72'

下郡ばった

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72’

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72’

1972年8月。それは僕にとって忘れられない夏になった。
その年の夏休み。僕はI県の祖母の家で数日を過ごしていて、帰宅するとそこに父はいなかった。
つまりは両親が離婚する何垢かの諸事情で母方の郷里に預けられていたという事だろう。
それも子供にとっては十分な一大事ではあるけど、その事ではなかった。

1972年8月。僕は煤けた柱に掛けられた日めくりを毎日眺めて暮らしていた。そのため、72年という年をよく覚えている。
祖母の家は結構大きな農家ですぐ近所にはイサミという従兄の家もあった。
イサミはそう・・・二つぐらい年上だったと思う。正確なところは憶えてはいない。
川釣りに行ったり、山歩きしたりイサミは得意になって僕を連れ回す。

「お前、東京から来たのか?」

「うん。」

「東京ってどんなとこだ?」

「人がいっぱい。」

一言で東京を言い表すのに僕はそう表現するしかなかった。
イサミは田舎の子供だから、にぎやかな東京が羨ましいのだろう。僕はその時そう思った。
もっと大きくなったら、イサミも東京に遊びにくればいいな。
きっとびっくりする事がたくさんあるのだろうな。
そんなある日イサミは「今夜は肝試しに行くぞ。」と言い出した。

「イヤだよ。怖いよそんなの。」

その当時、祖母のいる土地ではまだ土葬が残っていて、運悪く僕は埋葬に出くわしてしまったのだ。
鐘の音が打ち鳴らされて、棺を抱えた何人かの人達が墓地への坂を上っていく。
その光景はひどく不気味で香の匂いに混ざって微かに死臭がしたような気がした。
イサミの事だから墓地に行って墓を掘り返してみようなんて言い兼ねない。

「チンポコ見せてみろよ。」

「ヤダよ!何で?」

「ちゃんと付いてんだろ?」

その支離滅裂な意味がその時僕にはさっぱり分からなかった。
オトコオンナとはもう遊んでやらないと言われて、それなりのプライドを傷つけられた僕は結局そこに参加する事となった。
夜のおそらく11時頃だったと思う。僕は祖母の家をこっそり抜け出して懐中電灯を手に集合場所の農具置き場に向かった。
真っ暗な夜道をひとり、これで騙されて誰もいなかったらどうしようかと思った。
コバルト色の夜空に漆黒の山が佇む光景を今でも鮮明に憶えている。

「おう、来た来た!遅いぞ。」

そこにはイサミの他にもうあと二人。学校の友達らしい子がいた。
僕らは山すそにある神社の傍まで行くとそこからはなぜか参道を外れてまるでゲリラのように林の中を突き進む。
真っ暗な森で僕はすっかり心細く、無意識のうちに前を行くイサミのシャツを掴む。

山の神社には何度か祖母に連れられて来た事があった。
山道を登って鳥居をふたつ潜ると古い社がそこにある。
石灯篭には灯りがともされていて、それがまた山の社を薄暗く不気味に照らしていた。
これで肝試しもおしまいか。どこか僕はホッとしていたが、イサミはまだ奥の方へと突き進んでいった。

「もう始まってるな・・・」

暗い森の中でなぜかツバをつけた人差し指を立てて風を測ると彼はそう呟いた。

神社の裏手から細い林道が伸びている。
普段でも注意深く見ていなければ見落としそうな獣道だ。
やがてその先は低い階段になっていて上り詰めるところ青白く滝が見えた。
滝の傍らに何か祠(ほこら)のような建物があって決して煌々としたものではない微かな灯りがそこから漏れている。

人がいるのだ。幽霊屋敷や墓荒らしじゃなくて僕は本当に良かったと思った。
灯りが漏れるところ。通風孔のような窓によじ登り僕らはそっと中を覗き込んだ。

中は能舞台のような板張りにになっていて、裸の男女が数人それぞれに絡み合っているのが見えた。
座り込んだ態勢で体を揺すり合っていた者も床に躰を重ね合わせていた者もいたが三~四人の女が尻を向けて並び、その女達の尻に何かを塗りつけては男達が交代にそこに腰を押し付ける。
またしばらく腰を押し付けては隣の女の尻に移動して何かを塗りつける。
神事なのだろうけど、今にして思えば言わば乱交パーティーといったところだろう。

遠目に垣間見えて、女の股間はただ真っ黒な陰毛が茂ってるだけで何もない。ナマでみたおっぱいに興奮する。
土地に纏わる行事のひとつなのか、個人的な趣味の領域なのか今でもそれは分からない。
男も女も全裸だったが何か奇妙な面を着けていた。
記憶を思い起こすとちょうど「ひょっとこ」の面の鼻から下を切り取ったような半面だった。

