7 / 38
武道家 編
No.2 モンスター討伐?
しおりを挟む
「ん……」
いつの間に寝ていたのか、うっすらと目を開けると まだ誰も部屋には入っていないようだ。
なるべく自然な形で目覚めたいなぁ。
のんびりと そんなことを思って目だけキョロキョロさせる。
ガラリとドアが開く。
チラリと そちらを見ると視界の片隅にいた看護師と目が合う。
少し笑って見せたが真っ青な顔をして部屋を出ていった。
あ、こりゃ大騒ぎになるな……。
心の中で覚悟を決めているとドタバタと数名の医師と看護師が入っていた。
「ムツキ君!!聞こえるかね!!ムツキ君!!」
耳元でうるさく叫ぶ白衣のオッサンに軽くウインクすることで意思を伝える。
「おお!!奇跡だ!!」
皆が一斉に歓喜の声を上げる。
奇跡、ね。…まぁ首の骨 折って死んでたらしいからな。
『良かったです、ムツキ様。あやうく葬儀所で燃やされるとこだったのでヒヤヒヤしてましたよ!!』
真上で汗を拭う仕草をする天使が言う。
マジか!!
喜ぶ面子の中に喪服を着た葬儀屋らしきオッサンが舌打ちするのが見えた。
オレは苦笑いを残し、気だるさに意識を手放した。
そこからは天使に頼んで徐々に治ったかのように偽装してもらい、首の骨が折れていた事実すら嘘だったかのような驚異的な回復力を見せて退院を迎えた。
皆に見送られ、顧問の車に乗り込むと後部座席に柔道部 主将がいた。
「 狩沢先輩!!」
「ムツキ、退院おめでとう」
狩沢 俊樹 先輩はオリンピック金メダル候補と期待されている今一番強い男。
ガッチリした筋肉質な体に甘いマスクで向かうところ敵なしだ。
「ご迷惑おかけしました」
「迷惑なんてしてないが無事に退院できて良かった」
よしよしと頭を撫でる先輩に苦笑する。
オレもう大学生なんすけどね。
先輩とは中学からの付き合いだ。
いつも何かと気にかけて可愛がってくれる先輩はオレの憧れ。
オリンピックにはオレも先輩と一緒に出たい!!
二度目の命は大切にしよう。
『モンスターが現れた!!』
「え?ええ!?」
突然、頭の上の天使が叫ぶ。
『モンスター レベル9、武器ラブローズネイル、HPは……』
天使が何やら騒いでるがオレは一点を見つめて固まる。
車が大学の敷地内に停まる。
「ムツキ君、退院おめでとう」
車から降りると今年のミスにも選ばれた柔道部マネージャーがいた。
「沙耶たちが退院祝いしようって学食 借りてあるんだ。部員も集まってるから行こうぜ」
当たり前のように隣を歩く沙耶 先輩に モヤモヤとした気持ちが沸いてくる。
「天使…モンスターって沙耶先輩か?」
『ええ!!あの女です!!あの爪には呪術が施してありまして、あれで引っかかれると魅了されて意のままに操られてしまうのです!!』
魅了……。
怪しいまでの美貌や気を引くような仕草一つ一つが魅了の呪術だったのか。
「倒すって……どうやって?」
『ムツキ様は武道家ですから方法は1つです!!』
一本背負い、か……。
いやしかし、例えモンスターだとしても女子供に手を上げるなど できない。
しかも相手は尊敬する狩沢先輩の彼女だ。
『なにを戸惑われているのです!!世界の平和はムツキ様に かかっているのですよ!!』
天使の言いたいことも分かる!!が本気にして殴りかかって、実はドッキリでした、なんてシャレにならん。
「まずオレのステータスは どうなってるんだ?」
『ステータス?』
おいおいおいおい!!
「こう、レベルがいくつとか装備が何とか……て、なんでオレのが説明してんだよ!!お前の役目だろ」
『これは失礼いたしました!!そ~ゆ~ことですね。ムツキ様のことは、この健康手帳に記載されていますので……』
「なんだよ健康手帳って!!」
『まぁまぁ落ち着いてください』
天使は慌ててペラリと1ページ目を開く。
武道家:ムツキ・J・近藤
レベル:10
防具:腐ったスエット上下
武器:なし
特技:音楽に合わせて戦う
「腐ったスエットってなんだよ!!」
ケンカ売ってんのか!!
『は、はい!!装備すると鼻をツン裂くダメージを与えられます!!特に脇から…』
「効能は聞いてねぇ!!」
失礼にも程があるだろ!!
『で、でも戦闘開始の瞬間からダメージを5Pも奪えますよ!!先手必勝スキルです!!』
やめてくれ!!
