6 / 75
第一部 転生編
元転移転生魔術師、転移魔法を連発する 後編
しおりを挟む
「え……何を……キャア!」
ワシは、女騎士の衣服をめくってみた。膨らんだ胸の、乳首が見えないギリギリ辺りまで。彼女が恥ずかしそうに赤面していたが、それ所ではない。
「うわ……」
めくってみて確信したのじゃ。キズの多さと深さにの。
至る所に切りキズ、差しキズがついており、今も出血が止まっておらん。
特に腹部じゃ。かなり深いケガを負っておる。
「これはいかんの……。まずはキズ口を塞がねば……転移魔法――発動! いでよ……」
手を掲げ、即座に転移しようとする。
「――貼るだけ☆絆創膏!」
ワシが手に持ったのは、指くらいの大きさの貼りもの。
十枚程度はある。
「こ、今度は何を出したんだ……?」
「治療用の道具じゃ。粘着性があっての。テープともいうらしい。時間がないので、キズ口に貼らせてもらう」
「えっ、どういう……あっ……あっ」
さっそく、女騎士のキズ口に貼っていく。
一枚、二枚……。キズ口が広い箇所には、複数枚重ねていった。
「よし……よし……よし……。どうじゃサージャ。こヤツの様態は?」
『出血の停止を確認。それにともない、キズ口の塞がりを確認。絆創膏を外しても支障はないでしょう』
「は……塞がった……?」
サージャの説明に、疑問を口にした女騎士。
彼女自身の手で絆創膏を剥がす。すると確かに完治していた。
「キズ口が……無くなっている……?」
「成功じゃな。治療完了じゃ」
「そんな! ただ貼っただけじゃないか! それを一瞬で! あれだけのキズを跡形もなく治せるなんて、上級クラスの回復魔法でも考えられない!」
女騎士が自分の身体の変化に驚き、再び動揺してしまった。やれやれ、キズ口が塞がったからいいものを……。
まあ、言わんとする気持ちも、分からん訳ではない。
確かにワシから見ても、小さなテープを貼っただけでキズが完治するなどあり得ないと思う。
じゃが、この貼るだけ☆絆創膏は別じゃ。いや違う。
ワシの転移魔法で呼ばれた道具はみんな、強力な効果を宿すようになる。
包み☆ふろしきで突然女騎士を持ち上げられたのも、宴会☆着物☆帯を巻いただけで鎧を脱がせられたのも、全てに共通点がある。
異世界転移による影響というヤツじゃ。
ワシの魔法で、異世界【日本】から転移された時、実体を形成する影響で魔力を含んでいく。その恩恵によって、普通以上の効果が発揮できるようになるのじゃ。
まあ、普通の基準はたかしによるものじゃ。ワシは異世界【日本】に行った事がないからのぉ。
「驚くのも当然じゃろう。じゃが、病み上がりゆえに安静にしてほしい。話がしたいなら後で……」
『マスター、悪い知らせです。モンスターの集団が迫ってきました』
モンスターの集団?
女騎士をなだめようとした矢先にか?
『数は十匹。ゴブリン九匹、オーガ一匹。持っている武器は、ナイフと槍、オーガのみ棍棒。この秘密基地に近づいています』
「な……ゴブリンに……オーガだと……!」
サージャの警告を聞き、女騎士の表情が張り詰める。
そう言えば、こヤツ、オーガとゴブリンに襲われたと言っておった。まさかその連中が……?
「きっと、目的は私だ……。私にトドメを刺そうと迫ってきたんだ……」
『マスター。彼女のキズ口と、モンスターたちの武器の形状を照合するに、同一のものである確率は九十九パーセントです』
なるほど、その者たちは、女騎士という仕留め損ねた獲物を追いかけてきた、と言う訳じゃな。
そもそも、この近辺にオーガやゴブリンが出るなどあり得ぬ話。サージャの分析どおり、同一のモンスターで間違いないじゃろう。
やれやれ、今日は来客が多い一日じゃい。
「お主は休んでおれ。ワシが外に出て、文句を言ってくる」
「なっ……! 何を言っているんだ! バカなマネはやめろ!」
ワシを止めようとしておるのか、せっかく横になった上体を起こそうとしている。しかし肘が震えておる。疲労によるものか、恐怖によるものか。
「心配せんでええ。ちょちょいと出かけるだけじゃ。すぐ終わる。お主は布団の上で、安静にして休んでいればよい」
『マスターなら問題ありません。先ほど述べたモンスターが相手でも、九十九パーセントの確率で生き残るでしょう』
「いや……何をバカな事を……。君は幼女だろう! モンスターの集団を前に、問題ない……? そんな訳ないだろ! 君一人行かせる訳にはいかない! せめて私も……」
「あーもう、うるさい! これでも食っとけ!」
快復した訳でもないのに、立ち上がろうとする女騎士に、ワシはとうとうシビレを切らしてしまった。
具体的にどうしたかというと、ちゃぶ台の上に置いてあった食べかけのカップラーメンを食べさしたのじゃ。
「もが……! な、何……! ……う、うま……!」
「どうじゃ、美味しいじゃろう? 口の中が熱々でとろける食感に襲われるじゃろう? んでもって、しょっぱくて濃厚なスープが口内を覆っておるに違いない……」
ワシはカップラーメンから割り箸を取り出し、つかんだ麺を女騎士の口に無理やり入れてやった。ワシが食べた時に味わった感想を、口にしながら。
するとどうじゃろう。女騎士の険しい表情が、みるみる瓦解。美味しそうに脱力していくではないか。
「お、おいひい……! こんな、こんな美味なもの……貴族の晩餐会でも味わった事……にゃい……!」
麺をすすりながら感激しておる。
さて、こうなっては食べ終わるまで身動きはとれんじゃろう。
今度こそ、おとなしくしてもらうからの。
「さて行くぞ、サージャ。分析は任せる」
『はい。了解しましたマスター』
「ま、まへぇ! く……おいひすぎて、動けにゃいぃ……!」
箸を片手に、カップラーメンをすすり続ける女騎士は置いていく。
サージャを持って、ワシは秘密基地の外に向かっていった。
さて、今度はモンスターの軍団か。
ワシの転移魔法、今度は戦闘シーンで見せてやろう。
************************
【サージャ】≪『第三話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『マスターが次々と転移魔法を披露し、女騎士をまたたく間に治してしまいました』
【サージャ】≪『しかし、マスターの力はこうした支援に留まらなかったのです』
【サージャ】≪『そう、かつて妖精だったあの時、冒険心で故郷を飛び出し、道中モンスターに襲われ死にかけた私を助けるため戦い、命拾いさせてくれたように……』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
ワシは、女騎士の衣服をめくってみた。膨らんだ胸の、乳首が見えないギリギリ辺りまで。彼女が恥ずかしそうに赤面していたが、それ所ではない。
「うわ……」
めくってみて確信したのじゃ。キズの多さと深さにの。
至る所に切りキズ、差しキズがついており、今も出血が止まっておらん。
特に腹部じゃ。かなり深いケガを負っておる。
「これはいかんの……。まずはキズ口を塞がねば……転移魔法――発動! いでよ……」
手を掲げ、即座に転移しようとする。
「――貼るだけ☆絆創膏!」
ワシが手に持ったのは、指くらいの大きさの貼りもの。
十枚程度はある。
「こ、今度は何を出したんだ……?」
「治療用の道具じゃ。粘着性があっての。テープともいうらしい。時間がないので、キズ口に貼らせてもらう」
「えっ、どういう……あっ……あっ」
さっそく、女騎士のキズ口に貼っていく。
一枚、二枚……。キズ口が広い箇所には、複数枚重ねていった。
「よし……よし……よし……。どうじゃサージャ。こヤツの様態は?」
『出血の停止を確認。それにともない、キズ口の塞がりを確認。絆創膏を外しても支障はないでしょう』
「は……塞がった……?」
サージャの説明に、疑問を口にした女騎士。
彼女自身の手で絆創膏を剥がす。すると確かに完治していた。
「キズ口が……無くなっている……?」
「成功じゃな。治療完了じゃ」
「そんな! ただ貼っただけじゃないか! それを一瞬で! あれだけのキズを跡形もなく治せるなんて、上級クラスの回復魔法でも考えられない!」
女騎士が自分の身体の変化に驚き、再び動揺してしまった。やれやれ、キズ口が塞がったからいいものを……。
まあ、言わんとする気持ちも、分からん訳ではない。
確かにワシから見ても、小さなテープを貼っただけでキズが完治するなどあり得ないと思う。
じゃが、この貼るだけ☆絆創膏は別じゃ。いや違う。
ワシの転移魔法で呼ばれた道具はみんな、強力な効果を宿すようになる。
包み☆ふろしきで突然女騎士を持ち上げられたのも、宴会☆着物☆帯を巻いただけで鎧を脱がせられたのも、全てに共通点がある。
異世界転移による影響というヤツじゃ。
ワシの魔法で、異世界【日本】から転移された時、実体を形成する影響で魔力を含んでいく。その恩恵によって、普通以上の効果が発揮できるようになるのじゃ。
まあ、普通の基準はたかしによるものじゃ。ワシは異世界【日本】に行った事がないからのぉ。
「驚くのも当然じゃろう。じゃが、病み上がりゆえに安静にしてほしい。話がしたいなら後で……」
『マスター、悪い知らせです。モンスターの集団が迫ってきました』
モンスターの集団?