男の裸体に跨った女は滑らかに体を上下に揺すっていた。
その傍らにひとりの男が近づいてきて、何かを囁いたようだ。
女は男のペニスを咥え込み、なおも体を上下に揺すっていた。
その横でまた別の女の白い脚の間に腰を押し付けていた男が、手を伸ばして女のおっぱいを触った。
それらはほんのり橙色を帯びた灯りの中で幻燈のように繰り広げられていた。
僕の記憶の中ではこの時、シャンシャンという鈴の音が始終聞こえていた気がするのだが、それを打ち鳴らす者の姿は見当たらなかった。

通風孔の桟に掴まって懸垂のような状態でぶら下がっていたのでそんなに長続きはしない。
ひとりが力尽きると順に地面に落下した。

「タグチの姉ちゃんが混じってたの分かったか?」

「タグチの姉ちゃん?どこにいた?」

「十六(そう言ったように思う)になったからいたはずだぜ。」

「あのおっぱいボンボンがそうか?」

帰路の途中、イサミ達は口々にそんな話をしていたけど僕には言葉も出なかった。
集合場所の農具小屋に戻ると僕らほそこで解散した。イサミの悪ガキ仲間はどこか違う方向に帰るようだ。
そこから祖母の家まではそう離れてはいない。イサミの家の方は少しあるが遠くはなかった。

「お前、男の約束が守れるか?」

「分かってるよ、ちゃんと。」

何か約束した覚えもないのだが、つまり今夜の事は誰にも言うなという事だろう。
言えるわけがない。大人のセックスを覗き見に行ったなんて。

「よし!じゃあ、明日ヤエミに会わせてやる。男の約束だぞ。」

男の約束・・・イサミはよくその言葉を口にした。
ヤエミってなんだろう?今度こそお化けか?僕はちょっと遠慮したい気分でともかく縁側から祖母の家に戻っていく。
いつか浅草に行った時に見た「覗きからくり」のような光景でこんな奇習があったなんて現実に思えない。
それからヤエミに会わなければ、きっと僕は思っていただろう。おかしな夢を見たのだと・・・



次の朝。イサミはずいぶんと早く誘いにやってきた。
それから僕らはバス通りまで出て、バスに乗るつもりなのかと思えばかなりの時間を歩いた。
シャツの胸元が汗でぐっしょりになり、ゴムのサンダルの下からアスファルトの熱が足の裏にまで伝わるような熱気を感じた。
ヤエミはずいぶん遠くにいるようだった。
おそらくは「八重美」とか「八恵美」とか書くのだろうけど、僕はその響きに薄気味悪さを感じていたのだった。
そんな女の子の名前を聞いた事がなかったからだろう。
不気味さとエロチック。そんなイメージの中におおよそ女の子の名前という発想がなかったのだ。

ヤエミというのはごく普通の女の子だった。
いや、どちらかと言えば普通じゃない。オカッパ頭で高飛車な口をきく。
具体的にいうなら「図々しい田舎娘」みたいで僕は彼女が好きになれそうにはなかった。
バス通りからまた田んぼを抜けて、その家に着くとヤエミは不在だった。
農家の裏側に回り、そこで脱穀機みたいなコンクリートミキサーみたいな機械を回していたおじさんにイサミは何か尋ねている。
よくは憶えていないが石垣に囲われた小川の沿って歩き、石橋を渡ったあたりで女の子がゴム飛び遊びをしているのが目に入った。
小さな女の子に混ざってひとり高学年の大きな子が腕を組んで立っていた。それがヤエミだ。

「お前、誰だ?どこから来た?」

そしてイサミが○○の婆さんの・・・とか、東京から来たとか割って説明する。
話の様子から、この子もどうやら親戚の子らしい。
ただ、どういった血縁になるのか知らないけどこんな子に会わせるためにわざわざここまで歩いて来たのか?
またなぜそれが誰にも言えない「男の約束」なのか、そこも不可解だった。

「だからコイツに見せてやろうと思ってよ。」

「バッカじゃろ!」

どうこう言いながら僕らが辿り着いたのは少し山間に入った一軒の廃屋だった。
雨戸が外れて落ち、中にはいつの物とも知れない新聞紙が散乱しているだけだった。
薄気味悪い。そこでこの子が霊を呼び起こすとか、そんな事が始まるのではないかと僕は怯む。
ヤエミは崩れて赤土がこぼれ出る壁にもたれ掛かると埃っぽい古畳に腰を下ろした。
イサミはそれを待っていたかのように傍らに屈み込むとヤエミの開いた脚の間に手を挿し込んだ。
照れ隠しなのだろうか二人ともはしゃぎ合ったように意味のない会話を大声で話している。

