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第4章 近衛騎士団編
1 完治
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翌朝、テオドールが手当室に入ると、
「おはようございます。テオドールさん」
エレナが嬉しそうに抱きついた。
積極的になったエレナに、テオドールは戸惑いながらも、
「お、おはよう。エレナ」
「何をしとる。妾のテオに抱きつくな」
我が子に纏わりつくエレナを、ジュリエットは引き離そうとする。
しかし頑として離れないので、ジュリエットはエレナの体をくすぐった。
「きゃはははっ。そこは、やめて。いやん」
たまらず手を離したエレナを、ジュリエットは外に連れ出す。
「何のつもりだ? いきなりテオに、ベタつきだして」
「私、テオドールさんのことが大好きでたまらないの。昨日まで、テオドールさんとジュリエット様が恋仲だと思っていたから、諦めていたんだけど、親子だとわかったから、もう遠慮しないって決めたの」
男爵夫妻は、エレナに兄がいたことを隠していた。
そのためエレナは、テオドールが実兄だとは思いもせず、異性として好意を寄せる。
「だからって、そんなあからさまにせんとも。盛りの付いた猫じゃあるまいし」
「だって私、もうすぐ子爵のものになってしまうのよ。そうなったら二度とテオドールさんに会えないわ。だからお願い。それまでは好きにさせて。ジュリエット様」
目に涙を浮かべて拝みながらエレナは懇願した。
「ふん。好きにしろ」
「ありがとう。ジュリエット様」
エレナはジュリエットの頬に口づけをすると、手当室に戻った。
「まったく、何もわかっとらんな。テオを悲しませたくないと、妾は伝えたはずだぞ。お前が子爵のものになれば、テオは悲しむとわかっているのに、妾が黙っておるわけなかろう」
子爵を手に掛けてでもジュリエットは、エレナを渡すつもりはなかった。
武術大会の10日後、男爵は意識を戻して、薄く目を開けた。
「……此処は?」
「あなた」「お父様」「旦那様」
男爵に付き添っていたグレース夫人とエレナ、そしてアルフレッドが叫んだ。
「私は一体?」
「大会の決勝戦で意識を失って、此処に運ばれたのよ。あなた」
グレース夫人が説明すると、男爵は目を見開き、
「私は……負けたのだな……済まない、エレナ」
号泣しながら謝る男爵。
「落ち着いて、あなた。領地とエレナの件は解決したのよ。あなたの戦いぶりを見て、陛下が借金を肩代わりしてくれたの。だから安心してちょうだい」
男爵の体を気遣って、グレース夫人は嘘をついた。
「それは本当か?」
「もちろんよ。でなければ、大会が終わって10日経つのに、此処にエレナがいるわけないでしょ」
「そうか……」
男爵はエレナに視線を移し、安堵の表情を浮かべた。
それから10日ほどで、男爵は普通に動けるようになり、医師を驚かせた。
「信じられん回復力じゃ。ほぼ完治しておるから、もう大丈夫じゃろう。男爵が治ったら、王城に連れて行くよう、国王陛下に申しつけられておる。明日、王城にお連れしたいが、よろしいですかな」
「はい。よろしくお願いします」
医師が手当室を去ったあと、男爵は幸せそうに、
「明日は陛下の恩情に、心から感謝して、一層の忠誠を誓うとしよう」
「あなた、ごめんなさい。わたくし、嘘をついていたの――」
グレース夫人は悲痛な面持ちで、真実を告白した。
「それじゃ、エレナは……」
蒼白になり震え出した男爵は、覚悟を決めた面持ちで、
「こうなったら陛下に直訴して、エレナを救ってもらうしかない」
国王から任された領地の経営に失敗して、借金をしたあげく領地と娘を失う羽目になり、お咎めは避けられない状況である。
なので直訴を聞き入れてもらえる保証はないが、それ以外男爵に残された手立てはなかった。
「アルフレッド。私は投獄されて、もう出てこれないかもしれない。そうなったらグレースとエレナを頼む。お前しか頼れないのだ」
男爵は深く頭を下げて懇願した。
「頭をお上げください。旦那様。お嬢様にも申し上げたのですが、私は生涯オークハート家にお仕えすると、決めております」
「済まない。アルフレッド」
できれば男爵は、テオドールにエレナを貰ってもらい、妻のことも託したかった。
エレナがテオドールに好意を寄せていることを知っていたからだ。
だがテオドールが実の息子と知らず、ジュリエットと恋仲だと勘違いした男爵は、アルフレッドに頼んだのである。
「おはようございます。テオドールさん」
エレナが嬉しそうに抱きついた。
積極的になったエレナに、テオドールは戸惑いながらも、
「お、おはよう。エレナ」
「何をしとる。妾のテオに抱きつくな」
我が子に纏わりつくエレナを、ジュリエットは引き離そうとする。
しかし頑として離れないので、ジュリエットはエレナの体をくすぐった。
「きゃはははっ。そこは、やめて。いやん」
たまらず手を離したエレナを、ジュリエットは外に連れ出す。
「何のつもりだ? いきなりテオに、ベタつきだして」
「私、テオドールさんのことが大好きでたまらないの。昨日まで、テオドールさんとジュリエット様が恋仲だと思っていたから、諦めていたんだけど、親子だとわかったから、もう遠慮しないって決めたの」
男爵夫妻は、エレナに兄がいたことを隠していた。
そのためエレナは、テオドールが実兄だとは思いもせず、異性として好意を寄せる。
「だからって、そんなあからさまにせんとも。盛りの付いた猫じゃあるまいし」
「だって私、もうすぐ子爵のものになってしまうのよ。そうなったら二度とテオドールさんに会えないわ。だからお願い。それまでは好きにさせて。ジュリエット様」
目に涙を浮かべて拝みながらエレナは懇願した。
「ふん。好きにしろ」
「ありがとう。ジュリエット様」
エレナはジュリエットの頬に口づけをすると、手当室に戻った。
「まったく、何もわかっとらんな。テオを悲しませたくないと、妾は伝えたはずだぞ。お前が子爵のものになれば、テオは悲しむとわかっているのに、妾が黙っておるわけなかろう」
子爵を手に掛けてでもジュリエットは、エレナを渡すつもりはなかった。
武術大会の10日後、男爵は意識を戻して、薄く目を開けた。
「……此処は?」
「あなた」「お父様」「旦那様」
男爵に付き添っていたグレース夫人とエレナ、そしてアルフレッドが叫んだ。
「私は一体?」
「大会の決勝戦で意識を失って、此処に運ばれたのよ。あなた」
グレース夫人が説明すると、男爵は目を見開き、
「私は……負けたのだな……済まない、エレナ」
号泣しながら謝る男爵。
「落ち着いて、あなた。領地とエレナの件は解決したのよ。あなたの戦いぶりを見て、陛下が借金を肩代わりしてくれたの。だから安心してちょうだい」
男爵の体を気遣って、グレース夫人は嘘をついた。
「それは本当か?」
「もちろんよ。でなければ、大会が終わって10日経つのに、此処にエレナがいるわけないでしょ」
「そうか……」
男爵はエレナに視線を移し、安堵の表情を浮かべた。
それから10日ほどで、男爵は普通に動けるようになり、医師を驚かせた。
「信じられん回復力じゃ。ほぼ完治しておるから、もう大丈夫じゃろう。男爵が治ったら、王城に連れて行くよう、国王陛下に申しつけられておる。明日、王城にお連れしたいが、よろしいですかな」
「はい。よろしくお願いします」
医師が手当室を去ったあと、男爵は幸せそうに、
「明日は陛下の恩情に、心から感謝して、一層の忠誠を誓うとしよう」
「あなた、ごめんなさい。わたくし、嘘をついていたの――」
グレース夫人は悲痛な面持ちで、真実を告白した。
「それじゃ、エレナは……」
蒼白になり震え出した男爵は、覚悟を決めた面持ちで、
「こうなったら陛下に直訴して、エレナを救ってもらうしかない」
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なので直訴を聞き入れてもらえる保証はないが、それ以外男爵に残された手立てはなかった。
「アルフレッド。私は投獄されて、もう出てこれないかもしれない。そうなったらグレースとエレナを頼む。お前しか頼れないのだ」
男爵は深く頭を下げて懇願した。
「頭をお上げください。旦那様。お嬢様にも申し上げたのですが、私は生涯オークハート家にお仕えすると、決めております」
「済まない。アルフレッド」
できれば男爵は、テオドールにエレナを貰ってもらい、妻のことも託したかった。
エレナがテオドールに好意を寄せていることを知っていたからだ。
だがテオドールが実の息子と知らず、ジュリエットと恋仲だと勘違いした男爵は、アルフレッドに頼んだのである。
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