悪役令嬢が転生してきました

冷暖房完備

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幼児期

良子、思案する。

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長い、長い廊下を歩き、襖の前で声をかける。
「入りなさい」
「はい」
襖を開ける。
が、まだ誰もいない。
そのまま素通りして、もう一度 声をかけて襖を開けると親族が ずらりと座っていた。
「お久しぶりね。豊、茜さん」
「ご無沙汰しております」
「ほ、ほんじつは、おまねき、いただき、ありがとうございます」
さっきより更にガチガチの茜さんを皆様 微笑ましく見ておいでです。
「遥、お久しぶり。大きくなりましたね」
女当主である楓様が更に慈愛に満ちた目で見つめる。
「お、お久しぶりでござ、ます。お、ばあさ、ちゃま」
「ふふふ。可愛い挨拶ですね。さぁこちらへ来て もっと可愛い顔を見せてちょうだい」
豊おぼっちゃまに背中を押され、たどたどしく歩み寄る姿は まさに3歳の幼女。
 
それがまさか あんな……。
 
 
 
 
 
この家で母が住み込み家政婦をしていた流れで私も当たり前のように働きだしました。
幼少期から仲良くさせていただいていた大好きな楓様に仕えることは至福の喜びで ございました。
そして結婚を期に退職した私に乳母として働かないかと言ってくださったこと、愛らしい豊様のお世話をさせていただけたこと、身にあまる幸せであります。
 
そのせいで結婚生活は うまくいきませんでしたが、まったく問題ありません。
 
さてさて、話が少し それてしまいましたね。
私は皆様に お茶のおかわりなど お出しして斐甲斐しく働いております。
横目でちらりと盗み見ますと茜さんは まだまだカチコチです。
それを微笑ましく見つめる豊おぼっちゃまは本当に本当に茜さんを愛してらっしゃるのですね。
そんな二人を皆様も微笑ましく見つめておいでです。
そして楓様の腕には すやすやと眠る正さまと少し緊張のとけた遥さまが いらっしゃいます。
 
家政婦は見ざる言わざる聞かざるで ございます。
けれど決して見えないわけでも聞こえないわけでもないのです。
ですから先ほどの やり取りが耳に残ってしまって困惑いたしております。
 
遥さまに なにかあるのでしょうか?
 
流暢に挨拶をしてくださった可愛らしい姿、けれど茜さんの流した涙。
豊おぼっちゃまが「お姫ちゃん」と呼んだ真意は……?
 
これは楓様に お伝えした方が良いでしょうか。
 
不安げに見つめる先には とびきりの笑顔で話す遥さまと それを優しく見つめる楓さまが いらっしゃいました。
 
 
 
ああ、きっと大丈夫。
 
なぜか そう思いいたり、私は新しい お茶菓子を取りに厨房へ戻るのでした。
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