「だいぶん、ようなってきたか?」

「知らん。」

ヤエミは横を向いて両手を埃だらけで砂の浮いた畳につけていた。
その股間をイサミにゴシゴシと摩られている。
ヤエミはベージュでもなく黄土色でもないハーフパンツを着けていた。
デニムなどではない薄い生地で腰にはゴムが入っている洒落っ気のない服装で前開きがないところが女児用なのだろう。
立ち尽くすばかりの僕には異様な光景でなぜかそれを見ていて足が震えた。
女の子のアソコをゴシゴシ擦りつけるなんて、もちろん性的な興味は感じたけど、僕には何か女の子をおとなしくさせる方法みたいに見えた。

イサミはさっとハーフパンツをむしり取ってしまった。
踵を踏みつぶした靴はその拍子に片方脱げてしまい、ヤエミの足の裏は汚れて真っ黒だった。
そしてイサミは股間に顔を付けてそこを舐め始めた。
オマンコがどんな匂いがするのか分からなかったけど、ヤエミのは臭そうに思えた。
僕らがさっき訪れた時はイサミと何か話しながら嫌々の様子だったけど、ヤエミはそう嫌がってる様子に見られなかった。
ただ裸にされた股間を突き出してイサミの頭を眺めている。

「おい、お前もおっぱい吸ってやれよ。」

「えっ?」

傍に寄って恐る恐るおっぱいに触れてみた。
昨夜の女達みたいにぽよんと大きくはなかったけど柔らかな膨らみに触れる。
廃屋の片隅には古い箪笥がばったりと畳に倒れていて白く埃をかぶっている。

「ほら、こうすんだよ!」

シャツを捲り上げてイサミはヤエミのおっぱいに吸い付いた。
ちゅっ・・・じゅっ・・と音を立てながら、もう片方のおっぱいを乱雑に弄りまわした。
痛いのかヤエミはその手を払い除けたけど、その場から逃げ出す事もなくされるがままでいた。

シャツを剥きとられてしまいとうとうヤエミは真っ裸にされてしまった。
イサミは抱き起こすようにヤエミを立たせて古箪笥の上に寝かせた。
またイサミが大きく開脚させたオマンコにこびりつき、僕はヤエミのおっぱいを吸った。

「うっ・・ふ‥ぅ・・・」

埃だらけの古箪笥をミシミシと鳴らせながらヤエミは僕の肩を強く掴んで、もう片方の手で箪笥の角にしっかり掴まっている。
頭の中には昨夜見た一度に何人もの男を相手する女を思い浮かべた。

「なあ・・・」

イサミは膣孔に指を突っ込み、濡れた指先を見せて僕にもしてみろという。
柔らかく指先を握り込まれたみたいな感触があった。

「だろ?」

何に肯定していいのか僕には分からなかった。
ともかく「うん」と声なく相槌を打って、その瞬間ズボンを下げて尻を丸出しにしたイサミはドスンとヤエミの股間にぶつかった。
小学生が性交を試みるのにもっと長い時間やプロセスが存在したかも知れない。
だけど僕にはその一瞬のうちの出来事のように目に映って、ただその場に座り込んでいた。

ドン ドン ドン ドン

「ふっ・・あっ・・あぁっ・・・」

ヤエミのお尻が古箪笥の裏側を打つ音。
股間と股間がぶつかる音。
古箪笥が畳を擦る音。
早くなったり、ちょっと遅くなったりまた早く激しくなる。

何度目か遅い動きになるとイサミは息弾ませてそこから離れた。

「お前もやってみなよ。」

ヤエミは脚を閉じて、最初は嫌がったが結局、僕も同じようにそこにペニスを挿入してみた。
長いこと・・・長いことイサミがしたようにそこにペニスを擦りつけていたように思う。
中はぬるっとしていて、時々イサミが体と体の間を手で遮ってヤエミのおっぱいを揉んだ。
射精したのかそれに至らなかったのか僕には分からない。
ただ、長い時間ヤエミの股間にペニスを挿し込んで昨夜見た床の上で絡み合う男女の真似をしてみせた。



「紙持ってる?」

「持ってないよ。そこいらの新聞でいいじゃん。」

ヤエミは箪笥の上に屈み込んでイサミの声が聴こえてないみたいにおなかを押さえていた。
ポタリ・・・ポタリ・・・とヤエミの下から白い粘液が滴を残した。
ぷるんぷるんとお尻を振って、またいくつかの滴を振るい落とす。

