異世界に転生しました?

冷暖房完備

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武道家 編

No.2 モンスター討伐?

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「ん……」
いつの間に寝ていたのか、うっすらと目を開けると まだ誰も部屋には入っていないようだ。

 なるべく自然な形で目覚めたいなぁ。

のんびりと そんなことを思って目だけキョロキョロさせる。
ガラリとドアが開く。
チラリと そちらを見ると視界の片隅にいた看護師と目が合う。
少し笑って見せたが真っ青な顔をして部屋を出ていった。
 
あ、こりゃ大騒ぎになるな……。
 
心の中で覚悟を決めているとドタバタと数名の医師と看護師が入っていた。
「ムツキ君!!聞こえるかね!!ムツキ君!!」
耳元でうるさく叫ぶ白衣のオッサンに軽くウインクすることで意思を伝える。
「おお!!奇跡だ!!」
皆が一斉に歓喜の声を上げる。
 
奇跡、ね。…まぁ首の骨 折って死んでたらしいからな。
 
『良かったです、ムツキ様。あやうく葬儀所で燃やされるとこだったのでヒヤヒヤしてましたよ!!』
真上で汗を拭う仕草をする天使が言う。
 
マジか!!
 
喜ぶ面子の中に喪服を着た葬儀屋らしきオッサンが舌打ちするのが見えた。
オレは苦笑いを残し、気だるさに意識を手放した。
 
 
 
 
 
 
 
 
そこからは天使に頼んで徐々に治ったかのように偽装してもらい、首の骨が折れていた事実すら嘘だったかのような驚異的な回復力を見せて退院を迎えた。
皆に見送られ、顧問の車に乗り込むと後部座席に柔道部 主将がいた。
「 狩沢かりさわ先輩!!」
「ムツキ、退院おめでとう」
狩沢 俊樹としき 先輩はオリンピック金メダル候補と期待されている今一番強い男。
ガッチリした筋肉質な体に甘いマスクで向かうところ敵なしだ。
「ご迷惑おかけしました」
「迷惑なんてしてないが無事に退院できて良かった」
よしよしと頭を撫でる先輩に苦笑する。
 
オレもう大学生なんすけどね。
 
先輩とは中学からの付き合いだ。
いつも何かと気にかけて可愛がってくれる先輩はオレの憧れ。
 
オリンピックにはオレも先輩と一緒に出たい!!
二度目の命は大切にしよう。
 
『モンスターが現れた!!』
「え?ええ!?」
突然、頭の上の天使が叫ぶ。
『モンスター レベル9、武器ラブローズネイル、HPは……』
天使が何やら騒いでるがオレは一点を見つめて固まる。
車が大学の敷地内に停まる。
「ムツキ君、退院おめでとう」
車から降りると今年のミスにも選ばれた柔道部マネージャーがいた。
「沙耶たちが退院祝いしようって学食 借りてあるんだ。部員も集まってるから行こうぜ」
当たり前のように隣を歩く沙耶さや 先輩に モヤモヤとした気持ちが沸いてくる。
「天使…モンスターって沙耶先輩か?」
『ええ!!あの女です!!あの爪には呪術が施してありまして、あれで引っかかれると魅了されて意のままに操られてしまうのです!!』
 
魅了……。
怪しいまでの美貌や気を引くような仕草一つ一つが魅了の呪術だったのか。
 
「倒すって……どうやって?」
『ムツキ様は武道家ですから方法は1つです!!』
 
 一本背負い、か……。
いやしかし、例えモンスターだとしても女子供に手を上げるなど できない。
しかも相手は尊敬する狩沢先輩の彼女だ。

『なにを戸惑われているのです!!世界の平和はムツキ様に かかっているのですよ!!』

天使の言いたいことも分かる!!が本気にして殴りかかって、実はドッキリでした、なんてシャレにならん。

「まずオレのステータスは どうなってるんだ?」
『ステータス?』
 
おいおいおいおい!!
 
「こう、レベルがいくつとか装備が何とか……て、なんでオレのが説明してんだよ!!お前の役目だろ」
『これは失礼いたしました!!そ~ゆ~ことですね。ムツキ様のことは、この健康手帳に記載されていますので……』
「なんだよ健康手帳って!!」
『まぁまぁ落ち着いてください』
天使は慌ててペラリと1ページ目を開く。
 
武道家:ムツキ・J・近藤
レベル:10
防具:腐ったスエット上下
武器:なし
特技:音楽に合わせて戦う
 
「腐ったスエットってなんだよ!!」

ケンカ売ってんのか!!

『は、はい!!装備すると鼻をツン裂くダメージを与えられます!!特に脇から…』
「効能は聞いてねぇ!!」
 
失礼にも程があるだろ!!
 
『で、でも戦闘開始の瞬間からダメージを5Pも奪えますよ!!先手必勝スキルです!!』
 
やめてくれ!!

ちょっと泣きそうになりながら もっと ちゃんとした武器とかないのか!?と聞く。
『あ、これなんか どうですか?』
言うが早いか天使は異空間から真っ赤な手袋を取り出す。
『破壊王の手袋でございます。これを装備して世界を救ってください!!』
恥ずかしさも手伝って、天使に言われるがまま手袋をはめる。 
      





瞬間、体中が熱くなるのを感じた。
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