女騎士をなだめようとした矢先にか?
『数は十匹。ゴブリン九匹、オーガ一匹。持っている武器は、ナイフと槍、オーガのみ棍棒。この秘密基地に近づいています』
「な……ゴブリンに……オーガだと……!」
サージャの警告を聞き、女騎士の表情が張り詰める。
そう言えば、こヤツ、オーガとゴブリンに襲われたと言っておった。まさかその連中が……?
「きっと、目的は私だ……。私にトドメを刺そうと迫ってきたんだ……」
『マスター。彼女のキズ口と、モンスターたちの武器の形状を照合するに、同一のものである確率は九十九パーセントです』
なるほど、その者たちは、女騎士という仕留め損ねた獲物を追いかけてきた、と言う訳じゃな。
そもそも、この近辺にオーガやゴブリンが出るなどあり得ぬ話。サージャの分析どおり、同一のモンスターで間違いないじゃろう。
やれやれ、今日は来客が多い一日じゃい。
「お主は休んでおれ。ワシが外に出て、文句を言ってくる」
「なっ……! 何を言っているんだ! バカなマネはやめろ!」
ワシを止めようとしておるのか、せっかく横になった上体を起こそうとしている。しかし肘が震えておる。疲労によるものか、恐怖によるものか。
「心配せんでええ。ちょちょいと出かけるだけじゃ。すぐ終わる。お主は布団の上で、安静にして休んでいればよい」
『マスターなら問題ありません。先ほど述べたモンスターが相手でも、九十九パーセントの確率で生き残るでしょう』
「いや……何をバカな事を……。君は幼女だろう! モンスターの集団を前に、問題ない……? そんな訳ないだろ! 君一人行かせる訳にはいかない! せめて私も……」
「あーもう、うるさい! これでも食っとけ!」
快復した訳でもないのに、立ち上がろうとする女騎士に、ワシはとうとうシビレを切らしてしまった。
具体的にどうしたかというと、ちゃぶ台の上に置いてあった食べかけのカップラーメンを食べさしたのじゃ。
「もが……! な、何……! ……う、うま……!」
「どうじゃ、美味しいじゃろう? 口の中が熱々でとろける食感に襲われるじゃろう? んでもって、しょっぱくて濃厚なスープが口内を覆っておるに違いない……」
ワシはカップラーメンから割り箸を取り出し、つかんだ麺を女騎士の口に無理やり入れてやった。ワシが食べた時に味わった感想を、口にしながら。
するとどうじゃろう。女騎士の険しい表情が、みるみる瓦解。美味しそうに脱力していくではないか。
「お、おいひい……! こんな、こんな美味なもの……貴族の晩餐会でも味わった事……にゃい……!」
麺をすすりながら感激しておる。
さて、こうなっては食べ終わるまで身動きはとれんじゃろう。
今度こそ、おとなしくしてもらうからの。
「さて行くぞ、サージャ。分析は任せる」
『はい。了解しましたマスター』
「ま、まへぇ! く……おいひすぎて、動けにゃいぃ……!」
箸を片手に、カップラーメンをすすり続ける女騎士は置いていく。
サージャを持って、ワシは秘密基地の外に向かっていった。
さて、今度はモンスターの軍団か。
ワシの転移魔法、今度は戦闘シーンで見せてやろう。
************************
【サージャ】≪『第三話をお読みいただき、ありがとうございます』
【サージャ】≪『マスターが次々と転移魔法を披露し、女騎士をまたたく間に治してしまいました』
【サージャ】≪『しかし、マスターの力はこうした支援に留まらなかったのです』
【サージャ】≪『そう、かつて妖精だったあの時、冒険心で故郷を飛び出し、道中モンスターに襲われ死にかけた私を助けるため戦い、命拾いさせてくれたように……』
【サージャ】≪『それでは、次回をお楽しみに』
142
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる