ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第4章 近衛騎士団編

2 入団交渉

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 翌日、男爵たちは2台の馬車にわかれて、王城へ向かった。
 男爵一家の3人が乗る馬車の中で、エレナは父親に寄り添いながら、

「お父様。緋竜山の竜神って、どんな存在なの?」

 男爵夫妻は、驚いてお互いの顔を見合わせる。
 グレース夫人は、エレナには何も話していないと、首を横に振った。

「どうしたんだい。エレナ。いきなりそんなことを聞いて」
「ちょっと小耳に挟んで気になったの。火竜は神様なの?」
「さぁ、どうなんだろうね。私には解らないよ」

 人間が勝手に神様として崇めているだけ、というのが男爵の認識である。
 なので15年前に息子を火竜に託したと、妻から聞いたが信じてはいなかった。
 息子の死に錯乱して、緋竜山の近くに亡骸を埋葬した、妻の迷妄だと男爵は考えている。
 
 王城につくと、全員(男爵一家・アルフレッド・テオドール・ジュリエット)が謁見の間に通され、国王の前で片膝をついて顔を伏せた。

「顔を上げよ。オークハート男爵。アルフレッド執事からすべて聞いておるぞ」
「すべては私の不徳の致すところでございます。深くおわび申し上げます。いかなる処分をも受ける覚悟でございます。ですが最後に一つだけお願いがございます。なにとぞ娘のエレナをお救いください」

 男爵が床に額を擦り付けて嘆願すると国王は、

「オークハート男爵よ。己の立場がわかっておらぬようだな」

 するとジュリエットは、おもむろに立ち上がり、腕組みをしながら国王を凝視して、

「わかっておらぬのは、其方そなたではないか? 民を守るのが国王の務めだろ。男爵一家も国の民だぞ」
「小娘、不敬であるぞ。口を慎め!」

 国王の側近が、厳しく注意した。

「陛下。この少女は、テオドールと同じ異国のものゆえ、礼儀をわきまえておりません。なにとぞお許しください」

 すかさず男爵が庇うと、国王はジュリエットを見据え、
 
「其方の名は何という。テオドールとは、どのような関係なのだ?」
「妾の名はジュリエット。テオとは、とても親密な関係で、近衛の入団交渉は、妾に一任されている」
「それは誠か?」

 国王の問いかけに、テオドールは頷いて答えた。

「皆のもの、よく聞け。ジュリエットとテオドールの不敬は、我が許す。二人を咎めてはならぬぞ」

 国王は臣下に命じた。

「ジュリエットよ。テオドールは入団に前向きと捉えてよいのだな」
「テオは条件付きで、近衛騎士団の一員になっても構わないと、言っておる。条件の一つ目は、男爵家の借金を陛下が肩代わりすること。二つ目はエレナを保護することで、三つ目は男爵家を咎めないことである」
「それは出来ぬな。領地経営に失敗した男爵がお咎めなしでは、他のものに示しがつかぬ」

 国王が眉を顰めて言うと男爵が、

「エレナを助けて頂けるのであれば、私はいかなる処罰でも受け入れます」
「ならば男爵には、現在の領地に加え、新たな領地を統治してもらう。よいな」
「はい? 新たな領地……ですか?」
「うむ。アルフレッド執事から説明を受けた後、秘密裡に事実関係を調べさせたのだ。するとジェローム子爵の悪事が次々と明らかになった。ゆえに子爵の爵位と領地をはく奪したのだが、統治するものがいなくて困っておる」
「それは処罰なのか?」

 思わず国王にツッコミをいれるジュリエット。

「無論だ。男爵は統治に失敗したせいで、領地や爵位だけでなく、己の命と娘をも失いかけたのだ。もう統治は懲り懲りのはずだからな」

 釈然としないジュリエットは、アルフレッドの耳元で、

「どう思う?」
「子爵の領地は恵まれているので、統治はしやすいでしょう。決して悪い話ではないと思われます」

 男爵に視線を戻した国王は、
 
「オークハート男爵。どうだ。引き受けてはくれぬか?」
「ありがたき幸せ。謹んで承ります。この御恩は決して忘れません。陛下に身命を賭してお仕えすることを誓います」

 男爵は顔を伏せたまま涙声で返した。 
 国王の満足げな顔を見たジュリエットは、彼の思惑通りに進んだのだと察し、侮れない奴だと思った。
 ジュリエットが、さらに幾つかの条件を付け加えると、まだあるのかと国王は少々呆れながらも、すべてを受け入れることで合意した。

「ところでジュリエットよ。我は其方が気に入ったぞ。我の臣下にならぬか?」
「ありがたい話だが、やめておく。誰かに仕えるつもりはないのでな」
「それは残念だ。気が変わったら、いつでも申してくれ」
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