ちょっと泣きそうになりながら もっと ちゃんとした武器とかないのか!?と聞く。
『あ、これなんか どうですか?』
言うが早いか天使は異空間から真っ赤な手袋を取り出す。
『破壊王の手袋でございます。これを装備して世界を救ってください!!』
恥ずかしさも手伝って、天使に言われるがまま手袋をはめる。
瞬間、体中が熱くなるのを感じた。
いつの間に寝ていたのか、うっすらと目を開けると まだ誰も部屋には入っていないようだ。
なるべく自然な形で目覚めたいなぁ。
のんびりと そんなことを思って目だけキョロキョロさせる。
ガラリとドアが開く。
チラリと そちらを見ると視界の片隅にいた看護師と目が合う。
少し笑って見せたが真っ青な顔をして部屋を出ていった。
あ、こりゃ大騒ぎになるな……。
心の中で覚悟を決めているとドタバタと数名の医師と看護師が入っていた。
「ムツキ君!!聞こえるかね!!ムツキ君!!」
耳元でうるさく叫ぶ白衣のオッサンに軽くウインクすることで意思を伝える。
「おお!!奇跡だ!!」
皆が一斉に歓喜の声を上げる。
奇跡、ね。…まぁ首の骨 折って死んでたらしいからな。
『良かったです、ムツキ様。あやうく葬儀所で燃やされるとこだったのでヒヤヒヤしてましたよ!!』
真上で汗を拭う仕草をする天使が言う。
マジか!!
喜ぶ面子の中に喪服を着た葬儀屋らしきオッサンが舌打ちするのが見えた。
オレは苦笑いを残し、気だるさに意識を手放した。
そこからは天使に頼んで徐々に治ったかのように偽装してもらい、首の骨が折れていた事実すら嘘だったかのような驚異的な回復力を見せて退院を迎えた。
皆に見送られ、顧問の車に乗り込むと後部座席に柔道部 主将がいた。
「 狩沢先輩!!」
「ムツキ、退院おめでとう」
狩沢 俊樹 先輩はオリンピック金メダル候補と期待されている今一番強い男。
ガッチリした筋肉質な体に甘いマスクで向かうところ敵なしだ。
「ご迷惑おかけしました」
「迷惑なんてしてないが無事に退院できて良かった」
よしよしと頭を撫でる先輩に苦笑する。
オレもう大学生なんすけどね。
先輩とは中学からの付き合いだ。
いつも何かと気にかけて可愛がってくれる先輩はオレの憧れ。
オリンピックにはオレも先輩と一緒に出たい!!
二度目の命は大切にしよう。
『モンスターが現れた!!』
「え?ええ!?」
突然、頭の上の天使が叫ぶ。
『モンスター レベル9、武器ラブローズネイル、HPは……』
天使が何やら騒いでるがオレは一点を見つめて固まる。
車が大学の敷地内に停まる。
「ムツキ君、退院おめでとう」
車から降りると今年のミスにも選ばれた柔道部マネージャーがいた。
「沙耶たちが退院祝いしようって学食 借りてあるんだ。部員も集まってるから行こうぜ」
当たり前のように隣を歩く沙耶 先輩に モヤモヤとした気持ちが沸いてくる。
「天使…モンスターって沙耶先輩か?」
『ええ!!あの女です!!あの爪には呪術が施してありまして、あれで引っかかれると魅了されて意のままに操られてしまうのです!!』
魅了……。
怪しいまでの美貌や気を引くような仕草一つ一つが魅了の呪術だったのか。
「倒すって……どうやって?」
『ムツキ様は武道家ですから方法は1つです!!』
一本背負い、か……。
いやしかし、例えモンスターだとしても女子供に手を上げるなど できない。
しかも相手は尊敬する狩沢先輩の彼女だ。
『なにを戸惑われているのです!!世界の平和はムツキ様に かかっているのですよ!!』
天使の言いたいことも分かる!!が本気にして殴りかかって、実はドッキリでした、なんてシャレにならん。
「まずオレのステータスは どうなってるんだ?」
『ステータス?』
おいおいおいおい!!
「こう、レベルがいくつとか装備が何とか……て、なんでオレのが説明してんだよ!!お前の役目だろ」
『これは失礼いたしました!!そ~ゆ~ことですね。ムツキ様のことは、この健康手帳に記載されていますので……』
「なんだよ健康手帳って!!」
『まぁまぁ落ち着いてください』
天使は慌ててペラリと1ページ目を開く。
武道家:ムツキ・J・近藤
レベル:10
防具:腐ったスエット上下
武器:なし
特技:音楽に合わせて戦う
「腐ったスエットってなんだよ!!」
ケンカ売ってんのか!!
『は、はい!!装備すると鼻をツン裂くダメージを与えられます!!特に脇から…』
「効能は聞いてねぇ!!」
失礼にも程があるだろ!!
『で、でも戦闘開始の瞬間からダメージを5Pも奪えますよ!!先手必勝スキルです!!』
やめてくれ!!
ちょっと泣きそうになりながら もっと ちゃんとした武器とかないのか!?と聞く。
『あ、これなんか どうですか?』
言うが早いか天使は異空間から真っ赤な手袋を取り出す。
『破壊王の手袋でございます。これを装備して世界を救ってください!!』
恥ずかしさも手伝って、天使に言われるがまま手袋をはめる。
瞬間、体中が熱くなるのを感じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる