ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第3章 武術大会編

6 宝物

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 子爵に酷い扱いを受けるエレナを、少しでも助けられるのならばと、

「わかりました。エレナと一緒にいられるのなら、わたくしも子爵様のモノに――」
「駄目です。お母様。そんなこと、お父様が許すわけないでしょ。私も一生お母様を許しません」

 娘は母親を強く諫めたあと、

「私なら大丈夫です。お母様」
「ごめんなさい。エレナ。わたくしたちが至らないせいで――」
「いいえ。領主として領民に尽くしたお父様とお母様を、心から尊敬しています。二人から数えきれないほどの愛情を頂き、私は幸せでした。だからお母様、悔やまないでください」

 エレナは泣き崩れる母親に抱きつき、頬に口づけをした。
 そして立ち上がると、アルフレッドに抱きついて、

「アルフレッド。これまで私たちに尽くしてくれて、本当にありがとう。貴方には、言葉では言い尽くせないほど、感謝しているわ。これ以上何かを頼める立場じゃないけど、最後にお願いがあるの」
「何なりとお申し付けください。お嬢様」
「お母様のこと、お願いします」
「お任せください。もとよりわたくしは、生涯オークハート家に仕えると、決めていましたから」

 男爵が生まれる前からオークハート家に仕えてきたアルフレッド。
 幼い頃から世話をしてきたエレナを、彼は孫娘のように可愛がってきた。
 こうなった原因の一端は、執事として責務を果たせなかった自分にあると、自責の念に駆られ、心が抉られる思いになった。

「ありがとう。アルフレッド」

 エレナはアルフレッドの頬に口づけして離れると、テオドールに抱きつき、
 
「テオドールさん。短い間だったけど、力になってくれて本当にありがとう。私はテオドールさんのこと……」

 好きだと口にしかけたが思いとどまり、
 
「テオドールさんのこと、一生忘れません」

 恋慕の眼差しでテオドールを見つめ、その姿を瞳に焼き付けた。
 頬に口づけして離れたエレナの手を、テオドールが掴む。
 
「オレ、約束した。エレナ、助ける。だから借金、オレが返す」
「はぁ? 何言ってんだ、小僧。貴様ごときが返せるような額じゃないんだぞ」

 子爵は呆れ交じりに口を挟んだ。

「オレ、宝物ある。それ売って、借金返す」

 そう言ってテオドールは、一旦手当室を出た。
 そして鱗の腕輪を、剣に変化させると、それを持って室内に戻った。
 
「オレの宝物」
「ワシは男爵に金貨5千枚を貸し付けたのだ。そんなナマクラ、金貨1枚にもならんわ。物の価値もわからないガキが」

 実際、テオドールはお金や剣の価値がわからなかった。
 鱗の剣はアーティファクトというお宝だと男爵に言われたが、どれだけ値打ちがあるのかは理解していない。
 
「ナマクラ、違う。何でも、斬れる」
「ほう。なら、この短剣を斬ってみせろ。斬れるもんならな」

 意地悪げに言って、子爵は短剣を取り出し、テオドールに向けた。
 テオドールが剣を振り下ろすと、短剣の剣身が真ん中から二つに裂けた。

「ひいっ! な、何をした?」

 目を見開き素っ頓狂な声をあげる子爵。

「斬った」
「あ、有り得ん。鋼鉄の剣を、真っ二つにするなんて」

 そう呟きながらも子爵は、目の前で起きた事実を認めざるを得なかった。
 本物のお宝だと確信した彼は、テオドールの剣を値踏みし始める。
 
 王族や貴族なら、金貨1万枚を払ってでも、欲しがるだろう。
 なんせ、敵を甲冑ごとぶった斬ることも、魔獣を一撃で倒すことも可能なのだからな。
 比類なき剣、まさに聖剣と呼ぶに相応しい至宝だ。
 
 しかし領土とエレナを諦めたくない強欲な子爵は、すべてを手に入れようと悪だくみを巡らせる。

「ふん。その程度の剣では、借金の返済には足りんな」 
「もう一つ、宝物ある。一番の宝物」
「なにぃ~~っ!? もっと凄いお宝が、あるというのか?」

 鼻息を荒くして、食い入るように子爵は聞き返した。
 テオドールにとって一番の宝物は、生みの親が身に着けていたペンダントである。
 それは男爵家に代々継承されてきた家宝の一つで、グレース夫人が母竜に渡したもの。
 隠していた胸元のペンダントを、服の中から取り出すテオドール。
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