ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

文字の大きさ
4 / 64
第1章 緋竜山編

4 テオドール、旅立つ

しおりを挟む
 実母探しの最終条件は、戦闘力をつけることである。
 
「争いは争いを生む。できる限り争いは避けて、穏便に済ませること。戦いは、大切なものを守るときにとる、最終手段だ。無闇に力を行使して、戦ってはいけないよ」
「うん。わかったよ。父ちゃん」

 そう諭してから、父竜は息子テオドールに戦闘方法を指南した。
 
 戦い方は、武術と魔法に大別できる。
 
 武術は、鱗を剣や槍などの武器に変化へんげさせて戦うというもの。
 人間の姿に変化した父竜は、実演しながら武器の扱い方などを教えた。
 
 魔法は、火竜が口から火炎を吐き出すように、魔力で掌から火炎や火球を放つというもの。
 テオドールは鍛錬して魔法を習得するも、飛行と同様に魔力の消耗を考慮すると、あまり出番はないだろうと思った。
 
 
 ――数年後。
 
 15歳になったテオドールは、身の丈が180cmに成長し、鍛え上げられた筋肉を纏い、均整のとれた肉体をしている。
 その体躯で、断崖絶壁の岩壁を駆け上がり、せり出した岩にぶら下がって、軽々とよじ登れるほどになっていた。
 
「テオ。よく頑張ったな。お前は、与えられた試練をすべてこなした。いつでも実母を探しに行ってもいいぞ」
「本当!? ありがとう。父ちゃん」

 5年目にしてようやく、許しが出たテオドールは、感極まり父竜に抱きついた。

 テオドールが2歳になるまで母竜は、彼の実母を真似た姿で授乳した。
 当時の記憶を思い起こし、たしかこんな感じだったと思うけど、と呟きながら人間の姿に変化した母竜は、
 
「テオ。これがお前を産んだ母親の姿だよ」
「この人が……」

 テオドールは、初めて見る実母の姿に、万感の思いがこみ上げ、涙が滲んだ。
 
「それとこれは、お前の実母が身につけていた装飾品で、命の代わりに受け取ったもの。実母を探すのに役立つだろうから、持って行きなさい。でも高価なものだから、よほど信頼のおける人間でなければ、見せてはいけないよ。狙われてしまうからね」
「うん。わかったよ。母ちゃん」

 テオドールは、深紅の宝石が嵌め込まれたペンダントを受け取って首に掛けると、本体が見えないように、服の中に隠した。
 
 その後テオドールは、フレアのもとへ行き、すべてを告白した。
 自分が人間であることや、魔力がなくて生きられないので、親竜が育ててくれたことを話すとフレアは、
 
「そうなんだ」
「驚かないの?」
「ちょっと驚いたけど、テオはテオだもん。何も変わらないわ。それに、わたしにだけ教えてくれたことが嬉しいの。それってテオにとってわたしは、特別な存在ってことでしょ?」

 テオドールは、少し恥ずかしげに頷いた。
 そして実母を探しに行くことを伝えると、フレアは寂しげな眼差しでテオドールを見つめ、
 
「もう、此処へは戻ってこないの?」
「いや、必ず戻ってくるよ。此処がオレの居場所だし、母ちゃんから魔力を貰わないと、生きていけないからね」
「良かった。わたし待っているから、早く帰ってきてね」

 彼女は安堵の笑みを浮かべて口にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

本当の外れスキルのスロー生活物語

転定妙用
ファンタジー
「箱庭環境操作」という外れスキルしかないエバンズ公爵家の長男オズワルドは、跡継ぎの座を追われて、辺境の小さな土地を与えられて・・・。しかし、そのスキルは実は・・・ということも、成り上がれるものでもなく・・・、スローライフすることしかできないものだった。これは、実は屑スキルが最強スキルというものではなく、成り上がるというものでもなく、まあ、一応追放?ということで辺境で、色々なことが降りかかりつつ、何とか本当にスローライフする物語です。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...