どこに?

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もし〜もし〜

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夜9時。
リビングにて!

散らかったテーブルの上には・・ビール缶が転がっていた。

俺は(32)は、スマホを握りしめたまま・・ため息をついた。

「お前って・・今どこに居るんだ?」

受話口の向こうから、妙に明るい声がこだまする。

「えっ・・どこって・・・?」

少し間が空く。
テレビの音を小さくして・・俺は眉をひそめた。

「家帰ったらお前いねぇんだけど!?」

「・・・じじ実家よぉ~実家!」

“実家”という単語に少し笑った俺。

しかし・・深追いをしない・・俺。

「なんだよ~そうなら連絡くらいしろよ~・・まったく」

「ごめんってば・・お母さんの具合が悪くなったのよぉ~・・」

「えっ、マジか・・そりゃ心配だな」

俺は立ち上がり・・机の上の煙草を掴む。

火をつけようとしたが、ふと手を止めた・・まだ話している・・途中!

「そうなの・・だからお父さんも付き添いで病院に・・って・・ことなのぉ~」

「ってことは今・・お前ひとり?」

「ええ~あっ大丈夫だから・・心配ありがとね♡」

“♡”のついた声。

その瞬間・・!

俺の頭の中で、違和感が“確信”へと変わった!


『で・・ちなみにお前はどこに居るんだ?』


「えっ・・なに言ってんの・・私は実家だってば!」

俺は無言でベランダに出た。

夜風がカーテンを揺らす。

月明かりに照らされるスマホの画面をタップした・・俺。

「・・へぇ~・・じゃあ今からLINE送るわぁ~」

「ハァ・・なにを?」

「この“ラブホ前のツーショット写真”のことだけど」

数秒の沈黙。

やがて、受話器から聞こえたのは震える声。

「ひひひ・・人違いよ!」

俺は鼻でセセラ笑った。

「うんうん、“実家→ラブ前”って新しいな!」

「ちょっと・・勝手に盗撮とか最低っ!」


「俺は今・・お前の“本当の実家”・・眼の前にはお母さんがぁ~居るんだよ!」

その瞬間、電話の向こうから「ガタンッ!」と音・・!

明らかに誰かが椅子を倒したような気配の音!

「・・・えっ?」

「ついでに言っとくけどぉ~この写真って・・お義父さんと義弟くんが撮ってくれたんだわぁ~」

「えっぐぁぁぁ・・・・」

無言になった妻

息づかいだけが聞こえる・・ハァハァと苦しそうな感じ!

「シカトかぁ~ああゝそっかそっか・・だんまり実家コース・・ねぇ~」

俺は深く息を吸いゆっくりと煙と共に言葉を吐いた。

「というわけで・・さぁ・・!」

「ハイ! サヨウナラ~っ!!
・・明日・・俺が帰るまでに荷物まとめとけよぉ~・・それから後で弁護士から連絡が行くからなぁ~・・逃げんじゃねぇ~ぞぉ」

スマホを切る・・俺。

その足で玄関へ向かい・・勢いよく義実家宅のドアを閉めて・・出た!




そして!
義実家の居間では義母が新聞をめくりながら一言。

「・・あの子ってホントに昔から“甘メェ~なぁ~脇がッ!”」

茶の間の時計が「チクタク」と鳴る中、

義父が呟いた!
「・・これで三度目・・」

「マジ・・母さん・・姉ちゃんってそれなぁ~」


俺たちの・・アパートに!

リビングには・・残されたのは彼女のマグカップ。

底に“LOVE♡”の文字。



《完》
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