ドラゴンに育てられた少年、生みの親を探して旅に出る

千耀

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第7章 エルデン帝国編

4 自慢の息子

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 ブリギッタは全身に毒が回り、緋色の身体がくすんだ色になって痙攣し始めた。
 するとフレアをはじめ、子竜と老竜たちが、少しずつではあるがブリギッタに魔力を分け与えた。
 日が暮れ始め、戦地から戻ってきた成竜も、残った魔力をブリギッタに与えた。
 すると徐々にブリギッタは元の色に戻り、痙攣もおさまっていった。
 ヴェラントとテオドールは、ブリギッタに添い寝しながら見守った。
 帝国軍は魔の森の近くで野営している。
 
 夜明け前にブリギッタが目を覚ますと、テオドールとヴェラントが、

『母ちゃん、気分はどう?』
『まだ毒の影響はあるかい?』
『テオ。アンタ。ううん、もう大丈夫。心配かけたね』
『みんなが魔力を分けてくれたんだ。みんな本当にありがとう』

 テオドールが感謝して頭を下げると、ブルートが睨みつけて、

『何がありがとうだ。こうなったのは、お前たち人間のせいじゃないか』
『テオを責めるのはやめて。テオのせいじゃないわ』

 すぐにフレアが庇い、続いてブリギッタが、
 
『助けてくれて、みんなには感謝している。だけど悪いのは一部の人間だ。そこにいる人間はテオの実父で、彼の家族と領民は、火竜を竜神として敬い崇めてきた。だからこそ妾はテオを引き取り育ててきたのだ。子に恵まれなかった妾たち夫婦にとって、テオは天からの授かりもの。親バカかもしれないけど、テオは本当に優しくて、掛け替えのない自慢の息子なんだ。だから帝国軍の奴らと一緒にしないでほしい』
『ウチの息子ブルートが、失礼なことを言って申し訳ない。多くの魔物たちが帝国軍に惨殺されるのを見て、息子は動揺しているんだ。この俺だって、この先どうなるか心配で仕方なくらいだからな』

 ブルートの父竜が、テオドールとブリギッタに謝った。
 すると他の火竜たちも口を開き、

『俺たちは魔力が殆ど残ってないし、十分に回復するまで時間が掛かる。今、帝国軍に攻め込まれたら終わりだ』
『此処を放棄して逃げよう。それしか生き残る道はない』
『だけど何処へ行けばいいの? 私たちの居場所は、あるのかしら?』
『大陸は広い。きっと何処かに人間を寄せ付けない人跡未踏の地があるはず』
『あるかどうか分からない土地を、探しながら旅をするのか? 老竜や子竜は長距離の飛行は出来ないし、成竜は戦いで疲労している』
『全員が新天地に辿り着けなくても、此処で殺されるよりはマシだ』

 成竜たちが緋竜山を放棄することで一致するとブリギッタは、

『済まぬが妾は一緒に行けぬ。テオは実の家族男爵一家を見捨てられないから此処に残るだろう。テオは妾が魔力を与えぬと生きられないからな。それに妾は此の国の人間が気に入っておる』

 ブリギッタは、毎日のように城下町で食べ歩きをして、多くの人間と親しくなっていた。
 男爵一家は勿論、火竜を竜神として崇める領民、そして関係が悪化した国王でさえも嫌いではなかった。
 彼らが蹂躙されると分かっていて、捨て置くわけにはいかなかったのである。

『無論、我も残るぞ。愛する家族を置いては行けぬからな』
『父ちゃん、母ちゃん。ありがとう』

 嬉しそうにテオドールは、父竜と母竜に抱きついた。

『だけど帝国軍が攻めてきたら、どうするつもりだ?』

 心配した老竜が尋ねるとブリギッタは、

『男爵家に身を寄せて魔力の回復を図るつもりだ。それからは、なるようになるしかない――』
『父ちゃんと母ちゃんに、やってほしいことがある。上手くいけば敵を撤退させられるかもしれないんだ』
『テオ、それは本当か?』

 父竜が聞き返すと、テオドールは頷いた。
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