと古文書に書いてある。
男女なら夫婦に、同性なら夫婦よりと硬い絆で。
「それは絶対 結婚しなきゃならないんですか!?この時代に!?」
「……いつの時代も上に立つものの婚姻は個人で決められるものでは ありませんよ?」
「そ、それは……」
ハイテクの進んだ今の時代であっても政略結婚というものは存在する。
「まだ お二人は若いですからね、ゆっくり愛を育んでいくのも悪くないですよ」
「子供だからって そんな簡単に!!もっと違う方法はないんですか!?」
怒りで我を忘れつつある忍くんが食い下がる。
遥……。
蚊帳の外で遥が泣きそうな顔をして下を向いていた。
遥だって突然のことに戸惑ってるのに向こうだけ被害者のように騒ぎ立てて……。
「母さ……!!」
抗議しようと立ち上がる。
が、それを有無を言わせない圧力で制される。
「習わしとして夫婦にと記載されてますが、必ずしも夫婦じゃなきゃいけない訳では ありません。ただ、その場合、闇夜の神子には我が一族の者を そばに置いてもらわなければ なりません」
「……それは誰でもイイの?」
「通常なら龍の受け皿である遥さん以外 考えられませんが、よろしいですよ?」
「なら…あの子がイイ」
そう言って忍くんが指差した先には、正を抱っこしてあやしている凛子ちゃんがいた。
遥の手から舞い上がってゆく光が まるで龍のようで……。
ああ、言い伝えは本当だったんだ。
昔から、母が、父が、祖母が、祖父が話して聞かせてくれた。
『泉より現れし龍の化身が夜空へ飛び立つ時、闇夜の神子が覚醒する』と……。
光が余韻を残しながら淡く消えてゆく。
「な、なんなんですの!?」
遥が戸惑いながら目の前の少年に声をかける。
が、返事はなく少年は崩れるように倒れた。
「フライツさま!?」
「触ったらダメだ!!」
慌てて駆けよる。
「お父様!?」
「頭を打ったかもしれない!遥、悪いけど誰か人を呼んできて」
「は、はい!!」
走り去る娘の後ろ姿を横目に少年を見つめる。
言い伝えが本当なら娘の、遥の人生は過酷なものになるな……。
内に もう一人の人格を住まわせる娘を思い、それもまた運命なのかと豊は ため息をついた。
知らせを聞いた親族は皆、夕飯どころではなく、闇夜の神子の覚醒を喜び、目覚めるのを待っていた。
「俺たちの代で現れるなんて夢みたいだな!!」
「本当だわ!!ずっと聞かされていたけれど半信半疑だったもの」
熱に浮かされたように賑わう。
「しかし、龍の受け皿が遥ちゃんだったとはね~」
少しバカにしたような含みのある伯父の言葉に視線を向ける。
「それは、どういう意味ですか?」
「あ、いや。龍の受け皿は絶世の美女だったと書かれていたからね~」
「僕の遥は可愛いですよ」
「あ、いや。まぁ、そうだね~」
へらへらと笑いながら部屋を出ていった。
「お父様、龍の受け皿とは なんなんですの?」
可愛い遥が小首をかしげて聞いてきた。
「……大昔にね、僕たちの先祖が村に悪さをする龍を退治して、それを己の魂に封印したんだよ」
「まぁ!!」
他人事のように驚く遥。
「受け皿の能力が強ければ強いほど龍をコントロールできるとかで……」
「まぁ!!それは とても素晴らしいですわね!!」
「はたで見てる限りはね……」
「?」
そっと遥を抱きしめる。
「お、お父様?」
いつの間にか父と呼んでくれるようになった もう一人の娘。
「どんな時でも僕たちは君の味方だからね」
「それは嫌というほど分かっていますわ」
ふふふと無邪気に笑う その顔を見つめ、もしもの時は連れて逃げる覚悟をする。
「お待たせいたしました」
良子に連れられて先程の少年がやってきた。
「体はもう大丈夫なのですか?」
母、茜が問う。
「……はい」
茜の横に座らされ、少しオドオドしながら下を向く少年。
「こちらは竜王崎グループ現 総帥のご子息、下平林 忍さんです」
「は、初めまして」
ぺこりと頭を下げる。
「驚くべきことですが、我が一族が待ち望んでいた『闇夜の神子』が現れました。それがこの忍さんです。急なことですが『龍の受け皿』である遥さんと二人、簡易的ではありますが お披露目の義をしたいと思います。遥さん、こちらへ」
「は、はい」
いきなり呼ばれ、僕を振り返りながら母の横に座る。
「では、これより二人のお披露目の義、ならびに婚約の義を……」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
母の言葉を遮るように忍くんが立ち上がる。
「婚約なんて聞いてないし!!」
「お父上の許可は いただいておりますよ」
「はっ!?」
信じられないと顔に書く。
まぁ確かに急だからね。
元来 闇夜の神子と龍の受け皿は一心同体なのだと古文書に書いてある。
男女なら夫婦に、同性なら夫婦よりと硬い絆で。
「それは絶対 結婚しなきゃならないんですか!?この時代に!?」
「……いつの時代も上に立つものの婚姻は個人で決められるものでは ありませんよ?」
「そ、それは……」
ハイテクの進んだ今の時代であっても政略結婚というものは存在する。
「まだ お二人は若いですからね、ゆっくり愛を育んでいくのも悪くないですよ」
「子供だからって そんな簡単に!!もっと違う方法はないんですか!?」
怒りで我を忘れつつある忍くんが食い下がる。
遥……。
蚊帳の外で遥が泣きそうな顔をして下を向いていた。
遥だって突然のことに戸惑ってるのに向こうだけ被害者のように騒ぎ立てて……。
「母さ……!!」
抗議しようと立ち上がる。
が、それを有無を言わせない圧力で制される。
「習わしとして夫婦にと記載されてますが、必ずしも夫婦じゃなきゃいけない訳では ありません。ただ、その場合、闇夜の神子には我が一族の者を そばに置いてもらわなければ なりません」
「……それは誰でもイイの?」
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