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第2章 オークハート領編
3 エレナ
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「肉、食べたい!」
そう叫んで、部屋を飛び出したテオドールに、エレナは強い嫌悪感を抱き、もう戻ってこなければいいとさえ思った。
僅かな食料を分け与えているのに、無遠慮に肉を要求するような恩知らずであり、貪り食らい平らげると、勝手に部屋を出ていくような、礼儀知らずに見えたのだ。
御上りさんのようにキョロキョロして、育ちの悪い田舎もんだと、エレナの目には映ったのである。
テオドールは、男爵の敷地を出たところで、数名の村人とすれ違った。
「ジャイアント・ボアが出たんだ。危ないから、あっちに行ってはダメだよ」
中年の女性が、村の方を指して、テオドールに注意を促した。
城館に逃げ込む彼らを尻目に、「肉っ!」と叫んだテオドールは、女性が指した方へと駆けていく。
◇◆◇◆◇
村人たちはグレース夫人に、ジャイアント・ボアが畑を荒らしているので、退治して欲しいと願い出た。
ジャイアント・ボアは、男爵が率いる徴集兵でなければ、対処は不可能である。
だが彼らは、魔獣狩りに出ていて、いつ戻るかわからない。
グレース夫人が村人たちに、赤髪の少年について尋ねると、ジャイアント・ボアが出現した方へ向かったという。
「まぁ、大変。アルフレッド、急いで馬車の用意をしてちょうだい。テオドールさんを、迎えに行きます」
「やめてください。お母様。危険です。それに、あの男が悪いんです。自業自得よ」
エレナは、母親に思いとどまらせようと説得するも、
「でもジャイアント・ボアに襲われたら、テオドールさんは殺されてしまうわ」
「その通りでございます。奥様。たとえ馬でも、体当たりされたら、一溜まりもありません。ですので、お迎えは私目が一人で参ります」
「駄目よ、アルフレッド。あなたも行かないで。お願いだから二人とも、お父様が帰宅するまで待ってちょうだい。二人にもしものことがあったら、私――」
エレナがアルフレッドにしがみ付き、声を震わせて涙ながらに訴える。
彼女の思いが通じ、グレース夫人とアルフレッドは、諦めて男爵が帰宅するのを待つことにした。
◇◆◇◆◇
村の畑にたどり着いたテオドールは、3mほどの岩のようなジャイアント・ボアを発見した。
それに気づいた巨大な魔獣は、テオドール目掛けて、地響きを立てながら突進する。
テオドールもジャイアント・ボアに向かって走り出し、衝突寸前で飛び越えて躱した。
ジャイアント・ボアが速度を落として振り向いた瞬間、いっきに間合いを詰めたテオドールが、魔獣の顔に強烈な蹴りを入れた。
脳震盪を起こして、よろめく巨大な魔獣の頭に、間髪を容れず、渾身の一撃を食らわせる。
大きな音と共に倒れて絶命するジャイアント・ボア。
12歳から父竜と共に魔獣狩りをしていたテオドールは、これまで幾度となくジャイアント・ボアを狩ったことがある。
今の彼にとって、それは造作もないことであった。
◇◆◇◆◇
城館では、グレース夫人がテオドールの無事を祈りながら、大広間で男爵の帰宅を待っていた。
やがて男爵と徴集兵たちが、魔獣狩りから戻ってきて、
「ただ今戻ったぞ。今日はホーン・ラビットが獲れた。久々に肉が食えるぞ」
男爵は30cmほどの獲物を掲げながら、笑顔で大広間に入った。
そうは言っても、徴集兵の10名にも分配するので、各々が口にするのは、微々たるものである。
すぐさまグレース夫人は、男爵に駆け寄り、事情を説明した。
「そうか。わかった。すぐに、その少年を探しに――」
そのときテオドールが戻ってきて「肉っ!」と、叫んだ。
グレース夫人は、テオドールに駆け寄って抱きしめると、
「無事だったのね。良かったわ。本当に心配したのよ」
うれし涙を零しながら無事を喜んだ。
テオドールに、づかづかと歩み寄ったエレナは、彼の頬を思い切り引っぱたいて、
「ふざけないでよ! 散々迷惑をかけておいて、何が肉よ! あの獲物は、お父様が魔の森に入って、命がけで獲ってきたものなんだから。あんたの為に獲ってきたんじゃないわ。そんなに肉が食べたかったら、自分で獲ってくればいいでしょ!」
