ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第1章 緋竜山編

3 テオドール、鍛錬を積む

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 父竜は、いくつかの条件付きで、テオドールの実母探しを許した。
 
 条件の1つ目は、盗賊や魔物などに襲われても、切り抜けられるように、身体を鍛えること。
 温室育ちのテオドールが、下界に降りれば盗賊や魔物に襲われて、命を落としかねないと考えたからだ。
 毎日テオドールに、切り立った岩壁を昇り降りさせて、基礎体力をつけさせた。
 
 2つ目は、人間界について学ぶことである。
 人間と会話ができなければ、生みの親を探すことはできない。
 母竜は息子に、人間の言葉や文化などについて教えた。
 
 3つ目は、魔力操作ができるようになることだ。
 テオドールは父竜から、魔力や操作の仕方について教わった。
 この世界では魔力のないものは生きられない。
 それでもテオドールが死なずにいられるのは、母竜から栄養と魔力を摂取しているからである。
 テオドールが赤子のころは、人間の姿に変化へんげした母竜が、母乳で与えていた。
 彼が2歳になると、コップから栄養と魔力を飲むようになった。
 なのでテオドールには、人間の姿になった母竜の記憶はない。
 
 魔力操作をすると、竜のウロコの色や形などを、自在に変えることができる。
 テオドールの服やコップも、鱗から作られたものだ。
 鱗は変化させるときだけ魔力を使えば、その状態を維持し続ける。
 
 テオドールが魔力操作の鍛錬を積んで、鱗を自在に変化させれるようになると、それを翼にして飛行訓練が行われた。
 父竜曰く、地上の敵に襲われたとき、上空へ逃げるために必要だという。
 練習を重ねるも、なかなか理想とする飛行には、至らなかった。
 鱗の翼を動かすのに、魔力を使い続けなければならない。
 自身で魔力を作り出せないテオドールは、効率よく飛ぶ必要があるのだ。
 
 ある日、いつものようにテオドールとフレアが、狩りで飛び立つ成竜を見送っていると、ブルートがやってきて、
 
「どけ、邪魔だ! 飛べない出来損ないが」
 
 と、テオドールを追い払うように翼を羽ばたかせて飛び上がった。
 まだ成竜ではないから狩りをしないブルートは、わざとテオドールの前で飛んで、嫌がらせをしたのである。
 
「いい加減、テオに意地悪するのは止めなさいよ。ブルート」
「フレアこそ、なんでそんな奴の肩を持つんだよ。テオは翼もない醜い出来損ないだ。テオと一緒にいたら、お前も醜くなるぞ」

 フレアのことが好きなブルートは、彼女がテオドールと仲良くするのが気に入らなかった。

「まったくバカバカしくて、話にならないわ」
「嘘じゃない。だって昔のフレアはとても可愛かったのに、どんどん不細工になっているもんな」
 
 年頃の女の子であるフレアは、大好きなテオドールの前で不細工と揶揄され、何も言い返せなくなってしまう。
 
 テオドールは、フレアが世界一可愛いと思っているので、気にも留めなかった。
 だけど羞恥と悲しみが入り混じったような表情のフレアを見て、黙っていられなくなり、
 
「飛べれば、いいんだろ」

 と言い放って、服の背中から翼を生やすと、ブルートに空を飛んで見せた。
 面食らいながらもブルートは、
 
「そ、そんなの、浮いてるだけだ。オレみたいに、自在に飛べなければ、飛んだとは認めないからな!」
 
 そう言って飛び回るブルートの直後を、ピッタリと追いかけるテオドール。
 やがてブルートを追い越して、立ち塞がったテオドールは、

「これで文句はないだろ。もう二度と僕たちに関わらないで」
「うっせえ! 出来損ないのくせに、生意気だぞ!!」

 ブルートは、テオドールに飛び掛かるも、簡単に躱されてしまう。
 執拗にテオドールを追い掛け回すが、その差は開く一方である。
 力の差を見せつけられたブルートは、諦めて何処かへ逃げ去った。

 テオドールがもとの場所に降り立つと、フレアは興奮した様子で、
 
「テオ。凄いわ。いつの間に飛べるようになったの。それに飛ぶのが、とても上手だったわ。プルートより、ずっと速かったし――」
 
 彼女に笑顔が戻り、安堵するテオドール。
 この日以来ブルートは、テオドールにちょっかいを出さなくなった。
 
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