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第3章 武術大会編
10 正体
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真夜中に手当室を覗いたテオドールは、ジュリエットが男爵に唇を重ねているのを目撃する。
その気配に気づいたジュリエットは、おもむろに振り向いて、扉の隙間から覗き込むテオドールと目が合った。
テオドールは『母ちゃん……』と竜語で呟きながら中に入ると、ジュリエットのもとへ歩み寄る。
『テオ。こんな時間に、どうしたんだい?』
『母ちゃん……やはり母ちゃんが、男爵を救ってくれたんだね』
『男爵が死んだら、テオが悲しむだろ。テオを悲しませたくは、なかったんだよ』
『ありがとう。母ちゃん』
テオドールは嬉しくて、ジュリエットに抱きついた。
ジュリエットはテオドールを愛おしそうに抱き返して、頬にキスをする。
女性が眠るベッドは、衝立で外から見えないようになっている。
テオドールの声で目を覚ましたエレナは、衝立の隙間から抱き合う二人を見てしまう。
慌ててベッドに戻ったエレナは、とても悲しくなり涙が溢れてきた。
一度は諦めて二人を祝福したエレナだが、その後テオドールに救われるたびに、彼への思いを募らせていたのだ。
翌日の夜、またテオドールが来るのではないかと気になり、エレナは寝付けずにいた。
そっと衝立の隙間から外を窺うと、ジュリエットが男爵に唇を重ねているのを目にして、ショックを受ける。
エレナは彼女を、男なら誰彼構わず手を出す卑しい女なのだと思った。
頭に血が上ったエレナは、ジュリエットのもとへ駆け寄り、顔を引っ叩こうとしたが、受け止められてしまう。
「見られたからには仕方ないな」
そう呟いたジュリエットは、エレナの口を塞いで拘束すると、無理やり外へ連れ出した。
そしてエレナを抱えたまま、有り得ない速さで闘技場へ移動し、高所にある国王観覧室へジャンプした。
エレナは涙目で絶叫するも、口を塞がれて声にはならない。
「此処なら誰も来ぬだろう」
とジュリエットは呟き、失神寸前で抜け殻のようになったエレナを、玉座に降ろす。
「お前は誤解しておる。ちゃんと説明するから、妾の話を聞け。ただし絶対に他言無用だ。いいな」
エレナは殺されると思い、ガタガタと震えながら頷いた。
「妾は緋竜山に棲む火竜だ」
実際に火竜を見たことのないエレナは、ただの伝説だと思っていたので、ピンと来ずに首を傾げた。
そこでジュリエットが、顔だけ竜に変化させると、エレナは目を見開き、
「あの時お父様を、食べようとしていたのね」
「違うわ! 男爵を救うため仕方なく、口移しで魔力を与えていたのだ。でなければ誰が人間なんかと、唇を重ねるか!」
「それならテオドールさんと一緒に寝たり、抱き合って頬にキスしたのは?」
それも見られていたのかと、ジュリエットは額に手を当て、
「テオは、生みの親の代わりに、妾が育てた人間の子。テオは妾の子だ」
「でもテオドールさんは15歳よ。もう一緒に寝たりする歳じゃないわ」
「竜は人間の10倍長生きする。人間の15年は竜には1年半だ。妾にとってテオドールはまだ1歳半の赤子も同然。人間だって、そのくらいの我が子と、一緒に寝たり抱きしめて頬にキスぐらいするだろ」
どこか釈然としないエレナは、
「だけど、どうしてお父様を助けてくれたの?」
「男爵が死ねば、テオが悲しむ。妾は大切な我が子を、悲しませたくないのだ。ただそれだけだ」
子煩悩な母竜は、優しい面持ちで淀みなく答えた。
ジュリエットの話を信じたエレナは、彼女が父親を救ってくれた恩人であり、テオドールの母親だと認めて、
「私はお母様のことを信じますわ」
「お、お母様? 妾はお前を育てた覚えはないぞ」
「つい。では次からジュリエット様と、お呼びしますわね。このことは決して誰にも言いませんので、安心してください。お母、ジュリエット様」
テオドールの母親に気に入られようと、態度を一変するエレナ。
戸惑いながらもジュリエットは、エレナがテオドールに恋しているのを察して、
