ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第2章 オークハート領編

9 秘めた思い

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 ――翌朝。
 
 火竜は魔力を炎に変えて、口から吐き出す。
 それと同じように、ジュリエットは魔力を液体に変えて、コップに吐き出した。
 液体は無色透明ではあるが、さすがに気が引けるので、テオドールの前ではやらない。
 彼女はテオドールの寝室に入ると、彼にコップを渡して魔力の液体を飲ませた。
 ちなみにテオドールが昏睡状態になった時は、口移しで魔力を与えて、命を救ったのである。
 
 その日のテオドールは、ジュリエットが仕留めたジャイアント・ボアの回収と解体をした。
 捌いた肉を、徴集兵たちが手分けして、領民に配って回わった。
  
 翌日から、テオドールとジュリエットの人探しが同時に行われた。
 この国で行方不明になった父親を探していると、ジュリエットが男爵一家に説明したので、グレース夫人の提案で一緒に捜索されることになったのだ。
 エレナは初恋の相手であるテオドールが、ジュリエットと親しげにしているのを見るのが辛かった。
 それでも平静を装うため、これまで通り捜索に同行した。
 ジュリエットの父親が見つかれば、彼女が祖国に帰るという思惑もあったからだ。
 しかし相変わらず人助けをしながらの捜索は捗らなかった。

 それから1ヶ月ほどかけて領内全土を捜索するも、該当する人物は見当たらなかった。
 当然である。
 テオドールが探している人はグレース夫人であり、ジュリエットの人探しは嘘なのだから。

「テオドール君とジュリエットさん。領内は探し終えたけど、これからどうするつもりだね?」

 帰りの馬車の中で男爵が尋ねると、二人一緒に他の領地へ移り、捜索を続けるという。
 テオドールが出て行けば、もう二度と会えなくなると思い、無性に切なくなったエレナは、涙が溢れないよう懸命にこらえる。
 男爵邸に戻ったエレナは、自室にこもり密かに枕を濡らした。
 
 しばらくすると扉をノックする音がして、
 
「エレナ。少し話しがあるの。入ってもいいかしら」
「ちょっと待ってください。お母様」

 慌ててエレナは涙を拭い、ベッドを整えてから、母親を招き入れた。
 グレース夫人はベッドに腰掛けると、隣にエレナを座らせ、
 
「エレナは、テオドールさんのこと、どう思っているの?」
「えっ!? どうって……」

 思いもよらない問いかけに、返答に窮するエレナ。

「テオドールさんのお陰で、男爵家と領民は救われたわ。彼には、言葉にならないほど、感謝しているのよ。だから、エレナとテオドールさんが結ばれたら、わたくしは嬉しいわ」
「お母様……」
「エレナも、テオドールさんのことが、好きなんでしょ」

 エレナが、秘めた思いで悩み苦しんでいることに、気づいたグレース夫人は、心配して来たのである。
 それを悟ったエレナは、母親に抱き着き、堰を切ったように号泣した。
 グレース夫人は愛娘の頭を優しく撫でながら、
 
「ジュリエットさんが来てから、エレナはテオドールさんと距離を置いていたでしょ。このまま別れたら、きっと後悔するわ。だからちゃんとエレナの気持ちを、テオドールさんに伝えた方がいいと思うの」
「そうするわ。お母様。ありがとう」
 
 
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