「ねえ・・・小学生がしていい事?」

僕はほとんど放心しているみたいに、そんなような事をどちらにともなく訊いたように思う。

「いいのよ。いつもお兄ちゃんとしてる事だから。」

しばらく間をおいてヤエミがそう言った。そんなものなのだ。
 それから数日かした後に母が迎えにやってきて、僕はイサミにさよならいう間もなく東京の家に帰ってしまった。
中学生になるともう母の実家にはついて行かなくなる。イサミに会ったのは祖母が亡くなった時だった。

ずいぶんと身長が伸びてしまって、ずいぶんと無口で顔つきも違ってみえた。
祖母の家を訪れなくなってもヤエミの事は思い出すたび気にかかっていたけど、その時僕らはほとんど言葉さえ交わさずに別れた。
もちろんヤエミとはあれっきり一度も会う事はなかった。
今では彼女の顔さえもはっきりとは思い出せないけど、1974年8月。僕はこの夏をいつまでも忘れてはいない。



完 



unripe


本編は2017年にノクターンノベルズに投稿した作品です


僕が小学生で4年生だった頃に隣の家にシホちゃんという女の子が越してきた。
僕が育ったところはかなり田舎だったために、隣家といっても結構離れていた。
子供の足だったからどうだろう?坂道を300メートルも上がったところが、そのシホちゃんの住んでいた家だった。

そこには田崎さんというおばあさんがいて、まあ親しく付き合っていた。
おじいさんもいたけれど町の病院にいて、まだ亡くなる前の事だったと思う。
それでそのシホちゃんは一学年上の5年生だったと思う。
何か事情があって、ひとりおばあさんに預けられたみたいで、親からはシホちゃんの面倒をみるようにと言われていた。

そんなわけで僕は毎朝、学校に行く時に坂を上ってシホちゃんを迎えにいき帰る時もほとんど一緒だった。
そりゃ、学校では悪ガキ共に「アツアツ夫婦」などと揶揄われたが、さほど気にはならなかった。
親からも、それから親切な田崎のばあちゃんからも、再三に面倒をみるように言われていたのでそっちの方が大義だったのだろう。
学友といえど、結構家が離れているので学校行事とか地域の行事ぐらいにしか交流もなかったのだ。

確かに、シホちゃんが来てから友達が減った事は否めなかったけど・・・

思うに遠い家の友達と遊ぶより、隣の女の子と遊んでいる方が楽しかったのだろう。
以前の遊んでいた友達などとは、オトナでいう所のちょっと忙しくて疎遠になった程度の感覚でいた。

それでこのシホちゃんなのだが「お願い。なんでも言う事きくから」が口ぐせだったのだ。
都会で育ったのだろう。その言い回しと言葉には相当弱かった。
僕は僕なりに田舎の子供だから、女の子の前で頼れる男でありたかったのかも知れない。
これは本当にそう思う。

さて、この「なんでも言う事きくから」だけど、僕は実際に何かの代償を彼女に要求した事はなかったと思う。
もちろん、ケンカした事もあったのだからこれに対して多少の不履行はあったかも知れない。
ただ僕からは「代わりに何かして」と言った記憶は一度もなかった。
そして僕はただ一度、彼女に交換条件を差し出したのだった。

「一回だけ、オマンチョ見せてよ。」

女の子だからとか、もしくは僕はシホちゃんと結婚するんだとかそんな意識はあったと思う。
小学生も4年生ぐらいになると性意識は芽生えて当然だろう。
実はこれにはちょっとしたきっかけがあって、僕はどうしてもシホちゃんの性器を見てみたかった。
河原で流れを塞き止めて小魚を捕って遊んでいた時に彼女は急に帰りたいと言い出した事があったのだ。

「ちょっと待って、もうすぐ水を掻き出しちゃうから。」

そんな事が過去にあって、僕は兼がね思っていた願望をついに口にしてしまった。

 無論、彼女はイヤだ僕は遊びに夢中だった。シホちゃんは今すぐ帰ると言い出す。

「どうしたの急に?」

「あの・・・オシッコ・・・」

そこですればいいじゃないか。田舎の小4男子にとっては取るに足らない問題である。
ところがシホちゃんにとってはそうはいかない。

「見ないでね。」

致し方なく茂みに座り込むシホちゃんの後ろでふたつに分けて結わえた紙の分け目だけが見える。

ぶびっ・・ぶびぃ・・・

大きい方だったのだ。そりゃあ恥ずかしいだろう。
見るなと言われてもつい振り返るそこに音だけは微かに聞こえた。

「あの、紙もってない?」

「えっ?紙?・・・そのへんの葉っぱで・・・」

「いやぁよ!虫とかついてるし・・」

「じゃ、じゃあ川で洗っちゃえば。」

また「見ないで、あっち向いてて」と言われる。もちろん見る。
シホちゃん、上流で洗ったらその洗ったものが作ったダムの中に流れ込む。
僕はその水を手で掻き出して魚を捕るわけだがそんな事は全然気にならなかった。

