ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第2章 オークハート領編

7 謎の少女

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 畑を耕すにあたりテオドールは、老夫から指導を受けた。

「できるだけ土を細かく砕いて、平らに整えてくれるかな」
「わかった」
 
 テオドールは、驚異的な速さで、硬い地面を粉砕するように耕していく。
 途中で、大きな岩があれば、畑の外に放り出した。
 その姿を男爵たちは、ただ茫然と見守るしかなかった。
 テオドールが耕したあとの土は、粉のようにきめ細かく、足を踏み入れるのが勿体ないくらい綺麗に整えられている。
 
 一通り耕し終えるとテオドールは、
 
「次は?」
「も、もう十分じゃよ。わしらでは、これほど綺麗にはできなかったし、耕すだけで2週間はかかっていたからな。本当に助かったよ。ありがとうな」

 期待をはるかに超えた、テオドールの働きぶりに、老夫は驚きをもって感謝した。
 
「テオドール君。もう行くから、鍬を戻しておいで」

 そう男爵に言われたテオドールは、急いで小屋へ行き、鍬を腕輪に変化させて戻った。
 
 男爵家の馬車を見送った老夫婦は、
 
「あんな鍬、小屋にあったかのう?」
「さぁ? 私は見たことないですよ」

 老夫婦は小屋を探したが、鍬は見当たらず首を傾げる。
 
 男爵とテオドールは、行く先々で領民を手助けしたので、実母探しは遅々として進まなかった。
 そんな感じであっという間に1週間が過ぎるも、捜索対象は見つからなかった。

 馬車で帰る途中、すれ違った少女に目が留まった男爵は、
 
「見かけない子だな」

 少女がテオドールと同じ赤髪で赤い瞳をしていたので、グレース夫人が、

「そうですわね。もしかしてテオドールさんの、お知り合い?」

 と尋ねたが、テオドールは知らないと首を横に振った。
 グレース夫人は、アルフレッドに馬車を止めさせると、降りて少女のもとへ向かった。

「こんにちは。お嬢さん。おひとり? ご両親は?」
「一人」
「どこから来たの?」

 少女はジュリエット・17歳で、異国から人を探して、一人で旅をしているという。
 お金も泊るところもなく、何から何までテオドールの時と一緒だと思ったグレース夫人は、彼女を男爵邸に招くことにした。
 馬車に乗り込んだジュリエットは、テオドールと目が合うと、慌てて視線を逸らす。
 
 その日の夕食から、ジュリエットも食卓に加わり、
 
「これ、うまいな!」

 少女は、口一杯に料理を頬張りながら、声を上げた。
 見目麗しい容貌とは裏腹に、肉を貪り食らうジュリエットを見て、男爵一家は目を丸くしながらも、よほどお腹が空いていたのだろうと思った。
 
 就寝時間になると、アルフレッドはジュリエットを寝室に案内した。
 テオドールも自分の寝室へ向かおうとした時エレナが、
 
「ジュリエットさんのこと気になるの?」
「気になる」
「彼女、とても綺麗だもんね」

 と言い捨てて、エレナは立ち去った。
 エレナが怒っている理由がわからず、首を傾げるテオドール。
 
 この1週間、テオドールの人探しに同行したエレナは、彼が幾度となく領民を助ける姿を目にしていた。
 出会った時は最悪の印象だったテオドールに、そのギャップも相まって、憧れと恋心を抱くようになっていたのである。 
 知らず知らずのうちにテオドールのことを、目で追いかけていたエレナは、頻繁に彼がジュリエットのことを見つめていることに気づいた。
 テオドールがジュリエットに特別な感情を抱いていると思い、エレナは居たたまれなくなったのだ。
 
 翌朝、テオドールは最悪の気分で目を覚ました。
 眩暈と吐き気、そして頭痛に襲われ、体を起こすのもしんどかった。
 これまで病気一つしたことがないテオドールは、自分の身体に何が起こっているのか考えた。
 そして重大な過ち、魔力を顧みなかったこと、に気づいた。
 
 魔力が尽きかけているのだ。
 早急に緋竜山へ戻り、魔力を補充しなければ、命取りになりかねない。
 
 テオドールが部屋を出ると、アルフレッドがやってきた。
 
「テオドール様。ちょうど良かったです。緋竜山の近くにある畑で、ジャイアント・ボアが現れたそうです。退治して頂きたい……顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫。問題ない。オレ、一人で行く」

 緋竜山へ行く口実ができたので、テオドールは即答した。

 すぐさま現場へ向かい、ジャイアント・ボアを発見するも、テオドールは体調が悪化して、その場に頽れてしまう。
 それに気づいたジャイアント・ボアが、テオドールに向かって突進した。
 まともに動けないテオドールは、腕輪状の鱗を剣に変化させようと魔力を使った瞬間、意識を失ってしまう。
 地に倒れ伏すテオドール目掛けて、巨大な魔獣が地響きを立てながら、物凄い勢いで猛進する。
 
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