勇者パーティを追放された聖剣の守り手は鍛冶能力を生かして冒険者として新たな人生で成り上がる。聖剣が暴走して国がピンチ?残念ながらもう手遅れだ

LENA

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誰も俺のことを信じちゃいなかった

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「お前クビな!正直もういらんわ。てか邪魔。」


 まったく意味がわからなかった。俺にクビを言い渡すのは勇者フリード。機能性よりも豪華さを重視した鎧を身にまとっていてそんな鎧でなにと戦うのだろうと思う。


「だってお前…いつも夜な夜な『俺の』聖剣を眺めては独り言つぶやいて気持ち悪いし」


 何を言っているんだ?その剣は代々うちの家系が受け継ぐ剣で勇者のお前に貸しているだけだろう。

 こいつ顔は一見整っているが精神性は完全盗人だな…品性のなさがその表情ににじみ出ている。


「そうよそうよ!勇者フリードの剣を毎日…あんたマジ気持ち悪いんですけどぉ」


 この頭の悪そうなしゃべり方をしているのはティア。一応プリーストらしい。けばけばしいメイクで露出の多い衣装を着ていて言われなければただの飲み屋のねえちゃんにしか見えない。


 だいたい勇者フリードなどと名乗っているがその称号も国王が自分の国に勇者がいると言う事にしたいがために作られたまがい物の称号なのだ。


 フリード自身はその剣がなければ少し強いだけの剣士に過ぎないのになにをうぬぼれて勘違いしているんだ!?


「馬鹿な…それが俺の仕事だろう!最初に説明しただろ!その剣は…」


 俺が必死に説明しようとするが…


「はいはい。この聖剣クロノスは守り手であるあなたが封印してないとなんでしたっけ?魔剣ネクロノスに変わって使用者に寄生し、えーと…なんかやばいんですよね?アホらし…そんなことあるわけないでしょ…聖剣と魔剣が同一のものだなんて…聖剣で魔剣を倒した伝承は今時子供でも知ってますよ。」


 何だその適当なゆるい認識は…あれほど何度も説明したのに…


 この一見賢そうに見えるアホは魔法使いのステファニー。俺に視線も向けないで自分の長く伸ばした爪をヤスリで磨きながらの片手間で俺への返事をする。


 ティアに比べれば見た目はどこから見ても魔法使いと言うような装備をしているがすべて見た目だけ。タリスマンとか全部ただの宝石で何の魔法的効果もない。


「だいたいお前がいつもやってるのは剣に触れてぶつぶつ言っているだけじゃないか。あんなので封印できるなら俺でも封印できるわ。要は最初から誰もお前の言うことなんて信じちゃいないんだよ!建前上お前の同行を認めたけど正直邪魔なんだわ。国王もこのことは公認なんだよ。!お前の言う封印とやらが眉唾物だと判断できればさっさと追放してしまえとな。」


 こいつらだけでなく国王まで愚かだったとは…歴史は繰り返されるしかないのか…


「そうよ!空気読んでさっさと剣を置いて私たちの目の届かないところまで行きなさいよぉ!気持ち悪い!」


 なんて事だ。こいつら正真正銘の馬鹿だ。あの剣の恐ろしさを何もわかっていない。あれは俺の先祖が作った執念と怨念の塊なんだ。


 その昔鍛冶師は剣を作った後は用済みと言わんばかりにぞんざいに扱われ下手をすれば殺されることも多かった時代のことだ。


 この剣を作った初代も実はそういった時代の被害者だった。彼の父もそれなりに一流の鍛冶師だったのだがある日、とあるお偉いさん…まぁ隠しても仕方ないか。国王から剣の作成依頼が来た。


 国王からの依頼と言うことで張り切った初代の父はこれまた運の悪いことにたまたまかなり良質な剣を完成させてしまったんだ。


 そしてその剣の良さに魅了された国王はこれほどの剣はこの世で自分ひとりだけが持っているのがふさわしいとか世迷言を言ったらしくその結果二度とこれ以上の剣を作れなくするため初代の父はその場で殺されてしまったのだ。当時初代が10歳の頃の話だ。