ただ、その時に盗み見てしまった彼女の白いお尻が脳裏に焼き付いて離れようとしない。
と言った。
イヤだと言い続けたけど、何度か頼んでるうちにその理由が判明したのだった。

「ね。汚いでしょ?だから見せたくなかったのよ。」

シホちゃんのそこには薄っすらとではあったけど、くっきりと陰毛が生えていたのだ。
その下はもっこりと小さく割れている。
女性器を見られる事自体はそれほどイヤではなかったという。
後におっぱいも見せてくれたし、吸わせてもくれた。
ただ、陰毛を見られるのがどうにも恥ずかしかったのだ。
その頃の僕はまだつるんつるんだった。もちろんこれも見せてあげた。

「匂い嗅いでみてもいい?」

「えー!?臭いわよ!」

シホちゃんは自分の股間に手をあてて擦るとその匂いを嗅いで「くさぁ」と呟いた。
どのくらい臭いのか、ここは強引に鼻先を擦りつけてしまった。
確かにアンモニアっぽい匂いはしたような気がするが、顔を背けるほどの臭いものではなかった。
収穫祭だか何だかで山の中腹ほどにある、年に一度だけ使われるお堂の中でだった。

エスカレートしてくると当然の事ながら、それなりにセックスに発展する。
そんな事は誰からも教わってはいないものの、不思議とそれなりに覚えていった。
シホちゃんが気持ちよくなるようにおっぱいも吸ってみる。
舌先を伸ばしてレロレロとくすぐってもみる。
オマンコも舐めまわす。そうすると入れ易くなるし、愛のようなものも表現できる。
古びた床板の上でシャツの下から捲り出したチッパイが可愛く見えたのを今でも覚えている。

「うん・・うん・・気持ちいい・・・」

 僕のペニスは皮を被っていた。
仮性とか、そういうんじゃなくて朝顔の蕾のように先端がくるりと尖っている。
シホちゃんの陰毛はまだ疎らでおっぱいも小さい。
僕らはまだ子供だったのだから、どんどん中で射精する。
遊んで飽きたらお堂でセックスして、それが済んだらまた何かして遊ぶ。
そうして暗くなり始める頃にはふたりとも、涼しい顔してそれぞれの家に帰るのだった。

「中に出したヤツ。ちょっと吐き出してみて。」

「えー!?どうやればいいのかなあ。」

後ろに手をついて、いわゆるM字開脚をしたシホちゃんが見慣れた性器を丸出しにして見せる。
僕はお堂の床に頬を着けて、そこを覗き込んだ。
割れ目の間から白い粘液が滲みだして、その姿を現した。
ぴゅん・・・と勢いよく飛び出るかと想像していたのである。
それは一滴、床に垂れ落ち薄土色に蹲るお尻の穴を伝って、そこで「ぷぅっ」と泡を噴いた。

「あはははは!」

「あはははは!」

数か月の後、シホちゃんは野崎の家からいなくなってしまった。
子供のクセにふたりしてセックスに明け暮れていた事が原因ではないらしい。
なぜならば、僕はその事について両親から、あるいは田崎のばあちゃんから咎められる事は一度もなかったのだから。
シホちゃんがどこかに行ってしまう日。彼女はごく普通に手を振った。
「また明日ね」というように何の感慨もない様子だった。
僕は悲しかったけど、やはりそのように手を振ってみせた。
それきり、彼女と会う事はなかった。

彼女の事はいまだに色々思い返す事はあるが、ひとつ思う事は彼女は女性器を見られる事よりも陰毛を見られる方が恥ずかしかったのだろう。
大人の女になる段階で言ってみれば、それは少女にとって異物だったのかも知れない。
河原で用を足している時、あるいはそれを洗う時。
普通ならばきっと、僕の方を向いていたように思うのだ。こっちを見られないように、あるいは音を聞かれない距離を取る・・・
そして初めてオマンコを見せてくれた時だって、彼女はご丁寧にその中身まで両手で開いてみせた。
思い返してみれば、なんとも不思議な女の子だった。




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