怒りで打ち震えながら言い放った。
そう叫んで、部屋を飛び出したテオドールに、エレナは強い嫌悪感を抱き、もう戻ってこなければいいとさえ思った。
僅かな食料を分け与えているのに、無遠慮に肉を要求するような恩知らずであり、貪り食らい平らげると、勝手に部屋を出ていくような、礼儀知らずに見えたのだ。
御上りさんのようにキョロキョロして、育ちの悪い田舎もんだと、エレナの目には映ったのである。
テオドールは、男爵の敷地を出たところで、数名の村人とすれ違った。
「ジャイアント・ボアが出たんだ。危ないから、あっちに行ってはダメだよ」
中年の女性が、村の方を指して、テオドールに注意を促した。
城館に逃げ込む彼らを尻目に、「肉っ!」と叫んだテオドールは、女性が指した方へと駆けていく。
◇◆◇◆◇
村人たちはグレース夫人に、ジャイアント・ボアが畑を荒らしているので、退治して欲しいと願い出た。
ジャイアント・ボアは、男爵が率いる徴集兵でなければ、対処は不可能である。
だが彼らは、魔獣狩りに出ていて、いつ戻るかわからない。
グレース夫人が村人たちに、赤髪の少年について尋ねると、ジャイアント・ボアが出現した方へ向かったという。
「まぁ、大変。アルフレッド、急いで馬車の用意をしてちょうだい。テオドールさんを、迎えに行きます」
「やめてください。お母様。危険です。それに、あの男が悪いんです。自業自得よ」
エレナは、母親に思いとどまらせようと説得するも、
「でもジャイアント・ボアに襲われたら、テオドールさんは殺されてしまうわ」
「その通りでございます。奥様。たとえ馬でも、体当たりされたら、一溜まりもありません。ですので、お迎えは私目が一人で参ります」
「駄目よ、アルフレッド。あなたも行かないで。お願いだから二人とも、お父様が帰宅するまで待ってちょうだい。二人にもしものことがあったら、私――」
エレナがアルフレッドにしがみ付き、声を震わせて涙ながらに訴える。
彼女の思いが通じ、グレース夫人とアルフレッドは、諦めて男爵が帰宅するのを待つことにした。
◇◆◇◆◇
村の畑にたどり着いたテオドールは、3mほどの岩のようなジャイアント・ボアを発見した。
それに気づいた巨大な魔獣は、テオドール目掛けて、地響きを立てながら突進する。
テオドールもジャイアント・ボアに向かって走り出し、衝突寸前で飛び越えて躱した。
ジャイアント・ボアが速度を落として振り向いた瞬間、いっきに間合いを詰めたテオドールが、魔獣の顔に強烈な蹴りを入れた。
脳震盪を起こして、よろめく巨大な魔獣の頭に、間髪を容れず、渾身の一撃を食らわせる。
大きな音と共に倒れて絶命するジャイアント・ボア。
12歳から父竜と共に魔獣狩りをしていたテオドールは、これまで幾度となくジャイアント・ボアを狩ったことがある。
今の彼にとって、それは造作もないことであった。
◇◆◇◆◇
城館では、グレース夫人がテオドールの無事を祈りながら、大広間で男爵の帰宅を待っていた。
やがて男爵と徴集兵たちが、魔獣狩りから戻ってきて、
「ただ今戻ったぞ。今日はホーン・ラビットが獲れた。久々に肉が食えるぞ」
男爵は30cmほどの獲物を掲げながら、笑顔で大広間に入った。
そうは言っても、徴集兵の10名にも分配するので、各々が口にするのは、微々たるものである。
すぐさまグレース夫人は、男爵に駆け寄り、事情を説明した。
「そうか。わかった。すぐに、その少年を探しに――」
そのときテオドールが戻ってきて「肉っ!」と、叫んだ。
グレース夫人は、テオドールに駆け寄って抱きしめると、
「無事だったのね。良かったわ。本当に心配したのよ」
うれし涙を零しながら無事を喜んだ。
テオドールに、づかづかと歩み寄ったエレナは、彼の頬を思い切り引っぱたいて、
「ふざけないでよ! 散々迷惑をかけておいて、何が肉よ! あの獲物は、お父様が魔の森に入って、命がけで獲ってきたものなんだから。あんたの為に獲ってきたんじゃないわ。そんなに肉が食べたかったら、自分で獲ってくればいいでしょ!」
怒りで打ち震えながら言い放った。
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