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壁から背中を起こして、鉛筆を持ち、問診票に向かう。
名前、電話番号、住所、症状はいつからか···項目を埋めていく。
書いている途中、自分の周りが静かすぎるのがこそばゆく感じて、気を紛らわせようと辺りを見回した。
隣のクッションがへこんでいるのに気づいた。誰かが座っていたのか。大きさで予想すると、小さい人なのかなと思った。
ふと足音が聞こえた。
小さい足音。
顔を上げると、視線の先にあった非常階段の手前に小学生の年少くらいの女の子が立っていた。
女の子はこっちを見ている。
俺は一人っ子で、親戚同士集まった時は子供の中で1番年上だからと小さい子を相手にすることが多かった。とりあえず、ここは笑いかけて様子を見る。
「あはっ…」
女の子は表情を変えなかった。こちらの思惑を見通しているのか、俺は笑うのをやめた。すると女の子は、俺とは反対に面白かったのか笑い始めた。
子供はよくわからん…。
女の子の笑い声に反応して、先生が受付から顔を出す。
「ああ、つばめさん。遊んでいたんですか?」
女の子の名前はつばめと言うのか。
つばめは頷く。
「カドル、探してるの。先生見なかった?」
ここに入院している子なのか、先生と親しげに話している。
「私は今帰ったばかりだから…。ここには来ていないと思いますよ」
それを聞いて女の子は悲しそうな顔をしてしまう。診察が無かったら一緒に探してあげたいけれど···。
先生は何かに気づき、目を見開いて「あっ、もしかしたらまた…」と考え込む。そして先生は受付から身を乗り出して、女の子に
「つばめさん、私にも探すのを手伝わせてくれませんか?」
つばめは、ぱあっと顔を明るくして
「やった!ありがとう」
と飛び跳ねて喜んだ。
先生は受付から出ると俺に問診票を記入させていたことを思い出したのか目の前で立ち止まる。
「あっ、澄田さん、少しお待たせしてしまうかもしれませんが…」
「いえ、俺も探すのを手伝います」
俺は食い気味に先生に言った。
「ああ、そうですか。…では、よろしくお願いします」
先生は申し訳なさそうに笑いながら俺に頭を下げた。
つばめの後に付いて俺と先生は階段を使って二階に上がった。付いて行く彼女の背中に付いている小さな翼がゆらゆら揺れているのが目に入って、自分で作って付けたのかなと俺は微笑ましく思った。
二階に上がってすぐにエレベーターと三人用の長椅子が壁一面の窓ガラスの前に置かれている待合場所らしき所に出た。
窓を見ると空と果てまで続く山々、そしてこの施設の敷地内にあるらしき木々に囲まれた中に床一面緑の庭が見えた。
ここでサッカーしたら楽しそうだなと俺は思った。今頃、部活のみんなはどうしているんだろう。目に見える所に時計は無かったけど、外の感じを見て今はお昼休憩の時間かなと思った。
廊下の左右の扉は個室の入院部屋みたいで、つばめは部屋の引き戸を次々と開けては閉めて、開けては閉めてを繰り返している。
「つばめさん、あまり戸を開けたり閉めたりしては、みんなに怒られてしまいますよ」
なかなか見つからず、焦る彼女を一旦落ち着かせようと先生が彼女の目線までしゃがんでその背中に手を置く。
「どこ行ったんだろ、」
寂しそうに俯いてしまう彼女。これだけあちこち探すということは、人か…、でも名前からしてペットの可能性もある。
「つばめさん、カドルと遊んでいた所はどこですか?」
先生が聞くと、つばめはすぐに答えた。
「外のお庭」
「もしかしたら戻っているかもしれませんね。行ってみましょう」
先生の言葉に期待を持ったのか、つばめは嬉しそうにうなずいた。
名前、電話番号、住所、症状はいつからか···項目を埋めていく。
書いている途中、自分の周りが静かすぎるのがこそばゆく感じて、気を紛らわせようと辺りを見回した。
隣のクッションがへこんでいるのに気づいた。誰かが座っていたのか。大きさで予想すると、小さい人なのかなと思った。
ふと足音が聞こえた。
小さい足音。
顔を上げると、視線の先にあった非常階段の手前に小学生の年少くらいの女の子が立っていた。
女の子はこっちを見ている。
俺は一人っ子で、親戚同士集まった時は子供の中で1番年上だからと小さい子を相手にすることが多かった。とりあえず、ここは笑いかけて様子を見る。
「あはっ…」
女の子は表情を変えなかった。こちらの思惑を見通しているのか、俺は笑うのをやめた。すると女の子は、俺とは反対に面白かったのか笑い始めた。
子供はよくわからん…。
女の子の笑い声に反応して、先生が受付から顔を出す。
「ああ、つばめさん。遊んでいたんですか?」
女の子の名前はつばめと言うのか。
つばめは頷く。
「カドル、探してるの。先生見なかった?」
ここに入院している子なのか、先生と親しげに話している。
「私は今帰ったばかりだから…。ここには来ていないと思いますよ」
それを聞いて女の子は悲しそうな顔をしてしまう。診察が無かったら一緒に探してあげたいけれど···。
先生は何かに気づき、目を見開いて「あっ、もしかしたらまた…」と考え込む。そして先生は受付から身を乗り出して、女の子に
「つばめさん、私にも探すのを手伝わせてくれませんか?」
つばめは、ぱあっと顔を明るくして
「やった!ありがとう」
と飛び跳ねて喜んだ。
先生は受付から出ると俺に問診票を記入させていたことを思い出したのか目の前で立ち止まる。
「あっ、澄田さん、少しお待たせしてしまうかもしれませんが…」
「いえ、俺も探すのを手伝います」
俺は食い気味に先生に言った。
「ああ、そうですか。…では、よろしくお願いします」
先生は申し訳なさそうに笑いながら俺に頭を下げた。
つばめの後に付いて俺と先生は階段を使って二階に上がった。付いて行く彼女の背中に付いている小さな翼がゆらゆら揺れているのが目に入って、自分で作って付けたのかなと俺は微笑ましく思った。
二階に上がってすぐにエレベーターと三人用の長椅子が壁一面の窓ガラスの前に置かれている待合場所らしき所に出た。
窓を見ると空と果てまで続く山々、そしてこの施設の敷地内にあるらしき木々に囲まれた中に床一面緑の庭が見えた。
ここでサッカーしたら楽しそうだなと俺は思った。今頃、部活のみんなはどうしているんだろう。目に見える所に時計は無かったけど、外の感じを見て今はお昼休憩の時間かなと思った。
廊下の左右の扉は個室の入院部屋みたいで、つばめは部屋の引き戸を次々と開けては閉めて、開けては閉めてを繰り返している。
「つばめさん、あまり戸を開けたり閉めたりしては、みんなに怒られてしまいますよ」
なかなか見つからず、焦る彼女を一旦落ち着かせようと先生が彼女の目線までしゃがんでその背中に手を置く。
「どこ行ったんだろ、」
寂しそうに俯いてしまう彼女。これだけあちこち探すということは、人か…、でも名前からしてペットの可能性もある。
「つばめさん、カドルと遊んでいた所はどこですか?」
先生が聞くと、つばめはすぐに答えた。
「外のお庭」
「もしかしたら戻っているかもしれませんね。行ってみましょう」
先生の言葉に期待を持ったのか、つばめは嬉しそうにうなずいた。
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