 そう言った経緯で初代の性格は幼少期に捻じ曲がってしまった。彼は表向きは普通の子供として過ごすがその本心は復讐の鬼でありいつか父を殺した国王に復讐してやると考えていた。


 そしてその執念が彼の鍛冶師としての才能を天才の限界を超えたものにまで引き上げた。


 彼はついに父のものを遥かに超える最高の一振りを完成させたのだ。このとき初代は30歳。実に20年を超える執念だった。そして初代はその剣をなにを思ったのか父を殺した国王に献上しに行ったのだ。


 無論そんな事をすればまた父と同様同じ理由で殺されることはわかりきっていた。


 ではなぜそんな事をしたのか?実は殺される事こそが彼の目的だった。


 魔法の基本でもあるのだが死に際に放つ魔法は通常の魔法よりも強力なものになる。復讐により天才を超えた鬼才がその命をかけて放つ呪いの魔法…その力がどれほどのものになるかは説明するまでもないだろう。


 あとの事を自分の子供に託し自分が殺されることで真の呪いの剣として完成させるために自分の命を捧げたのだ。


 初代の思惑通り国王は初代を切り殺し初代はその血と生命力をすべて魔力に変え剣に呪いを施しついに魔剣ネクロノスが完成した。


 聖剣クロノスから魔剣ネクロノスに変わった剣は国王の身体を腕から寄生し身体をのっとり国王の家族身内友人すべてを殺していったと言う。


 国王は意識を保ったまま身体をのっとられ自分の大切な人間が次々に殺されていく様を見るしかなかった。そしてすべての関係者を殺したと判断した魔剣は最後にその国王の首を撥ね動かなくなったと言う。


 事情をあらかじめ知っていた初代の子供はその現場に駆けつけ父が復讐を果たしたのだと知り複雑な気持ちで涙を流しながら魔剣に自分の魔力を注ぎ封印し聖剣クロノスになった。


 これが俺が代々受け継いできた真の伝承だ。その後初代の子供が聖剣クロノスを手にして滅びの国を建て直した事で勇者伝説が始まったとかは正直どうでも良い話だ。


 別に俺は自分が正当な勇者の末裔だとか言いたいわけじゃない。むしろ隠したい。事実を知っていれば恥ずかしい話だ。


 世間では魔剣を持った魔王が出現しその魔王を討ち取った聖剣の勇者がいたって言う話になっている。


 えらく内容が変わっているが俺としてはそれで良いと思う。実際魔王も勇者も初代が生み出した剣が関係してるんだしマッチポンプも良いところだ。


 だから俺は自分が勇者だとは名乗りたくないのだ。


「だいたいこういう聖剣の守り手は普通美少女が定番じゃないのかよ!守り手と勇者が共に力を合わせて愛が芽生えるって設定だろう普通。それがこんな男とかふざけんなよ!」


 ついに何の正統性もないことでフリードが切れ始めた。もうダメだ…話にならない。


「そうか…そこまで言うのならもう勝手にしろ。そしてさよなら人間のフリード…と愉快な仲間たち。俺がいなくなる以上その剣はいずれ魔剣と化するだろう。次に会う時は魔剣獣フリードと憐れな骸たちだな。」


 嫌味でも脅しでもなんでもなくただ事実を述べた。俺が離れる以上止める事は不可能。フリードが守りたいもの全てを殺し終わるまで終わらないだろう。あいつに守りたいと思われてしまった人間にはもうしわけないが仕方ない。


 国が決めたことだ。責任はもう俺にはない。恨むなら国とフリードを恨め。


「はん…そんな脅しが効くと思っているのか。負け惜しみが!さっさと消えろ!」


 俺の言葉に若干焦りつつも強い言葉で否定する。


 そんな言葉を背に俺は勇者パーティをあとにした。
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