「なるほど。そういうことか」
と呟いてニヤリとする。
その気配に気づいたジュリエットは、おもむろに振り向いて、扉の隙間から覗き込むテオドールと目が合った。
テオドールは『母ちゃん……』と竜語で呟きながら中に入ると、ジュリエットのもとへ歩み寄る。
『テオ。こんな時間に、どうしたんだい?』
『母ちゃん……やはり母ちゃんが、男爵を救ってくれたんだね』
『男爵が死んだら、テオが悲しむだろ。テオを悲しませたくは、なかったんだよ』
『ありがとう。母ちゃん』
テオドールは嬉しくて、ジュリエットに抱きついた。
ジュリエットはテオドールを愛おしそうに抱き返して、頬にキスをする。
女性が眠るベッドは、衝立で外から見えないようになっている。
テオドールの声で目を覚ましたエレナは、衝立の隙間から抱き合う二人を見てしまう。
慌ててベッドに戻ったエレナは、とても悲しくなり涙が溢れてきた。
一度は諦めて二人を祝福したエレナだが、その後テオドールに救われるたびに、彼への思いを募らせていたのだ。
翌日の夜、またテオドールが来るのではないかと気になり、エレナは寝付けずにいた。
そっと衝立の隙間から外を窺うと、ジュリエットが男爵に唇を重ねているのを目にして、ショックを受ける。
エレナは彼女を、男なら誰彼構わず手を出す卑しい女なのだと思った。
頭に血が上ったエレナは、ジュリエットのもとへ駆け寄り、顔を引っ叩こうとしたが、受け止められてしまう。
「見られたからには仕方ないな」
そう呟いたジュリエットは、エレナの口を塞いで拘束すると、無理やり外へ連れ出した。
そしてエレナを抱えたまま、有り得ない速さで闘技場へ移動し、高所にある国王観覧室へジャンプした。
エレナは涙目で絶叫するも、口を塞がれて声にはならない。
「此処なら誰も来ぬだろう」
とジュリエットは呟き、失神寸前で抜け殻のようになったエレナを、玉座に降ろす。
「お前は誤解しておる。ちゃんと説明するから、妾の話を聞け。ただし絶対に他言無用だ。いいな」
エレナは殺されると思い、ガタガタと震えながら頷いた。
「妾は緋竜山に棲む火竜だ」
実際に火竜を見たことのないエレナは、ただの伝説だと思っていたので、ピンと来ずに首を傾げた。
そこでジュリエットが、顔だけ竜に変化させると、エレナは目を見開き、
「あの時お父様を、食べようとしていたのね」
「違うわ! 男爵を救うため仕方なく、口移しで魔力を与えていたのだ。でなければ誰が人間なんかと、唇を重ねるか!」
「それならテオドールさんと一緒に寝たり、抱き合って頬にキスしたのは?」
それも見られていたのかと、ジュリエットは額に手を当て、
「テオは、生みの親の代わりに、妾が育てた人間の子。テオは妾の子だ」
「でもテオドールさんは15歳よ。もう一緒に寝たりする歳じゃないわ」
「竜は人間の10倍長生きする。人間の15年は竜には1年半だ。妾にとってテオドールはまだ1歳半の赤子も同然。人間だって、そのくらいの我が子と、一緒に寝たり抱きしめて頬にキスぐらいするだろ」
どこか釈然としないエレナは、
「だけど、どうしてお父様を助けてくれたの?」
「男爵が死ねば、テオが悲しむ。妾は大切な我が子を、悲しませたくないのだ。ただそれだけだ」
子煩悩な母竜は、優しい面持ちで淀みなく答えた。
ジュリエットの話を信じたエレナは、彼女が父親を救ってくれた恩人であり、テオドールの母親だと認めて、
「私はお母様のことを信じますわ」
「お、お母様? 妾はお前を育てた覚えはないぞ」
「つい。では次からジュリエット様と、お呼びしますわね。このことは決して誰にも言いませんので、安心してください。お母、ジュリエット様」
テオドールの母親に気に入られようと、態度を一変するエレナ。
戸惑いながらもジュリエットは、エレナがテオドールに恋しているのを察して、
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と呟いてニヤリとする。
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