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第1章 緋竜山編
2 テオドール、生い立ちを知る
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竜は姿を変えることが出来るので、いつかはみんなと同じ姿になれると、信じていたテオドール。
だが父竜から人間だと告げられ、目の前が真っ暗になってしまう。
立派な成竜になって、フレアと幸せになる夢も、潰えてしまった。
動揺を隠せない息子を諭すように父竜は、
「テオは人間だが、我々の大切な息子であることに、一片の疑いもない」
それは紛れもない事実である。
これまで親竜は、テオドールに惜しみない愛情を注いで、育ててきたのだ。
母竜は、テオドールを育てることになったいきさつを、話して聞かせた。
――10年前のある日。
母竜が飛んでいると、麓に広がる樹林から、人間の悲鳴が聞こえてきた。
その人間は赤子を抱えた女で、ゴブリンの集団に囲まれていた。
緋竜山周辺の村人は、火竜を竜神として崇めていたので、母竜は女を助けることにした。
母竜が咆哮で威嚇すると、蜘蛛の子を散らすように逃げ去るゴブリン。
地上に降り立った母竜は、女を恫喝するように、
「此処は魔物の領域ぞ。人間が踏み入るべき場所ではない。すぐに立ち去れ」
「竜神様。この子は魔力を持たずに生まれました。どうかお願いです。私の命を捧げますので、この子をお救いください」
「この世では魔力がなければ、生きながらえぬ。それが自然の摂理である。諦めるのだな」
「この子は、こんなにもやせ細り、いつ息絶えてもおかしはありません。それでも小さな手で、私の指を力の限り握りしめ、助けを求めているのです。命が尽きるまで、懸命に生きようとしているのに、私が諦めるわけにはいきません。親として、この子を産んだ責任があります」
その言葉には、母親としての強い意志が感じられ、嘘偽りがないのは明らかだった。
緋竜山の麓に広がる樹林には、多くの魔物が闊歩している。
その樹林に女が一人で踏み入るのは自殺行為であり、まさに命がけで我が子を救おうとしたのだ。
竜のもとへ辿り着く保証もないのに、一縷の望みに託したのである。
時に人間は利己主義に走り、他を蹂躙して家族さえも殺すことがある、卑しい種族だと母竜は思っていた。
だがその女は、命を投げ出して我が子を救おうとする、深い慈愛に満ちていたのだ。
なかなか人間も捨てたものではないと、女の願いを聞き入れた母竜は、赤子を引き取り育てることにした。
その話を聞いたテオドールは、女が母竜に喰われたのかもしれないと、不安に駆られた。
それを察した母竜は、優しい口ぶりで、
「心配はいらぬ。女は無事に樹林から出て行ったからの。テオが悲しむことを、妾がするわけなかろう」
「母ちゃん……」
テオドールは、嬉しさのあまり目を潤ませて、母竜に抱き着いた。
「そのあと女は、どうなったの?」
「さてね。今は何処でどうしているのやら、皆目見当もつかぬよ。まだ生きているのかもね。気になるのかい?」
生みの親の深い愛情を感じたテオドールは、会いたいという衝動に駆られ、そのことを親竜に伝えた。
息子が本気であると察した父竜は、いくつかの条件付きで願いを受け入れた。
だが父竜から人間だと告げられ、目の前が真っ暗になってしまう。
立派な成竜になって、フレアと幸せになる夢も、潰えてしまった。
動揺を隠せない息子を諭すように父竜は、
「テオは人間だが、我々の大切な息子であることに、一片の疑いもない」
それは紛れもない事実である。
これまで親竜は、テオドールに惜しみない愛情を注いで、育ててきたのだ。
母竜は、テオドールを育てることになったいきさつを、話して聞かせた。
――10年前のある日。
母竜が飛んでいると、麓に広がる樹林から、人間の悲鳴が聞こえてきた。
その人間は赤子を抱えた女で、ゴブリンの集団に囲まれていた。
緋竜山周辺の村人は、火竜を竜神として崇めていたので、母竜は女を助けることにした。
母竜が咆哮で威嚇すると、蜘蛛の子を散らすように逃げ去るゴブリン。
地上に降り立った母竜は、女を恫喝するように、
「此処は魔物の領域ぞ。人間が踏み入るべき場所ではない。すぐに立ち去れ」
「竜神様。この子は魔力を持たずに生まれました。どうかお願いです。私の命を捧げますので、この子をお救いください」
「この世では魔力がなければ、生きながらえぬ。それが自然の摂理である。諦めるのだな」
「この子は、こんなにもやせ細り、いつ息絶えてもおかしはありません。それでも小さな手で、私の指を力の限り握りしめ、助けを求めているのです。命が尽きるまで、懸命に生きようとしているのに、私が諦めるわけにはいきません。親として、この子を産んだ責任があります」
その言葉には、母親としての強い意志が感じられ、嘘偽りがないのは明らかだった。
緋竜山の麓に広がる樹林には、多くの魔物が闊歩している。
その樹林に女が一人で踏み入るのは自殺行為であり、まさに命がけで我が子を救おうとしたのだ。
竜のもとへ辿り着く保証もないのに、一縷の望みに託したのである。
時に人間は利己主義に走り、他を蹂躙して家族さえも殺すことがある、卑しい種族だと母竜は思っていた。
だがその女は、命を投げ出して我が子を救おうとする、深い慈愛に満ちていたのだ。
なかなか人間も捨てたものではないと、女の願いを聞き入れた母竜は、赤子を引き取り育てることにした。
その話を聞いたテオドールは、女が母竜に喰われたのかもしれないと、不安に駆られた。
それを察した母竜は、優しい口ぶりで、
「心配はいらぬ。女は無事に樹林から出て行ったからの。テオが悲しむことを、妾がするわけなかろう」
「母ちゃん……」
テオドールは、嬉しさのあまり目を潤ませて、母竜に抱き着いた。
「そのあと女は、どうなったの?」
「さてね。今は何処でどうしているのやら、皆目見当もつかぬよ。まだ生きているのかもね。気になるのかい?」
生みの親の深い愛情を感じたテオドールは、会いたいという衝動に駆られ、そのことを親竜に伝えた。
息子が本気であると察した父竜は、いくつかの条件付きで願いを受け入れた。
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