八重

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逃げよう

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今、俺の腕の中に抱かれて居る八重を・・どうしたらいいか・・それだけを考えている。

『八重・・逃げよう、そして懐かしい・・郷里に帰ろう!』

「ウン・・そうだね・・そんな事が出来れば・・いいね」

「お兄ちゃん・・」八重の刹那言葉だった。

『八重・・!』

「お兄ちゃん・・わたしの・・背中・・わかったでしょう、そして・・こんな事をやって居るのを・・!」八重は呻く様に俺の顔を見て言った。

『八重・・俺と、俺と・・逃げよぅ!』俺は、その言葉しか、腕の中に居る八重には、言えなかった。

「・・バカ・・まだわからないの?」

「私は・・もう、お兄ちゃんには、ふさわくし無い・・そう、もうダメだよ!!」
八重の言葉に・・俺の胸は締め付けられている。

朝陽が、窓から、入って来た。

「お兄ちゃん・・わたし・・もう・・戻らない・・と!」

八重の言葉を理解するのには、俺はあまりにも、世間知らず、いや・・八重がそんな立場に居るって・・俺は、そこまで考えが回っていなかった。

『ダメだ、八重、どこに帰るんだよ?』

「・・・なにも・・知らない・・学生《セイガク》!」

『・・・そんな言い方をするな!』
俺は八重の、蓮葉な言い方に・・言葉が見つからない!!

「じゃ、じゃ・・どうすれば・・いいの!」
八重の眼には涙が溢れて居るが・・俺を睨んで居る。

「お兄ちゃん・・わたしは・・わたしには、自由は無いのよ!」

「ここまで、言えばわかるでしょう!・・それに私の背中を見て・・わかるでしょう!」

この八重の言葉が俺には重かった!

『八重・・どうすれば良いか・・教えてくれ?』
俺の馬鹿な問いかけに八重は顔を背けた。

「アッハハどうすればいい?・・もうどうにもできないよ、こんな時間迄・・きっと駅や街角には・・もうダメなんだよ!」

『八重聴いてくれ、俺は八重を・・助ける、何としても助けて・・あの故郷に二人で帰ろう・・そして昔の様に・・二人で・・』
俺の言葉に八重は泣きながら・・俺を強く強く抱きしめて居る。



昼をまわって居るだろう。

俺は八重にこの場を離れない様に強く言った。

とにかく・・八重をこの老夫婦が営んでる下宿から八重を連れてあの懐かしい故郷に帰る事しか無かった!

・・誰か友人に助けを・・イヤダメだ・・!

俺は八重を逃すことで全てが疑心暗鬼になっている。

誰もが八重を奪い返して来ると思っていた。

二日目の夜を迎えていた。

俺は八重に色々と聴いていた。

『組の奴らはもう八重を探して居ると思うか?」

「・・うん・・もう駅やバス停には見張りがいるよ!」

『今日はここに立つって言ったのか?』

「ううん・・神田辺りって・・」

『組に自分の生い立ちを話したのか?』

「うん」

俺は八重と話してこれしか無いと思った!

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