ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第2章 オークハート領編

6 実母探し

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 テオドールの活躍により、魔獣の解体は飛躍的に捗った。
 それでも処理が多かった為、テオドールが肉にありつけたのは、夕食のときである。
 
 肉がふんだんに使われた料理を、男爵夫妻と娘、そしてテオドールは、十分に堪能した。
 
 就寝時間になるとテオドールは、アルフレッドに来客用の寝室へ案内された。
 室内に入るとアルフレッドは神妙な面持ちで、
 
「テオドール様。少々お話があるのですが、よろしいでしょうか」
「?」
 
 オークハート領は辺境の地で、土壌が硬く農耕には適さない。
 さらに近年では、魔物や魔獣による作物の被害が多発し、領民を苦しめていた。
 私財を投げうって領民を救済してきた男爵は、債務が膨らみ、使用人の全員に暇を出すほど困窮してしまう。
 だけど代々オークハート家に忠誠を誓い、仕えてきた一族の三人(アルフレッド・グスタフ・ソフィー)は、屋敷に残り無償で奉仕を続けている。

 アルフレッドはオークハート家の窮状を訴え、

「このままだとオークハート家は、爵位と領土を失い、路頭に迷うことになります。最悪、まだ13歳のお嬢様が、借金のカタに売られてしまうかもしれません。テオドール様、どうかお願いします。オークハート家の再建に、ご助力頂けないでしょうか」

 深々と頭を下げて懇願した。
 母竜から人間の言葉を教わったとはいえ、まだ知らないことも多いテオドールは、
 
「ゴジョリョク?」

 と聞き返す。
 
「はい。オークハート家には、徴集兵しかおらず、魔物や魔獣の退治は、ままならないのが実情でございます。そこでテオドール様に、魔物や魔獣が現れたら、退治して頂きたいのです」

 作物がとれなければ、料理も食べられないので、テオドールは二つ返事で引き受けた。

「ありがとうございます。テオドール様」

 再び深く頭を垂れて感謝するアルフレッド。
 
 翌日から、男爵家の協力を得て、テオドールの実母探しが始まった。
 男爵家が把握している情報は、テオドールの母親と同じくらいの女性ということと、大体の容貌だけである。
 あとはテオドールが顔を見ればわかるというので、とりあえず35~50歳くらいの女性を探すことになった。
 男爵一家とテオドールが、馬車で領内の各家をまわるため、ある畑の横を通りかかった時、老夫婦が声をかけてきた。
 
「男爵様。昨日は貴重なお肉を頂き、ありがとうございました」
「あの肉は、こちらのテオドール君が分けてくれたものだ。お礼なら彼に言ってくれ」
「そちらのお方が? ありがとうございます。久々にお肉を食べることができて、涙が出てきましたよ」

 老夫婦は両手を合わせて、テオドールを拝んだ。
 
「ところで畑を耕していたようだけど、牛は使わないのかい?」
「それが男爵様。食べるものがなくなり、だいぶ前に牛を食用として処分してしまったもので……」
「それは大変だな。よし。私が手伝おう。グレース、テオドール君の人探しは頼んだよ」
「はい。あなた」

 男爵は馬車から降りると、クワで畑を耕し始めた。

「何してる?」

 テオドールが男爵を指さして尋ねると、グレース夫人は、畑を耕さないと作物が作れないと説明した。
  
「作物、ないと困る。オレ、手伝う」

 馬車を降りたテオドールは、男爵に駆け寄り、

「オレが耕す」

 と手を差し出した。
 ボロボロの鍬を、テオドールが扱えば壊れると考えた男爵は、老夫婦に他の道具はないか尋ねた。
 老女は近くの小屋を指し示して、
 
「あそこにありますので、好きなものをお使いください」

 男爵とテオドールは小屋の中を探したが、目ぼしいものは見当たらなかった。
 するとテオドールは、男爵が背を向けている間に、腕輪状の鱗を鍬に変化させ、
 
「これを使う」
「テオドール君。それ、どうしたんだ?」
「ここに、あった」 

 テオドールが小屋の隅を指し示すと、男爵は訝しげに、

「そこはさっき探したが、そんなものは無かったぞ」

 鍬は長さが1m以上あり、全体が金属のようなもので作られ、刃と柄がつなぎ目のない一体成形。
 また、他の道具は使い古されているのに、その鍬だけ新しくて異質なので、気づかないはずはなかった。
 慌てた様子でテオドールは、別の場所を指さして、

「えっと……こっちだ」
「そこも探したぞ」
「間違えた。あっちだ」
 
 あからさまに狼狽えるテオドールを、男爵はジト目で見やり、ちょっと貸してと鍬を受け取って確認した。
 その質感や軽さなどから、ジャイアント・ボアを解体した刃物と同じ素材だと察した男爵は、
 
「もしかしてアーティファクトか?」
「何それ?」
「古代の遺物で魔法の道具だよ。これは自在に形を変えられるアーティファクトなんだろ?」
「そ、そう。アーティファクト。だから秘密」
「伝説だとばかり思っていたが、まさか実在したとはな。誰にも言わないから安心してくれ。こんなお宝を持っていると知られたら、狙われるかもしれないからな」

 アーティファクトは男のロマンとばかりに、目を輝かせ興奮する男爵。
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